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ふたり

「ふたり」作・日向あきつ

登場人物
　アケミ（高校三年女子　文芸部員）
　ナオコ（高校三年女子　アケミの友人）

　　　　　　　　文芸部の部室。
　　　　　　　　大きめの机が中央にあり、机を挟んで向かい合うように椅子が置いてある。
　　　　　　　　アケミが机に向かって書き物をしている。
　　　　　　　　気になる単語をいくつか書き、それらを線で繋いだり丸をつけたりしている。
　　　　　　　　あまりスムーズにはいってない様子で、髪をかき上げたりしている。
　　　　　　　　そこにナオコが入ってきて、アケミにこっそり近づく。

ナオコ　　お客さん。悩んでますね。
アケミ　　誰がお客さんか。まあ悩んではいるけど。
ナオコ　　あれ、全然驚かない。
アケミ　　いつものことだし。
ナオコ　　あけちゃんはクールだねえ。
アケミ　　なーこが落ち着きないだけでしょ。
ナオコ　　そうかもね。……で、何悩んでんの？
アケミ　　小説のネタ。
ナオコ　　おお。さすがは文芸部部長。
アケミ　　部長っても部員一人だけど。
ナオコ　　部員が一人だろうが百人だろうが部長は部長。部の長なんだからどーんと構えようよ。私なんて帰宅部だからさ。部長なんてのとは縁遠い存在なわけですよ。
アケミ　　なーこも文芸部入ればいいのに。いっつもここに入り浸ってるんだから。
ナオコ　　んー。私はね。見てる方が楽しいかな。
アケミ　　あっそ。
ナオコ　　その小説って、今度の文化祭で出すやつ？
アケミ　　え？　……あー、うん。まあ。
ナオコ　　へー。どんな話？
アケミ　　それを今考えてんの。
ナオコ　　なんだ。そっからなの。
アケミ　　悪かったね。
ナオコ　　ジャンルも決まってないの？
アケミ　　とりあえず今回は学園モノで行こうとは思ってるんだけど。
ナオコ　　おお。青春ですな。
アケミ　　部活を中心に書きたいんだけどさ。何部にするかで悩んでんだよね。
ナオコ　　ふーん。……野球部とかは？　ちょっと前に野球部の小説がヒットしたじゃん。
アケミ　　んー……。なんか逆にさ、今まであんまり小説の題材にはならなかったようなのがいいんだよね。
ナオコ　　ふむ。……ワンダーフォーゲル部とか。
アケミ　　んー。それでもいいんだけど……。
ナオコ　　なんかこだわりがあるんだ？
アケミ　　わりかしメジャーで、どこの学校にあってもおかしくない感じの部活が理想。
ナオコ　　かつ、小説の題材になりにくい部。
アケミ　　そう。
ナオコ　　そしたら文化系の部活かなあ。メジャーな運動部はだいたい題材になってるだろうし。
アケミ　　だよねえ。
ナオコ　　メジャーな文化部って言ったら……吹奏楽部、合唱部、放送部……。
アケミ　　漫研とか美術部とか。
ナオコ　　あ、演劇部は？
アケミ　　あー、いいかも。漫画はあるけど小説で演劇部って見ないよね。
ナオコ　　ビジュアル面が大事ってことじゃない？　小説にするの難しそう。
アケミ　　まあ確かに。
ナオコ　　でも、できたら面白そうじゃない？
アケミ　　うん。……よし。演劇部で行ってみよう。
ナオコ　　お、やる気出てきたね。
アケミ　　そしたら、次はプロットかな。ストーリーの大枠を固めていくと。

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