トイレのきもい妖怪の話
cast

しげる…♂
くにお…♂
入道…♂




    アパートの一室であるしげるの部屋。男の一人暮らしっぽく散らかっている。出入り口はひとつ。
    舞台には男がふたり(しげる、くにお)。ふたりで対戦テレビゲームをしている。

くにお「ねえ、しげる君」
しげる「あん?」
くにお「のど渇いた」
しげる「そう」
くにお「のど渇いた」
しげる「冷蔵庫に麦茶あったろ」
くにお「とってきて」
しげる「唾でも飲んでろ」
くにお「のどが渇くということは、体液の濃度が上がってるということで、自分の体から分泌された汁を飲んだところでその濃度は変化しないわけで」
しげる「喋ってる余裕あんのか?」
くにお「おっとぉ、容赦ないね」
しげる「……おう、くにお。じつは俺ものど渇いたんだ」
くにお「奇遇だね。実は僕もそうなんだ」
しげる「知ってる」
くにお「おお、流石」
しげる「それで、この勝負に負けたほうが冷蔵庫まで行って麦茶を取ってくるというのはどうだ?」
くにお「なるほど、つまりこういうことだね。この勝負に負けたほうが冷蔵庫まで行って麦茶を取って戻ってくうわあ! 負けたあ!」
しげる「……おつかれさん」
くにお「ぐぬぬ、くそう」
しげる「ほら、とっとと行けよ負け犬」
くにお「次は負けないからな!」

    くにお、出入り口に向かう。

くにお「……しげる君、どうしても一緒に行きたかったらついてきてもいいんだからね」
しげる「おとといきやがれ」
くにお「ひとでなしぃ」
しげる「怖いのか」
くにお「まあね」
しげる「お前のそういう見栄張らないところは好きだぜ」
くにお「ありがとうしげる君! ついてきてくれるんだね!」
しげる「やだよ」
くにお「わーう。フェイントかーい」
しげる「冷蔵庫そこじゃねえか。お前のその位置から五歩もねえよ」
くにお「うぐう……ちなみに今何時?」
しげる「もーすぐ午前三時」
くにお「もろ丑三つ時じゃん。僕の死亡フラグ立ってるよ」
しげる「いいから行けよ。言ってる間に乾いて死ぬぞ」
くにお「うう……一時間経って僕が帰ってこなかったら、ちゃんと警察に連絡するんだよ」
しげる「ああ、一分経って戻ってこなかったらそーするよ」
くにお「よぉし。くにお、いざ行かん! うおおおおおお!」

    くにお、いったん退場。麦茶のペットボトルを手にすぐに戻ってくる。

くにお「うおおお……死ぬかと思った」
しげる「お前の命はどんだけ儚いんだよ」
くにお「はい。戦利品、命の水。僕が先に飲んでいい?」
しげる「ああ、確かコップは洗ったやつがシンクの上に……」
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