被災地アイドル
被災地アイドル

女1・・・渡哲子。十年以上鳴かないし飛ばないアイドル。
女2・・・田本芳江。被災地で闇市を開く。男1の姉。
男1・・・田本健太。女2の弟で、災害ボランティアのプロフェッショナル。
男2・・・秋元康夫。被災したアイドルオタク。
男3・・・村井茂。女1の事務所の社長。



 瓦礫をどかし、わずかな広場を作ってある。クーラーボックスやシュラフ、ランプ、飯ごう、カセットコンロ、
簡易イスなど、キャンプ用品が隅にある。
 舞台中央に女1。可愛らしいような、ちょっと無理しているような服を着ている。アイドルにしては若くないような。
 華やかな音楽(ヘビー○ーテーションあたりか?)と話声のような雑音が響く中、ダンスをしながら女1が話し始める。

女1 被災地のみなさーん。こんにちはー。私は、絶賛売り出し中アイドルの渡哲子で〜す。渡哲也さんとは無関係でーす。
   ・・・誰が何と言おうとアイドルで~す。この度は大変な災害で、本当に言葉もありませんが、私の元気を届けに来ました〜。
   ・・・はあ?支援物資?そんなもん持ってくるか!自分の飯もままならんわ!あ、飴があったな。

 そう言って、女1は飴玉を投げ始める。昔そういう漫才師がいた気がする。楽しげな歓声が漏れる。

女1 欲しい方は手を挙げてー。渡哲子でーす。渡哲也さんとは無関係でーす。ビッキーズではありませーん。
   ビッキーズは解散しましたー。

 歓声は次第に怒声に変わり、子供の悲鳴のようなものも聞こえ始めたところで、女1は飴玉を投げ終わる。

女1 終了ー。・・・あれ?どうしたんですか?え、痛かった?贅沢言うな!うわっ、石を投げるな石を!いたっ!
   ちょっと!田本くん!整理して!握手会!握手会行くよ!

 そこへ男1がやってくる。なんだか冴えない表情。

男1 ライブは終了です。引き続き握手会に移りたいと思いますので、希望者は一列に並んでください。
女1 暗いよ田本くん!もっと声張って!いった!
男1 ライブ終了―!ライブ終了―!

 怒声は徐々に静まり、雑沓となる。

女1 おい!帰って行くなって!握手会がありますよー!
男1 ライブ終了―!ライブ終了―!
女1 ちょっと、こら!田本君!
男1 なんですか?哲子さん。
女1 なんですかじゃないよ!ライブ終了より、握手会をやりますよって事を強調しなさいよ。
男1 暴徒と化した被災者を鎮めるにはもうこうするしか・・・。
女1 暴徒化してなんかなかったじゃない。
男1 人に石を投げる集団はもはや暴徒だと思いますけど。
女1 もっとガンガン握手会を押し出さないから、みんな帰って行くじゃない!
男1 ええ?そういう問題ですか?
女1 なに。あたしが悪いって?
男1 そりゃあ・・・。
女1 あーあ、そういうの良くないんじゃないの?大事なのは信頼関係じゃないの?
男1 あれだけみんな怒ってましたし。
女1 それでもさ、一人も握手に来ないってのは、やっぱアイドルだけの責任とは思えないよね、どうしたって。
男1 なんか硬い物を投げ付けてましたし。
女1 支援物資。
男1 誰もそんな前向きに捉えてませんでしたよ。
女1 飴玉投げたというのに集まらないって事はさ、やっぱマネージャーにも責任があるって考えるのが一般的だよね。
   昨日は居たのにさ。
男1 居たって言っても一人じゃないですか。しかもオタクっぽい人ですし、僕にはどうする事も。
女1 田本君にも出来ることはいろいろあるでしょ。何か渡してサクラを仕込むとかさ。
男1 だって、渡せるものが無いから哲子さんあんな硬い物投げてたんでしょ。
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