空のハードル

(そらのはーどる)
初演日:2000/7 作者:ながみねひとみ
「空のハードル」作・ながみねひとみ

梅(ウメ)   
絢子(アヤコ)
知里(チサト)
文哉(フミヤ) 
尚美(ナオミ)・花(ハナ)
幸太郎(コウタロウ)・悠太(ユウタ)
若い頃の梅   …幸太郎の妻
アナウンサー  …テレビから流れる日常の情報


























場面① 今がよけりゃすべてよし

     これは一九九六年頃におこった話。
     上手には台所、下手には玄関。居間にはちゃぶ台
     奥には襖、悠太玄関にいる時計を気にしている。

悠太  おはようございます。

     悠太、家の中に入って、
     ちゃぶ台の近くまでやってくる

悠太  おはようございます!…あの…。

     梅、襖からでてくる

梅   きぇぇぇぇい!曲者か!

     梅、悠太にむかってほうきを振り回す。
     悠太、あわてて逃げる

悠太  う、梅ばあちゃん!
梅   えい!やぁ!とぉ!あら、知里。
悠太  遅いよ、知里ちゃん。
梅   すきあり!

     梅、ほうきで一突き、倒れる悠太。

梅   男は隙をみせるべからず!
悠太  はい、すみませんでした。

     悠太、倒れる。

悠太  ところで、知里ちゃんは?

     襖から知里の声

知里  あー!もう。

     知里、襖からでてくる。

知里  遅刻する!今、何時?やだぁ、もう、間に合わない!
    なんで起こしてくれなかったの!

     知里、倒れている悠太に腰掛けて靴を履く。
     絢子、お弁当をもって台所からやってくる

絢子  起こしましたよ、でも、起きなかったじゃない。
知里  起こし方が悪いの!(鞄をみる)お母さん、お弁当!

     絢子もっていたお弁当を渡して

絢子  はいはい。気をつけていきなさいよ。
知里  わかってるよ!

      知里はける

悠太  ま、まってよ!

     悠太、慌てて後をおいかけて
     はける。

梅   情けない…。時代は変わったねぇ…。昔は男はたくましく女は…。
絢子  「おしとやかだった」でしょ?
梅   そうだよ、いいかい絢子。お前が情けないから知里に
    なめられるんだよ。
絢子  なめられるって…。
梅   そうじゃないか、口答えされてるし、弁当だって自分で作らせりゃ
    いいんだよ。
絢子  そうかもしれないけど…
梅   ええい、とにかくお前は甘やかしすぎなんだよ!
絢子  はいはい。

     文哉、黙って障子からスーツ姿でやってくる。

文哉  いって来る。
絢子  あら、あなた、お弁当もちました?
文哉  ああ。
絢子  ちゃんと朝ご飯たべました?
文哉  ああ。
絢子  あら?やだあなた、口の周りにご飯が…はい。
文哉  ああ。
絢子  ネクタイ曲がってますよ。
文哉  ああ。今日は遅くなる。
絢子  あら、何があるんですか?
文哉  ああ。
絢子  そうですか、会議があるんですか。
文哉  ああ。
絢子  いってらっしゃい。
   
     文哉、はける

梅   ああ。
絢子  母さんそういう言い方止めてくれない。あの人だって色々大変なんだから。
梅   ああ
絢子  母さん!
梅   …昔の男はよかったよ。
絢子  また、その話…。
梅   お前の、お父さんは男の鏡のような人だったんだよ。
絢子  はいはい。さてと、洗濯、洗濯。

     絢子、台所にはける
     梅、仏壇を眺めて

梅   はぁ。幸太郎さん…。あたしゃ、嘆かわしいですよ…。
    あなただったら、今の絢子や孫の知里になんて言ってやりますか?
    あなたがいきていてくれたらねぇ幸太郎さん。

     テレビが付いている天気予報

テレビ 続いて長野県の天気です。今晩一部で激しい雨となる恐れが有るでし 
    ょう。北部に雷警報が出ています。おでかけのさいは十分ご注意
    ください。
梅   こりゃあ、早めに絢子に買い物に行かせたほうがよさそうだねぇ。
    絢子!絢子!
    
     時間経過、梅はテレビをみている。
     部活の愚痴をいいながら知里かえってくる。

知里  ただいまぁー。あー。疲れた。
悠太  おじゃましまーす。

      知里、鞄などをちらかす。

梅   これ、知里!なんで、お前はこういうだらしない事をするんだ!
知里  うるさいな、ばあちゃんには迷惑かけてないでしょ。
梅   何いってんだい、ひとりじゃ何にもできないくせに、偉そうな口を
    きくんじゃないよ。ほぅ、片づけな!
知里  だから、それはお母さんがやるからいいの。
梅   自分の事ぐらい自分でやったらどうだい、私が十八の時なんか
    ねぇ、もう、お母さんを育てていたんだよ!二十歳になったときは…
知里  家族のために山菜をとりに行って道に迷って帰ってこれなくなった…
    でしょー。聞き飽きた。
梅   あたしゃ、お前が食ってるか寝てるか、それしか見たことがないよ。
知里  ふーん…。(まったく聞いてない)
梅   馬鹿みたいな顔してるんじゃないよ。
知里  はいはい、馬鹿で結構。悠太、鞄持ってきて。あー、余計な体力
    つかちゃった。(ぶつぶつ)
悠太  え、あ、ちょっと。

     知里、悠太、襖にはけようとする。汚い部屋、
     知里のものが散乱している。

梅   いったい、誰に似たんだか。

     梅、片づける襖にはけようとしていた知里

知里  お母さん、お菓子もってきてー!

    台所から絢子の声

絢子 (声) 自分でやりなさい、それぐらい!
知里  どこにあるかわかんないもーん。お母さんやってよ〜、はやくー!
梅   知里!何度、同じ事言わせるんだい!自分の事ぐらい自分でやれって
    いってるだろ、お前はなんでそれができないんだい。
知里  できないんじゃんなくてやらないの学校でやってるからつかれてるの。
    家にいるときぐらい休ませてくれてもいいじゃん。うるさいな。
梅   うるさいな。じゃないよ!そんなんじゃお嫁にいけないよ。
知里  お嫁?あははっ、嫁にいくのなんてずーっと先のことじゃん。
梅   先の事じゃないよ。あたしがお前ぐらいだったとき…
知里  それは、ばあちゃんの時代でしょ?今は私の時代なの。
梅   何を偉そうにいってんだい。いいかい。
知里  悠太。
悠太  なに、知里ちゃん?
知里  ばーちゃんうるさいから、悠太んち行こう。
悠太  え、いいの?
知里  いいの、いいの。
梅   こら、知里、まだ話しは終わってないんだよ!
知里  はい、はい。

    知里、悠太、玄関の外へ

悠太  本当にいいの?知里ちゃん。
知里  いいのよ、いちいち、うるさいのよね。あーしろ、こ―しろって
    本当むかつく。
悠太  でも…。
知里  でも、なによ?
悠太  知里ちゃんは少し…えっと…ほら…そのぉ…
知里  …もうっ、イライラするなぁ!私のどかわいちゃったんだけど。
悠太  そうなの?
知里  …気がきかないなジュース買ってきてっていってるの!?
悠太  あぁ…ご、ごめん。

     悠太、行きかけて…。

悠太  ねぇ、僕たちはいま、こうやって簡単にジュースとか
    買えちゃうけど…昔はどうだったのかな?。
知里  昔がどうのこうのいってるよりかも今を楽しむことが先決でぇす。
悠太  でも、昔あっての、今だと思うよ。
知里  先生みたいなこと言わないで、うざぁい。
悠太  ごめん。
知里  日本史とか大嫌い。もう…第一次世界大戦がどうだ…戦争でああだ…
    昔のこと学んで何になるんだっての…。めんどぉい。
悠太  知里ちゃんて…なんのために学校いってるの?
知里  え?みんな行ってるし、友達いるから?
悠太  大学とかいく?
知里  えー、全然、考えてなぁい。考えるときがきたら考える。
悠太  そ、そうだよね。

     知里の携帯がなる

知里  あ、尚美だ…もしもし、今?悠太ん家に行く途中、え?カラオケ行く行くぅ!
    今から尚美とカラオケ行くけど、悠太どうする?
悠太  あー…いい。
知里  いかないって。うん、じゃ、そこで、ばいばい。うわっ、電池終わった!(携帯)
    最悪!
悠太  カラオケいくの?
知里  うん。
悠太  雨ふるって言ってたから、気をつけてね。
知里  平気じゃない?(空をみて)
悠太  雷もすごいっていってたし。
知里  打たれて死ぬって?

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