あらすじ
私の家は、学校を経営しています。
一家の名字をとって『大昇學苑』と名付けられたこの学び舎は、幼稚園から大學までの一貫教育機関を持つ、古き良き『名門校』です。
ひいおばあさまが創立し、おかあさまが三代目を務めるこの學苑で、素敵な人たちと出会いました。
幼稚園では、今となっては親友の、サッカーが好きな衛という男の子に出会いました。
初等部では、二代目だったおばあさまの旅立ちを見送りました。
中等部では生徒会に入り、王太先輩という生徒会長のもとで活動しました。
三年生にあがると、王太先輩が高等部に行き、私は繰り上がりで会長となりました。
その夏、衛は、サッカーの名門校から推薦が届いたと、とびきりの笑顔で報告してくれました。
私の周りは、常に移ろっていきます。
変わっていく周囲に焦りながらも、學苑だけは変わらず私のそばにいました。
私の人生を彩ってくれた大切な學苑を、おかあさまのあとに継ぎたい。そう願っていました。
けれど、その夢は叶いませんでした。
衛が推薦をもらった数日後、『次年度を以て、學苑を統廃合とする。』との掲示がされました。少子化に耐えかね、近隣校と合併するそうです。
その晩、私を心配して家に来てくれた衛の腕の中で、何時間も、子供みたいに泣きじゃくりました。
やがて、高等部に進学しました。
衛は、廃校に項垂れる私を見かね、推薦を蹴ったそうです。
王太先輩は変わらず生徒会に居ました。イギリスからの留学生と、全国模試一位の女生徒もそこに居て、一年だけでも仲良くしよう、と、私と衛を誘って下さいました。
そうして一年、私なりに、変化なく過ごしてまいりました。
今日は、大昇學苑の閉校式です。
生徒会のみんなと考えて、最後くらい盛大に、と、皆さんをご招待しました。
つたない言葉ばかりですが、私たちの思い出を、聞いていってください。
皆様の人生が、どうか平穏でありますように。
本日も、大きくお昇りなさいませ。
大昇學苑高等部 第九十九代 生徒会副会長
大昇 心