あらすじ
「のばく」と呼ばれた大阪の下町、丁度、今の谷町6丁目から商店街を西に少し行ったあたりの、貧乏人長屋の集まった一角に、大阪落語にその人ありと言われた小升(こます)がお手伝いの初枝と暮らしていた昭和16年頃。時勢が日々キナ臭くなってきていたある日、一人の男が小升の家の前に座り込む。小升への弟子入りを願う一歩(いっぽ)である。
「師匠、ワイは惚れてまいましてん!」「ドアホ!人様が聞いたら誤解するようなこと、何大声で言うてんねん!」。
落語への一途な思いが漸く、チヨツトだけ小升に通じ、何とか家に出入りさせてもらえるようになった一歩。家の出入りを許してもらえ、落語家になるための階段にようやく足を掛けることができたものの、「ご時勢様」が「そうが問屋がおろすかい!」とばかりに邪魔をする。