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春が来るにはまだ遠く

１　噴水広場前

凛子（の声）私は帰ってきた。沢山の想いを諦めたこの場所へ、今日というクリスマスの日、私は五年ぶりに帰ってきた。思えば、あの日もこんなに寒くて、だけど、幸佑と相馬がいる時間は、とても温かかった

　明転
　Ｍ　　クリスマスソング
ＳＥ　雪を踏む音
　　　　冬の風

凛子　懐かしいなぁ、この噴水広場も

　凛子　横長のイスに座る
　幸佑、サングラスとマスクをして下手から登場。凛子をジロジロと眺める
　凛子、それに気付く

凛子　なんですか？
幸佑　あ、いや、その……

　凛子、訝しみ上手に掃けようとする

幸佑　あ、ちょっと待って！
凛子　私に何か用ですか？
幸佑　あのさ、もしかして……凛子？
凛子　え？

　幸佑、サングラスとマスクを外す

幸佑　僕だよ、僕
凛子　……幸佑？
幸佑　やっぱり！　五年ぶりだから一瞬分からなかったよ
凛子　幸佑の方が分からないわよ。何その格好、誰かに追われてんの？
幸佑　いやぁ、追われてるっていうか、あまり見つかりたくないっていうか……
凛子　何それ？
幸佑　まぁ、それは置いといて。凛子はいつこっちに戻ってきたの？
凛子　さっき帰ってきた
幸佑　へぇ、でもほんと久しぶり。凛子ってば卒業した途端引っ越しちゃうんだもん
凛子　ごめん。言い出しにくかったから
幸佑　うん、別にいいんだけどね
凛子　ていうか、偶然だね。ここで会うなんて
幸佑　まぁ、そうだね。凛子こそ、なんでここに？
凛子　なんでだろ。なんで私、ここに来ちゃったんだろ
幸佑　どういう意味？
凛子　この場所は嫌なこと、色々と思い出しちゃうのに
幸佑　……あのさ、折角久しぶりに会ったんだから、ウチこない？
凛子　幸佑の家？
幸佑　うん。寒いし、積もる話もいっぱいあるから
凛子　でも、幸佑の部屋汚いじゃん
幸佑　いつの話だよ。今はそんなに……まぁ、ちょっと汚いけど
凛子　ほら。……ねぇ、そしたら相馬も呼ぼうよ
幸佑　あいつも？　……なんで？
凛子　私達、高校三年間ずっと一緒だったじゃん
幸佑　あいつは、別にいいだろ
凛子　関係あるから？
幸佑　え？
凛子　あの日が関係あるから、だからまだ相馬と仲直りできないの？
幸佑　仲直りって。別に仲は悪くなってないよ
凛子　嘘。あの日から二人が話してるのみたことないもん
幸佑　そんなこと、……なぁ、あいつを呼ぶのはやめよう
凛子　私が電話する

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