蝸牛、舞!
〜嗚呼、ホームレス〜

蝸牛、舞!(一幕三場プロローグ付)
                             作・瀧澤 豚琴
CAST
     ゴ ン ベ
     馬   張(まぁちゃん)
     キ ナ コ
     タ   マ

<プロローグ>
 音楽(サウンドオブミュージックより、ドレミの歌)に合わせて、下手より、四人のホームレス登場。
 歌い踊る。

 <ど貧民の歌>原曲 ドレミの歌(一部マイナー編曲)  作詞 スネイルズ       
                                                  
  ド、は、どん底のド。 レ、は、ホームレスのレ。 ミ、は、身元不明。 ファ―、は、不安のファ―。 
  ソ―んな暮らしはネ―、 ラ―くじゃないけど、 死―んじゃいないよ―、 ホラ、生きている!    
                                                  
 公園は、わが家。 ベンチは食卓。                                 
                                                  
     ダンボール、新聞紙。コンビニの、ゴミあさり。                       
     朝起きて、飯食って、昼寝して、夜に寝る。                         
                                                  
        な―に―か―が―お―き―る―、つ―づ―き―は―十―秒―後―!            

 歌と共に、ゴンベ一人を残し、三人幕の中に消える。

ゴンベ  (一人取り残された事に気付き)え? あ、あの、わたし・・・・・・・・そうなんです。私、本当は違うんです。
     あの事件さえなければ・・・・・・いえ、あの事件があったから、私は・・・・え? 時間?・・・・はいはい、わかり
     ました。もう、十秒後なんていうから・・・・・(と、上手より舞台の中へ)
                                    暗転

第一場
 繁華街に程近い公園の一角。木々の間に張られたビニールシートの下に三つのダンボールハウス。側には水飲み
 場(水道)がある。
 幕開きと同時に、ラジオ体操のテーマソングが流れる。やがてダンボールの一つから<キナコ>がラジオを持って
 這いだし、ウォーミングアップを始める。続いて<馬張>が迷惑そうな顔をして這い出してくる。<キナコ>身振り
 で体操に誘うが、<馬張>は、「いやなこった」といった風情で応じない。「ラジオ体操第一」が始まり、<キナコ>
 一人で始めるが、朝の洗顔などの身支度をしていた<馬張>の動きが、ミョ―に合ってしまう。そこへ、いかにも
 ホームレスを作ってきましたといった格好の若い娘<ゴンベ>が、下手より登場。

ゴンベ  (明るく)おはようございま―す。私も仲間に入れてくださ―い。(と、体操を始める。)
キナコ  ・・・・・・(一瞬怪訝な顔をするが、頷く。)

 一緒に体操をする<ゴンベ>と<キナコ>。時々動きの合ってしまう<馬張>。しばらくして、<タマ>が、下手より
 登場。手に大きなゴミ袋を提げている。自分の小屋(?)の前に袋を置くと、ラジオを切ってしまう。

キナコ  何すんねん!
タ マ  うるさい。(と、自分のダンボールに入ってしまう。)
馬 張  (拍手)
キナコ  ・・・・うるさい、て、あんたなぁ・・・・
馬 張  あなた、体操、とても健康、すぱらしい。ても、他の人、眠れない、不健康。これ、迷惑ね。
     中国のお母さん、いつも言ったね。人に迷惑かける、これ一番いけないこと。
キナコ  迷惑や? 何言うてまんねん。あては、あんたらの為を思うてなぁ・・・・
ゴンベ  あの、お取り込み中、申し訳ありませんが・・・・・
キナコ  何やあんた、まだ居てたんかいな。
ゴンベ  はい、あの・・・・私も仲間に入れてください!
キナコ  仲間て・・・・ああ、あかんわ。もう体操終わってもうたで。
ゴンベ  いえ、そうじゃなくて、このダンボールハウスの、仲間に入れてください。
馬 張  (キナコと一瞬顔を見合わせた後、まじまじとゴンベを見て)あなた、何? ここで、ホームレスするか?
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