夏風が運ぶ思い出

(なつかぜがはこぶおもいで)
初演日:0/0 作者:九国 光
「夏風が運ぶ思い出」




片野まみ
樋口けん









幕が上がって、そこには一人の女の子が立っている。
サス

まみ「私は知らなかったのです。いつものように笑って、いつものように話して、
   はしゃいで、嘆いて、考えて・・、そうした毎日はいつものように続くと思っていました。
   ずっとずっと・・いつまでも・・。これは、とある夏のお話です。」

蝉の鳴き声。
明転。
そこは、とある高校の教室。
男の子(けん)、女の子(まみ)が居る。
まみが黒板で数学を教えている。けんは何かを書いている。

まみ「で、ここがこうなるから・・」
けん「あーもう無理無理無理!!」
まみ「ちょっとー」
けん「いやだってさぁ、まじで分かんねーんだもん。」
まみ「どこが?」
けん「最初から。」
まみ「はあ?私教えたよね?私、教えたよね??」
けん「いや、そーだけどさぁ」
まみ「集中力がないのよ。」
けん「ごもっともです。だってまじで暑いよ。」
まみ「はいはい、言い訳は聞きません。」
けん「聞いてくれよー。」
まみ「だいたい、誰のせいで私が教えてると思ってるわけ?」
けん「さぁ?誰のせい?」
まみ「あんたでしょ!あんたと同じクラス委員なんてならなかったら、私はね、今頃友達と遊んでたのよ!!
   カラオケだって、カラオケ。今日、みんなでカラオケに行くって・・。」
けん「ほーう(聞いてるか聞いてないか分からない返事)」
まみ「あー、今頃みんなクーラーの入った部屋でワイワイ楽しくやってるんだろうなー。」
けん「あそれからそれから?」
まみ「学園天国とかさぁ。リンダリンダとか?まぁー古いって言われればそうかもしれないけど。良いの!それから〜、」
けん「どうしたどうした〜?」
まみ「小さな恋の歌とか良いよねぇ〜、そして最後はお決まりの〜、天城越え〜。」
けん「あそれそれそれそれ〜・・え?」
まみ「さっきから聞いてないでしょ。」
けん「あま・・なんだって?」
まみ「天城超え。石川さゆりの天城越えよ。あまぎーごぉーえぇー♪ってやつよ。知らないの?」
けん「いや知ってるけど、まじでそれ歌うのか?」
まみ「当たり前じゃない!あれは日本演歌界の代表よ。」
けん「あははっ」
まみ「あははっじゃないわよ。ちょっとあんた人事ね。責任とってよー。」
けん「おいおい〜、俺はなにもしてねーし。」
まみ「あんたの補習につき合わされてるんじゃない。」
けん「そりゃすんません。」
まみ「だから、早く済ませてよ。それ書いたら終わりでしょ?」
けん「そーだーなー」
まみ「やる気あんの?」
けん「まーったく・・」
まみ「はあ?」
けん「あ、いや、ガンバリマス。」
まみ「もう一回教えるわよ。3x+(2x-3y)i=6+iこのときの実数x,yの値を・・」
けん「エックスとかワイとか・・意味不明。しかも更にはアイが出てきたよ。ここは欧米かっ!っての」
まみ「古いって。」
けん「いや、片野さんに言われたくないですー」
まみ「まじめにやってくれる?」
けん「いやいや!見てみて、これ、アイが出てきたよ?数学ですが・・。」
まみ「そーですね。」
けん「こんなの英語だよ。」
まみ「あーのーねー。そんなこと言ったって、公式を考えた人がそうしてるんだからしょうがないでしょ。
   じゃぁあんた違うものに変えればいいじゃない。」
けん「おー例えば?」
まみ「んー・・、3学園天国+(2学園天国-3リンダリンダ)天城越え=・・」
けん「分かるかあああ!!!」
まみ「でしょ?だから、xとかyとかにしてるんじゃない。」
けん「理屈は分かるんだけどよ。」
まみ「じゃぁ、あんたの好きなものに変えれば?」
けん「3戸田えりか+(2戸田えりか-3沢尻えりか)朝倉えりか=・・」
まみ「えりか好きね・・」
けん「まぁな。」
まみ「どうでも良いけど、出来そう?」
けん「あぁ、妄想が膨らみそう。」
まみ「やめて。だから、おとなしくx,yで統一しましょ。」
けん「はいはい。」
まみ「早く解いてみて。」
けん「3x+(2x-3y)i・・」
まみ「・・・。」
けん「・・・。」
まみ「ちょっとー」
けん「ぐー・・(寝る)」
まみ「いい加減にしてよね。」
けん「あははっ」
まみ「あははっじゃないってば!」
けん「おっほほっ」
まみ「言い方の問題とかでもないから。あのー、帰りたくないんですかー?」
けん「おう!バレタか〜」
まみ「は?どうして?」
けん「まぁー家帰っても暇じゃん?」
まみ「それはあんたの言い分でしょー。私はねー」
けん「帰りたいんだろ?てか、カラオケに行きたいのか。」
まみ「そうよ。よく分かってるじゃない。」
けん「ま、そう上手くはいかせないけどな〜」
まみ「どうしてよ。」
けん「だって暇だもん。」
まみ「あのねー・・、あんたの都合に合わせてるほど私は暇じゃないの!」
けん「へいへい〜」

放送音
「2年3組片野まみさん、2年3組片野まみさん、至急職員室まで。」

まみ「あ、部活の話かな?ちょっと行って来るー」
けん「部長さんは大変ですなー」
まみ「そうなのよ。だから、あんたのお守りしてる暇なんてないんだからね。」
けん「お守りってなんだよー」

まみ退場。

けん「あー・・アチー・・。」

照明変わって、サス。
けん、サスの中に入る。

けん「こうして夕方時間をつぶしていた俺。実は、数学は得意な方。xなんてyなんてって言ってるけど、
   だいたい理屈は分かっている。ただ暇なだけだったんだ。・・とかいう見栄っ張りは置いときまして。
   確かに数学は分からないところもありました。でもそれより、俺が残りたかったのには理由があったんです・・。
   若い俺には分からない理由が・・。」

軽快な音楽
照明元に戻る。
けんも元の位置に移動。
ボーっと携帯を眺めている。
まみ登場。

まみ「・・・。」
けん「(音楽に合わせて鼻歌)」
まみ「もしもし?」
けん「おわっ、なんだよ、びっくりするなー」
まみ「なにしてるの?」
けん「音楽聞いてんだよ。」
まみ「もしかして!終わった?」
けん「(即答)まだ。」
まみ「即答しないでよ。しかも、まだって・・。じゃぁ、音楽消して。」
けん「えー。」
まみ「えーじゃない!帰れなくなっちゃうでしょ!」
けん「(音楽消す)学校にお泊りか?」
まみ「嫌よ。」
けん「だーよな。」
まみ「どれだけ進んだの?」
けん「えーっと、3x+(2x-3y)・・」
まみ「さっきと変わんないじゃん!」
けん「まぁな。」
まみ「威張らない。もー、あんたなんなの?」
けん「分かった分かった。」
まみ「ほんと手のかかる子どもみたい。疲れるわー。」
けん「なんだった?」
まみ「なにが?」
けん「さっきの呼び出し。」
まみ「あー・・、部活のこと。なんか新入生が入ったらしいんだけど、部員名簿作れって。」
けん「片野が?」
まみ「うん。先生忙しいらしい。」
けん「うそだー。あいつ暇そうじゃん。」
まみ「さぁ〜、ま、先生も色々あるんでしょ。」
けん「よくやるよなぁ〜。」
まみ「まぁ、部長だし。」
けん「雑用係?」
まみ「違うもん。部長だからだもん。」
けん「ふーん。(意味ありげな感じ)」
まみ「・・・。」
けん「・・・。」
まみ「なに?」
けん「いやー、なんとなく?」
まみ「良いから、早く終わらせて。」
けん「はいはい。」

けん数学を解く。
まみボーっと座ってる。



まみ「ねー・・、なんで高校生って勉強しなきゃなんないんだと思う?」
けん「あ?なんだよ急に。」
まみ「なんかね、不思議だと思わない?高校生って一番楽しい時期って言うけど、勉強勉強だし・・、
   何が楽しくて勉強してるんだろうって、あるいは勉強することが楽しいのかなって・・。」
けん「それは、あれだろ。」
まみ「?」

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