まじめなBerry(5人ヴァージョン)

(まじめなベリー)
初演日:0/0 作者:湖社 シンジ
「まじめなBerry(5人ヴァージョン)」

【登場人物】
眞鍋理恵 (生徒会会計。真面目キャラ。ただし天然の部分もあり)
三原友希子(放送部のDJ。眞鍋と同級生)
小林奈々 (放送部員)
アサコ  (売れない芸人。路上で怪しげな商売をしている。)
ワカコ  ( 〃 )


1.路上

(アサコが風呂敷包みを持って、ワカコが手作りの立て看板を持って、登場)

アサコ 「(辺りを見回し)この辺にしとこうか。」
ワカコ 「この辺? ほとんど人通ってないよ。」
アサコ 「賑やかなところだと、さっきみたいに怖そうなお兄さんに因縁つけられ
     たりするし」
ワカコ 「でも、こんな寂しいところ……」
アサコ 「いいじゃない! 人通りの多いところで誰彼かまわず声かけても、誰も
     立ち止まってくれなかったじゃん。こういう所で、誰かが通ったら、
     そいつに集中的に声かけるの。その方がカモを捕まえやすいよ。」
ワカコ 「カモって……。せめてお客と言おうよ。」
アサコ 「いいから、さあ、お店開くよ。」
ワカコ 「うん。」

   (アサコ、路上に風呂敷を広げる。そこには手作り風の腕輪が5本。
    ワカコ、横に看板を立てる。『あなたの人生を変える! 幸せの腕輪!』
    と手書きしてある。)
   (2人、風呂敷を前にして並んで体育座り)
   (少し時間が経過する。)

ワカコ 「ねえ、アサコ」
アサコ 「何よ、ワカコ」
ワカコ 「腹減った。」
アサコ 「わざわざ言うな、そんなこと。意識しないようにしてるんだから。」
ワカコ 「でも今朝、おにぎり一個食べたきりだよ……」
アサコ 「だから、わざわざ言うなって」
ワカコ 「あー、もう限界! ね、あっちにコンビニあったよ。何か買おうよ。」
アサコ 「そうだな、何か買ってくるか……」
ワカコ 「あたし、からあげ弁当。398円だよ。」
アサコ 「ばか、今度いつお金が入るかわかんないんだぞ。そんなに使えるか。
     せいぜい98円のアンパンだな。」
ワカコ 「えー、それじゃあ、あたしメロンパンにして。で、アンパンとメロン
     パンを2人で半分ずつ……」
アサコ 「ぼけてんじゃねえの。2人でアンパン一個だよ!」
ワカコ 「えー!」

   
2.高校の放送室

   (暗転の中、小林の声「いくよ、オープニングテーマ、カットイン」)
   (音楽が鳴り出し明転。机と椅子が2脚。三原と小林がそれぞれ座っている。
    小林の前にはラジカセ。音楽はここから流れている。)

小林  「はい、キュー」(三原に合図)
三原  「はーい、みなさんこんにちはー、今日もお昼休みのひと時に、素敵な音
     楽と愉快なおしゃべりをお届けする『ユッキーのランチタイムDJ』の
     始まりよ! お弁当を食べながら、教室のスピーカーの方にもぜひ耳を
     傾けてね。それじゃあ今日の放送部へのお便りは、まず1年2組のペン
     ネーム『ハムレット君』から。『毎日楽しく聞いています。ユッキーの
     ハイテンションなおしゃべりが大好きで、昼休みが待ち遠しくて、いつ
     も4時間目の授業は上の空です。』ありがとう、ハムレット君。ユッキ
     ーとっても嬉しいわ。だって時々『うるさい、静かにしろ』って言って
     くる人もいるのよ。でもハムレット君のような応援がある限り、私、ぜ
     ったいに負けないわ。だからこれからも『ユッキーのランチタイムDJ』
     よろしくね。それじゃあ、今日の1曲目は、そのハムレット君からのリ
     クエストで、『アーティスト名』の『曲 名』から、いってみよう!」
小林  「はいOK」(ラジカセを止める。)
三原  「はあ(ため息)……。あーあ、早く放送再開したいなー。こうやってラ
     ジカセでDJの練習続けていても、つまんない」
小林  「でも新しいミキサーが入らないことにはねえ」
三原  「電機屋さんには、もう修理は不可能だって匙投げられちゃったしね」
小林  「古い機械で、とっくに寿命がきているのを、だましだまし使っていたん
     だから」
三原  「そうだ、新しいミキサーを買うための予算請求書を生徒会に出さなく
     ちゃ」
小林  「まだ出してなかったの?」
三原  「ごめんごめん」
小林  「文化祭まであと1ヶ月よ。」
三原  「わかってるって、文化祭の人気コーナー、放送部の公開DJのために、
     新しいミキサーは絶対に必要なんだから……、(1枚のプリントを取り
     出し)これが予算請求書。これを書いて生徒会に提出しなきゃならない
     の」
小林  「だから、早く出しておいでよ」
三原  「(プリントに書き込む)えーと、まず『予算請求者名』、『放送部 
     三原友希子』、ナナの名前も書いとくよ」
小林  「うん」
三原  「『小林奈々』と。で、次が『予算請求額』、5万円でよかったっけ?」
小林  「ホントはもっといいのが欲しいけど、この学校貧乏だから、そのへんが
     限度ね」
三原  「次が『予算請求の内容及び理由』……。どう書けばいいのかな」
小林  「簡単でいいんじゃない。『ミキサーが壊れたので、新しいのを買うため』
     と書いとけば」
三原  「それでいいか(書き込む)。」
小林  「でも面倒くさいことさせるね。『予算よろしくねー』って、ひと声かけ
     るだけで出してくれたらいいのに」
三原  「でもねー、今年の生徒会の会計やってる奴ってねえ」
小林  「誰だっけ? ユッキーの知ってる奴?」
三原  「同じクラスの眞鍋って奴なんだけど」
小林  「同じクラスなら話しは早いじゃない。休み時間にでもそいつに『予算よ
     ろしく』って声かけとけば」
三原  「それがそう簡単に声かけられる奴じゃないのよ。」
小林  「なんで? 変な奴なの?」
三原  「すっごい真面目な奴なの。けど、真面目すぎてクラスで浮きまくってる
     のよ。」
小林  「ああ、そういう奴って時々いるよねえ。何だかお高くとまってるって感
     じで声かけにくいの。そいつ宿題忘れたこともないでしょ」
三原  「そうそう」
小林  「だけど、他の誰かがそれを写させてって頼んでも、絶対に写させてくれ
     ない。」
三原  「まさにそう!」
小林  「(クラスの誰かの真似)ねえ、私宿題忘れちゃった。お願い、写させて」
三原  「(冷たい口調)だめよ、自分でやりなさい。」
小林  「そこをお願い」
三原  「写させてあげることは簡単よ。でもそれじゃあ、あなたのためにならな
     い。あなたのためを思ってお断りするの」
小林  「うわー、ホントにそんなこと言うんだ。」
三原  「多分、こう言うだろうってことよ。」
小林  「え、そう言ったわけじゃないの?」
三原  「ううん、だれもあいつに宿題写させてなんて頼んだことないもん。」
小林  「どうして」
三原  「とてもそんなこと頼める空気じゃないのよ。あいつの周りの空気は」
小林  「何か特別な緊張感が漂っているわけ」
三原  「そう、下手に近づくとビシッと斬られそうな」
小林  「やだなー、そんな奴のところへ予算請求に行くなんて」
三原  「とにかく頑張ろう。お昼の放送を再開するために」
小林  「そして文化祭の晴れ舞台。公開DJのために」
  

3.路上

   (ワカコ、体育座りで1人でアルバイト情報誌を読んでいる。)
   (アサコ、トイレへでも行っていたのか、ハンカチで手を拭きながら戻って
    くる。)
   (ワカコ、アサコに気づいて慌ててアルバイト情報誌を自分の後ろに隠す。)

アサコ 「うん? 今なんか隠したな。」
ワカコ 「ううん、な、何にもないよ。」
アサコ 「うそつけ、今慌てて隠したろ。何隠したのさ。」
ワカコ 「何でもないって」

   (2人もみ合うが、最後にはアサコがアルバイト情報誌を取り上げる。)

アサコ 「アルバイト情報誌? ワカコ!」
ワカコ 「さっきトイレしに公園へ行ったら、ベンチに置き忘れてあったんで、
     拾って…」
アサコ 「それで、こんなもの見て、何かアルバイトしようって気なの」
ワカコ 「いや、なんて言うか……」
アサコ 「忘れたの、ワカコ! 2人で誓ったじゃない。たとえどれだけ仕事がな
     くて苦しい思いをしようとも、アルバイトだけはしないって」
ワカコ 「覚えてるよ。でも」
アサコ 「いい! 一度アルバイトをして、お金をもらってしまうと、もうそこか
     ら抜け出せなくなるの。最初はほんの一時しのぎのつもりだったのに、
     結局そっちの方が本業となって消えてしまった先輩を、私たち何人も見
     てきたでしょ!」
ワカコ 「わかってるよ。でも、この空腹は耐えられないよ。」
アサコ 「そこをガマンするの。そのために、こうして路上で……」
ワカコ 「路上でライブをして見せて、道行く人からおひねりをもらうんだったよ
     ね。」
アサコ 「そうよ、アルバイトじゃなくて、ネタの稽古でお金をもらうのよ。」
ワカコ 「それが何でこんな変な腕輪を売っているのよ。」
アサコ 「仕方ないじゃない。私たちがいくらライブしたって、誰もおひねり投げ
     てくれないんだもの。だからこの『幸せの腕輪』を売るのよ。」
ワカコ 「よくわかんないわよ」
アサコ 「だから、これを売るためのセールストークが、私たちの芸を磨くんじゃ
     ない。」
ワカコ 「何か違ってると思う。」
アサコ 「バイトするより、よっぽど芸のためになるじゃない。何がいけないの」
ワカコ 「だって、こんな腕輪したって人生変わるわけないし、幸せになんか…」
アサコ 「おっと、向こうからちょうどいいカモが来たわ。」
ワカコ 「せめてお客と言おうって……」
アサコ 「いい、ワカコ、台本どおり行くよ。」
ワカコ 「う、うん」

   (眞鍋が歩いてくる。学校帰りの様子である。)

アサコ 「ちょっと、そこの彼女!」

   (眞鍋、思わず立ち止まる。)

アサコ 「あなたよ、あなた。何か悩み事があるんでしょう? いいの。言わなく
     ても判っちゃうの。今あなたは思い悩んでいる。心の奥底で救いを求め
     ている。」
ワカコ 「……求めている。」

   (眞鍋、表情の変化は乏しいが、2人のトークに引き込まれている様子で
    ある。)

アサコ 「私たちは、この世の思い悩む人々を救うため、神より遣わされた者なの
     です。」

   (以下、テレビショッピングのように幾分わざとらしく)
ワカコ 「ええ? 神様の使者、ホントですか!」
アサコ 「本当です。」
ワカコ 「それなら教えてください。どうしたらこの苦しみから逃れられるのか」
アサコ 「そういう方のためには、これです(腕輪を一つありがたそうに手に取
     る)。この腕輪を身につければ、あーら不思議、受験の悩みも恋の悩み
     も一挙解決、やることなすことうまくいきまくって人生勝ちっぱなし!
     という大変大変ありがたい腕輪なのです。」
ワカコ 「ええ、ホントですか」
アサコ 「本当です。信じるのです。信じる者は救われるのです。はい」
ワカコ 「でも、みんながこれを持ったら」
アサコ 「おだまりー!」
   (『おだまりー』はアサコの決め台詞。以下、この台詞の度に何か決め
    ポーズを取る)

ワカコ 「ヒー!」
アサコ 「この腕輪を何と心得おるか。これは神が悩める人を救おうと、あらん限
     りの霊力を振り絞って、この腕輪の中に封じ込めたものなのです。」
ワカコ 「そうなんだ」
アサコ 「その神の力をもってしても、この5本の腕輪を作るのが限界だった。
     よいですか。全世界にたった5本しかないのです。誰もが持てるもので
     はないのです。」
ワカコ 「ごめんなさい……。でも、そんなすごい腕輪をどうして私なんかに」
アサコ 「あなたは選ばれたのです。神のふかーい御心により」
ワカコ 「そう……」
アサコ&ワカコ 「(眞鍋に向き直り)あなたは選ばれたのです。」
アサコ 「(眞鍋に迫りながら)あなたは今、ふかーい悩みを抱えていますね。」
ワカコ 「でも、どうしたらいいか、わからない」
アサコ 「そんな時はこれです。これを身につければ人生バラ色に大変化」
ワカコ 「大変化」
アサコ 「さあ、これをお買いなさい」
ワカコ 「お買いなさい」
アサコ 「たったの10万円」
ワカコ 「高っ!」
アサコ 「……と言いたいところですが、あなたは神に選ばれし第1号の人間とい
     うことで、特別価格の3万円でお譲りしまーす。」
ワカコ 「すごーい、やすーい!」

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