デモッソの年
「デモッソの年」 作 玄崎 尭 (げんざき ぎょう)
◆登場人物
・ユーリ
・ノコリ
・男の子1
・男の子2
・男の子3
・娘
・母
・老夫
・老婦
・総理
・秘書
・取調官
・ヒトガタたち
※ヒトガタたちは、男の子から取調官で兼ねる。
◆物語の舞台
・百年以上先の未来の、月と地球
【プロローグ 牢獄】
闇の中、足音が響く。
ぽつり、スポットライトがつく。
取調官がタブレット型端末を手に、囚人の姿をした男の前に
向かう。
囚人の姿をした男、ユーリ、諦めと冷笑に満ちた雰囲気を全身
から漂わせている。
取調官は無口なまま、端末を開き、操作を始める。
ユーリ ………またですか。何度聞かれても同じですよ。
今までの尋問の記録をご自分で調べたらいいでしょう。
そして、どうせ信じないんでしょう?
私はこの目の前で起きた出来事を、そのまま話すことしかできませんよ。
……しつこいな。いいですか、これまで事実を聞かせろと何人もの偉い人が
私を訊問しに来ましたが、誰も私の言うことなど本気にせず、
やがてどうすることもできないのか相手にする気すらなくしたのか、
私を閉じ込めたっきりずっとそのままなんです。
一体もうどれだけの年月が経ったことか。
……それでも話せとおっしゃるんですね。
いいですよ。話しますよ。あの星であったことを。
……あれはまだ私が二十歳そこそこの頃でした。あの頃はもうすでに、
人間が月面基地で暮らすようになって百年ぐらいになってましたかね。
そう、あの星、かつて人類が住んでいたという地球へ私が行ったのは、
全くの偶然だったんです。
スポット消える。
【1場 介抱】
明かりがつく。
ノコリの部屋。狭く古めかしく、ベッドと机、またはテーブル
以外ないような、殺風景な部屋である。
窓の向こうには荒涼とした大地が、さらに遠くの丘の上には、
広大な壁が広がっているのが見える。
部屋の中、ベッドのそばの壁にはボロボロの12月のカレンダー。
クリスマスの次の日が赤く丸で囲んであり、その先が破けて
1/30
面白いと思ったら、続きは全文ダウンロードで!
御利用機種
Windows
Macintosh
E-mail
E-mail送付希望の方は、アドレス御記入ください。