金本家ホリックホーム
cast

親父♂
優子♀
潤♂
綾香♀




一軒家のリビング。ソファと机があったら最低限OKな気がする。下手側にキッチンとダイニング、上手側に玄関があるという体で。
※のついている台詞は録音音声にした方が映えると思う。

    照明OFFの状態。

※親父「拝啓。愛する我が妻よ。そちらは多忙だろうが、この手紙を読む時間くらいはとれるだろうか。この俺様がせっかく書いている文章なので、時間がなくとも一瞥くらいしてくれると有難いことこの上ない。さて、こちらはそれなりに上手くやっているつもりだ。家事は優子が率先してやってくれている。潤も毎日が楽しそうだ。俺も毎日が楽しい。ニートだからな。……ああ、例の子も今のところ上手くやっている。俺様が道化を演じているおかげで最近は笑顔も見られるようになった。褒めてもいいぞ。ふはははは」

    明転。
    舞台上では男がふたり、テーブルで向かい合ってボードゲームをしている。

親父「さあて息子よ、この鉄壁の城塞をどう攻略する?」
潤 「流石は親父……この配置はまさに鉄壁。だが、いかに強固であろうとも陥落しない城など存在しない!」
親父「秘策があるようだな。いいだろう、見せてみろ」
潤 「コマンド宣言! 自軍の白と黒三枚ずつを代償に敵陣地1‐Aから3‐Bを使用不能にする!」
親父「む、駒を削るのではなく土地を崩すか……しかしその為に兵力を犠牲にする行為はまさに自殺行為」
潤 「それはどうかな?」
親父「なん、だと?」
潤 「盤上をよく見てみろよ。俺のチップの中で、唯一戦いに参加していない奴がいるだろ」
親父「こ、これは……」
潤 「気づいたようだな。流石俺の親父は頭の回転が早い。そう、一見意味の無いように見えるチップ、こいつは最初から敵軍1‐Hを目指していたんだ」
親父「聖地(サンクチュアリ)だと……?」
潤 「そう、敵地の最奥地。この地に足を踏み入れれば因果は逆転する。すなわち、墓地に眠るチップと盤上のチップが逆転する。俺の墓地に眠るチップは十一枚」
親父「く、俺のチップはほとんど無傷で残っている……はっ!」
潤 「気づいたようだな」
親父「コマンド宣言でチップを狙わずにわざわざ土地を封鎖にかかったのは……」
潤 「そう、これが狙いだ。わざわざ敵兵を墓地に送って、俺のチップが聖地(サンクチュアリ)にたどり着いた後に兵力を整えられては適わないからな」
親父「く……」
潤 「形勢逆転、だな」
親父「ああ、どうやら詰みのようだな」
潤 「親父……」
親父「見事だ……息子よ。もはやお前は俺を超えた……」
潤 「親父……感謝する。俺がここまで強くなれたのはあんたという父親がいたからこそ……」
優子「(下手から)昼ごはんできたわよー」

    下手から優子登場。

優子「あら、オセロやってたの?」
親父「ああ、押入れを漁ってたら出てきたのだ。マイ・スウィート・ドーター」
潤 「聞いてくれよ姉貴、とんでもない話があるんだ」
親父「そうだ娘よ。この事実を耳にしてなお正気を保てると思うなら心して聞くがいい」
優子「なにかしら」
潤&親父「「ルールがわからん」」
優子「今までどうやって遊んでたのよ」
親父「魂に導かれるまま手を動かしていたら、こうなっていた」
優子「……ふーん」
親父「おい娘よ、今俺のこと馬鹿だと思っただろ。お父さんだぞ!」
優子「ああ、うんまあ。別に今に限ったことじゃないけど。私はお母さんに似てよかったなあと思う。潤には気の毒だけど」
潤 「あ、はは親父、娘に馬鹿にされてらあ!」
優子「うん……ホントに潤には気の毒だと思う」
親父「ふふん、気の毒なのはお前の方だ優子よ。我が素晴らしきDNAを引き継げずにスーパー一般人である愛する我が妻に似てしまったことを意味するは真に残念である」
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