自殺願望
「自殺願望」    
登場人物
 少女…十七歳の自殺志願者
 男…三十歳前後の強盗犯
 刑事…刑事
 エキストラ…エキストラ


  ―そこはマンションの屋上、上手がフェンス、下手が屋上出口
  ―少女と男が背中合わせで中央に座っている
  ―二人、同時にゆっくりと立つ
  ―鏡合わせのようにお互いふりかえり、お互いの手と手を合わせる
  ―男、少しして笑みを浮かべ、下手へはけていく、少女は手を出したまま
  ―男がはけて少ししてから少女も手を下ろして上手へ行き、靴を脱ぐ
  ―雑踏のSE、遠くでパトカーのサイレンなんかも鳴っている

少女「…ああ、お父さん、お母さん、私はあなた達のおかげでこんなにも不幸です…だか
 らついでに自殺する不幸もあなた達のせいです…後片付けよろしく〜」

  ―手紙を出して靴へ入れ、上手を覗くように見る

少女「うおう…高い…」

  ―その頃に下手から男、鞄を引っさげて走りこんでくる

男「ふう…ここまでくりゃあ…って…あ?」
少女「いたそーだなぁ…どうしょ〜かなぁ…」
男「おい」
少女「!いや!私死ぬの!死なせてぇ!」
男「え!?お、ちょ、まて!」
少女「止めないで!私ここから跳ぶの!」
男「やめろ!自殺する気か!?」
少女「そうよ!潰れたトマトになりたいの!木っ端微塵になりたいの!」
男「待て!よく考えろ、そんなことしたらとっても痛いじゃないか!」
少女「うふふ、うふふふ…みんな私を見るのよ…何も知らない子供は泣き叫びながら目に
 焼き付けるのよ!」
男「やめろ!そんな事して何になる?」
少女「キレイ事言わないで!ほっといてよ!他人のする事に口出さないで!」
男「ああそうさ。俺はお前とは初対面だ。会った事もない。何処の誰だか知りもしない。
 全然見たこともない。誰だお前は!」(いきなり怒鳴る)
少女「な、何いきなり怒鳴ってるのよ」
男「あ〜もう!俺はお前なんかにかまってる暇はないんだよ!」
少女「え?…な、何よ、目の前で女の子が自殺しようとしてるのよ?」
男「したきゃしろよ、ほれしろよ、さあしろよ」
少女「…う…う…」
男「ふん、どうせ止めて欲しかっただけだろ。やだやだ、暗いねえ。そうやって自分に注
 目させたいんだろ?」
少女「違う!違う〜!」
男「じゃあ飛べ」

  ―少し考えて、ゆっくりと振り返る少女、ゆっくりと下手へはけようとする

男「…痛いぞぉ…まずな、骨が砕ける音がするんだ。ベキ!バキ!って…そして血が変な
 流れ方する感じがするんだ。目の前も真っ赤になってくる。もちろんその時はあまり痛
 くないんだけどな、でもその分死ぬ間際に一気に痛みが」

  ―ペースを変えずに戻ってくる少女

少女「……」
男「どうした?跳ばんのか?」
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