探偵 家達写楽

(たんてい いえだつしゃらく)
初演日:0/0 作者:八城 悠
「 探偵 家達写楽 」    八城 悠

登場人物(8人)

     家達写楽(イエダツシャラク)・・・私立探偵(♂)
     外環(ソトワ)・・・探偵助手(♀)

     赤木(アカギ)・・・直情径行(♂)
     青山(アオヤマ)・・・プレイボーイ(♂)
     白石(シライシ)・・・現在の青山の彼女(♀)
     桃井(モモイ)・・・青山の元彼女(♀)
     緑川(ミドリカワ)・・・医者(♂)

     警部(ケイブ)・・・捜査指揮官(性別どちらでも)


 01「二人」(どこか)

      白石・桃井にスポット。

 白石 あの…。
 桃井 何。
 白石 本当にごめん。
 桃井 別に。いいんじゃないの。
 白石 許してくれるの?
 桃井 そりゃあ許す気はないけどさ。
 白石 だよね。
 桃井 こればかりは仕方ないじゃん。相手がいるんだから。
 白石 あの、今までどおり皆で仲良く――
 桃井 それはちょっと虫が良すぎるんじゃない?
 白石 え。
 桃井 人の彼氏奪っておいて、仲良くいけるわけないでしょう。
 白石 …そうよね。
 桃井 なんてね。
 白石 え。
 桃井 いいのいいの、こっちもなんか倦怠期だったのよ。
 白石 モモ。
 桃井 あんな女たらし、どうだっていいわ。
 白石 よかった…。
 桃井 でもね、シロ。あいつにはちゃんと首輪をつけときなさいよ。

      桃井、白石の首に手を回す。

 白石 あ…う。
 桃井 じゃないと、またどこかの泥棒猫に盗られちゃうかもよ。
 白石 う…モモ…。

      桃井、パッと手を離す。

 桃井 あはは、冗談よ。言ったでしょ、どうだっていいって。
 白石 冗談きついよ。
 桃井 話は終わり! ねぇ、シロもアオも今度の旅行には来るんでしょ。
 白石 うん、そりゃ行くけど。
 桃井 恒例だもんね、楽しみだな。……本当に。

      暗転。


 02「策謀」(別荘リビング)

      怪しい音楽。
      桃井、シュガーポットとコーヒーカップが1つ載っているトレイを持っ
      てくる。
      テーブル上にあるシュガーポットを、持ってきたシュガーポットにすり
      替える。
      コーヒーカップの縁をカッターナイフでガリガリと削る。
      ニヤリと笑う。
      暗転。


 03「登場」(家達探偵事務所)
 
      写楽、椅子に座って何か事務仕事をしている。
      外環、アイスをくわえて入ってくる。

 外環 あっちぃ〜。
 写楽 …。
 外環 この暑さは異常だよ。ああ、もうきっと地球は終わりなんだ。このまま温暖
    化が進行して全生物はドロドロに溶けてしまうんだ。ああ、このアイスの冷
    たさだけがアタシの王子様。
 写楽 …。
 外環 何やってるの?
 写楽 静かにしたまえ。
 外環 ?
 写楽 差し引くと…ああっ、赤字だぁっ!
 外環 また経費の計算?
 写楽 外環くん。それ、アイスかい?
 外環 (くわえながら)ほうはよ?
 写楽 ひと口ちょうだい。
 外環 うわっ、ひくっ! いたいけな少女のアイスを奪って間接キス! うわっ!
 写楽 そういう誤解を招くような発言はやめなさい。
 外環 先生も買ってくればいいじゃん。
 写楽 …。
 外環 もしかしてアイス買うお金もないの?
 写楽 ふん。水飲むからいいです。

      写楽、袖へ去る。
      外環、写楽の椅子に座ってクルクル回る。

 外環 だいたいさぁ、このくそ暑いのにスーツなんて着てるからだよ。探偵事務所
    なんだから、クーラーでも取り付けてさ。これじゃ依頼人が暑くて逃げちゃ
    うよ? せめて扇風機でも――

      写楽、肩を落として戻ってくる。

 写楽 外環く〜ん。
 外環 なにその情けない声。
 写楽 水道も止められちゃいました。
 外環 うわっ、そこまで追い詰められてるわけ? こないだフグ田さんとこの浮気
    問題解決したじゃない。あの時の報酬は?
 写楽 使っちゃいました。
 外環 馬鹿っ! ドジッ! 何にっ!
 写楽 あ、いや、それは。
 外環 はは〜ん。女ね。
 写楽 う。
 外環 図星でしょ。(手をパン!)キャッチフレーズ!
 写楽 頭脳明晰、眉目秀麗なこの私にかかれば、どんな謎もイチコロだぜいっ!
 外環 その名も!?
 写楽 探偵 家達写楽っ!
 外環 所持金は?
 写楽 ん〜と、28円。
 外環 情けない。こんなんが先生とは弟子としてお天道様に顔向けできないわ!
 写楽 人を犯罪者みたいに。
 外環 水道を止められて、あとは?
 写楽 ガスも。あと事務所の家賃ですかね。
 外環 はぁ。よし、仕事しよう! 仕事して稼ぐしかない!
 写楽 しかしそんなに都合よく依頼人が来るとは――
 外環 なに言ってるの。仕事がないなら自分で作るの! そうだ、クロちゃんとこ
    行こう。こういう時はクロちゃんにたかるのが一番!
 写楽 しかしそんなに都合よく――
 外環 (携帯で)はい、はい、捜査一課の黒崎警部をお願いしたいのですが。はい、
    はい、それは何処に、はい、わかりました、はい。
 写楽 相変わらず行動早いですね。
 外環 チャ〜ンス! クロちゃん、現場に急行したってさ。
 写楽 現場?
 外環 なんかちょうど事件が起こったらしいよ。
 写楽 む。
 外環 先生が事件を解決して、また捜査協力費をもらおうよ。
 写楽 しかしそんなに都合よく――
 外環 レッツゴーッ!
 写楽 ちょ、ちょっと、外環く〜ん…。

      暗転。


 04「実行」(別荘リビング)

      中央にクロスが敷いてあるローテーブル。それを囲んでソファ。
      ローテーブルの上には、シュガーポット・ミルク入れ・菓子入れ。
      サイドボードや照明スタンドなど、リビングにありそうな調度品がある。
      上手袖奥は対面キッチンの設定。                                
      談笑する声とともに照明ON。                 
      赤木・青山・白石・桃井・緑川がソファに腰掛けている。
      並び順→ 赤青白    
          緑   桃
                                      
 青山 でね、コーヒーが飲めなくて牛乳もダメなんだけど、コーヒー牛乳は大好き
    なんだってさ。
 皆  (笑)
 青山 ホントこないだ会ったシロの友達、面白い子だったよな。
 白石 でしょ。
 青山 可愛かったし。
 白石 え?
 青山 なんでもない。
 赤木 おい、また何か良からぬこと考えてるんじゃないだろうな。
 青山 あはは、なんのことかな?
 赤木 お前にはシロがいるだろうが。
 青山 分かってるって。
 赤木 だから、その子、俺に紹介しろ。
 青山 は?
 白石 なに二人でこそこそ言ってるの。
赤木青山 いや、なんでもない。
 白石 変なの。
 桃井 あ、ちょっと失礼。

      桃井、席を立つ。

 青山 なに、お花摘み?
 桃井 バカ、違うわよ。

      桃井、キッチンから水の入ったコップを一杯持ってくる。

 赤木 なにそれ。
 桃井 見て分からないの? 水よ、水。
 赤木 それは分かるよ。どしたの?
 桃井 ちょっと風邪気味でさ。薬飲むの。
 白石 ちょうど入れるからコーヒーで飲めば?
 青山 あれ? おい、ミドリ、コーヒーで薬を飲んでもいいのか?
 緑川 コーヒーにはカフェインが入っているから、鎮静薬や痛風の薬は効果が弱ま
    ってしまう。交換神経を刺激する薬は逆に薬の作用が強められてしまうこと
    がある。
 青山 ダメってこと?
 緑川 いや。家庭用の薬で深刻な忌避があるものなんてほとんどない。
 青山 イイってこと?
 緑川 いや。基本的に薬は水か白湯で服用されることを前提に作られているから。
 赤木 どっちだよ。
 緑川 ダメという説もあるし、別に気にしないでいいという説もある。実のところ
    はハッキリしていないんだ。

      ヤカンがピ〜ッと鳴る。

 白石 あ、沸いた。入れてくるね。

      白石、キッチンへ駆け去る。
      桃井、空いた青山の隣に座る。

 桃井 じゃあ、薬は水で飲む。

      桃井、薬を口に含み、水で飲む。
      半分ほど水を残してコップをテーブルに置く。
      (指定行動1 後述)

 桃井 んで、この後にコーヒーを飲む。
 赤木 意味ないだろ。
 桃井 いいのいいの。要は気持ちの問題よ。
 白石 じゃあモモの分も入れるからね。ミドリは?
 緑川 いらない。僕はいつもの。

      緑川、カバンからミネラルウォーターのペットボトルを出す。

 青山 また一人でミネラルウォーターか?
 緑川 刺激物は極力避けたいからね。
 青山 まったく。酒も煙草も女もギャンブルもやらない、何が楽しくて生きてるん
    だか。
 赤木 アオとは正反対だよな。
 青山 俺がミドリみたいに医者だったらなぁ。
 桃井 アオが医者じゃなくてよかったねぇ、シロ。
 白石 え、うん。
 緑川 僕からすればアオみたいな軽い生き方こそ信じられないがね。
 青山 お、言うねぇ。じゃ、その重い生き方がどれほどのものか、試してやろう。
 緑川 試す?
 青山 ほらほら、眉間にシワが寄ってるぜ。ガチガチ頭になってないか、軽いクイ
    ズを出すだけさ。俺が今からする話の中で明らかに変な所を探してくれれば
    いい。
 桃井 ふ〜ん、面白そうじゃない。
 赤木 よし、俺もやる。ドンと来い。
 青山 シロもそこで聞いてるんだぞ。
 白石 うん。
 青山 「OLのキャサリンさんは――
 赤木 キャサリン(笑)
 青山 そこに引っかかるなよ。もう一度最初からな。「OLのマリリンさんは――
 赤木 さっきと違うぞ。
 青山 名前はどうだっていいの! いくぞ。「OLのスーザンさんはマンションで一
    人暮らし。朝、目覚まし時計のベルの音で目が覚めました。時計を見てビッ
    クリ。『ヤバい、もうこんな時間! 急がなくちゃ!』あわてて飛び起きて、
    顔を洗い、化粧をして、着替えて、パンをくわえて会社に向かいました。」
    さて、今の話のどこが変でしょう?
 桃井 終わり?
 赤木 変な所なんてあったか?
 緑川 …いや。
 青山 あったんだよ。皆の目の前、いや、耳の前に、今。
 白石 アオ、コーヒーが入ったけど、後にしようか?
 青山 おっと。じゃあ、答え合わせはコーヒーを飲みながらにしよう。

      白石、トレイに乗せてコーヒーカップを4つ運んでくる。

 青山 う〜ん、いい香りだ。これはキリマンジャロだな。
 白石 本当に適当なんだから。ブルマンよ。
 青山 なはは、そっか。
 桃井 アカはやっぱりブラック派?
 赤木 ああ。コーヒー本来の味を楽しみたいからな。
 青山 俺ぁ苦くてダメだね。砂糖とミルクを入れないと。
 桃井 私もブラックはダメ。
 赤木 あれ? モモも俺と同じブラック派じゃなかったか?
 桃井 なんか最近、胃の調子が悪くてさ、宗旨変えしちゃった。砂糖を入れるの。
 赤木 シロはミルクだけだっけ?
 白石 (配りながら)うん。やっぱりブラックは苦くて。でも砂糖を入れると甘す
    ぎて。ミルクくらいが丁度いいんだ。

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