あらすじ
等身大の高校生、榊原桜子の幼馴染たる霜村久道はただの高校生ではなかった。歌唱においてのずば抜けた才能を持つ彼は、父親の大きすぎる期待を抱えていた。そんなこともつゆ知らず、世間は彼に、コンサートの出演依頼を出す。自身の才能に呪われている彼は、歌う意味を見失っていた。一方の桜子は彼の才能を認め、劣等感、いや、ある種疎外感というべき感情を抱えていた。その要因は、過去の二人の確執によるものが大きいようでーーー彼らが出会い、そして、その歯車が狂うところから物語は始まる。彼らは周囲に、そして互いに感化され合いながら徐々に変化していく。
歌は、そのメロディで、その歌声で、そして込められた感情で人の心を打ち震わせる。聞いている人間が感動するのと同じように、歌っている人間にも相応のドラマが存在しているものだ。自分が今、誰と、どこで、何をしたいのか。人間が当然のように抱いている渇望がわからなくなってしまった高校生の葛藤を描いた、ジュブナイルストーリー。