はじまりの駅

(はじまりのえき)
初演日:0/0 作者:ぶん
○第一駅 はじまりの駅

   田舎にある寂れた無人駅。
   ユカ登場。ここには偶然辿り着いた様子で周りを見回している。
   

ユカ   こんなところに駅なんかあったんだ。全然知らなかった。今はもう使
     われてないのかな?

   ユカが駅内や線路を見て独り言を言ってる後ろに少女Aが登場。
   少女A、ユカに気付いて興味津々にユカの背後に近づく。

少女A  (この人何してんだ?)
ユカ   この線路はいったいどこにつながってるんだろう?
少女A  (向こうに決まってるじゃないか)
ユカ   ん? (何やら背後に気配が!?)

   ユカ、振り向く。
   が、少女A、上手くユカの背後に回り込む。

ユカ   (誰かいたような……)気のせいか。

   ユカ、再び、駅の中を見て回る。
   少女A、ユカの背後についている。

ユカ   何か気配を感じるような……

   ユカ、再び振り向く。
   が、少女A、またもや上手くユカの背後に回り込む。

ユカ   絶対誰かいるよね……

   ユカ、突然素早く振り向く。
   が、少女A、またしても上手くユカの背後に回り込む。
   が、ユカも負けじと続けて逆回転振り向き。
   しかし、少女A、またも上手くユカの背後に回り込む。
   そして何度か同じ事を繰り返し、いつしかリズミカルなダンスになったと
   ころで、

ユカ  (また同じ様に振り返ると見せかけて)フェイント!

   ユカ、動きのパターンを変えて、遂に少女Aの姿を捕らえる。

少女A  おおっ! 見事なフェイントだ。
ユカ   あなた、誰?
少女A  え? 私が誰かって?
ユカ   うん
少女A  んー、そうだなー、少女A?
ユカ   え?
少女A  少女A。
ユカ   はい?
少女A  だーかーら「しょ」「う」「じょ」「A」
ユカ   そんな丁寧に言い直さなくても聞こえてるわよ。
少女A  じゃ、聞き返さないでくれる?
ユカ   わけのわかんないこと言うから。
少女A  我が輩は人である。……人だよな?
ユカ   え、あ、うん、そう見えるけど。
少女A  うん、我が輩は人である、名前はまだない。ちなみに人権もないのか?
ユカ   は?
少女A  いや、だから、我が輩は人である、名前はまだ
ユカ   丁寧に言い直さなくていいから。
少女A  なんだ、「は?」とか聞き直してくるからわざわざよかれと思って言
     い直しているのに君はわがままさんか?
ユカ   そんなことはないと思うけどな。
少女A  まあ、いいけど。
ユカ   あ、ねぇ、この駅ってさ、今でもまだ使われている駅なの?
少女A  ああ、そうだ。
ユカ   へー、そうなんだ、私この町にずっと住んでるのに初めて知ったわ。
少女A  まぁ、存在感ないからな。
ユカ   そうゆう問題?
少女A  違うのか?
ユカ   違うと思う。
少女A  いいや、違わない、ここは存在感のない駅。むしろ存在してるのかど
     うかだってあやふや……
ユカ   あやふや
少女A  なのか?
ユカ   いや知らないわよ。私に聞かないで。
少女A  無知な人だなー
ユカ   じゃぁ、あなたはこの駅のこと何でも知ってるの?
少女A  もちろん知ってる事は知ってる。知らない事は知らない。
ユカ   そりゃそうよね。
少女A  質問があるなら言ってみな。答えられる事なら答えてやろう。
ユカ   そうね、ここは何ていう駅なの?
少女A  はじまりの駅。
ユカ   はじまりの駅。
少女A  そ、ここが一番最初の駅だから。
ユカ   安易なネーミングね。
少女A  駅の名前なんて安易なのが殆どだ。
ユカ   ここから電車に乗ると何処につくの?
少女A  決まってるじゃないか。おわりの駅だ。
ユカ   これまた安易なネーミング。
少女A  駅の名前なんて安易なのが殆どだ。
ユカ   で、おわりの駅って何処なの?
少女A  何処って?
ユカ   ほら、地名とかそんなので言うと。
少女A  おわりの駅はおわりの駅。
ユカ   何それ、そこもあやふやなの?
少女A  あやふやも何もおわりの駅はおわりの駅だ。
ユカ   んー、じゃぁ、駅は間に何駅あるのかな?
少女A  さぁ、それはその人次第じゃない?
ユカ   はぁ?
少女A  いや、だから、その人次第。
ユカ   意味わかんない。
少女A  列車に乗ってみればいいじゃないか。そしたら分かる。
ユカ   そんな何処に着くかわかんない電車に乗らないわよ。
少女A  物事、先が分かった上で進める事などそうはないぞ。
ユカ   あなたは乗るつもりなの?
少女A  それはわからない。
ユカ   じゃ、ここで何してんの?
少女A  特に何も。しいて言うなら君と話している。
ユカ   あなた、けっこう屁理屈系ね。
少女A  君に似て。
ユカ   それにしてもここ、本当に今でも使われてるの?
少女A  使われてるってさっき言っただろ。
ユカ   でもさ、何か怪しいんだよね。時刻表も、路線図も何もないしさ。人
     が駅として使った痕跡がないじゃない。
少女A  ノートがある。
ユカ   ノート?
少女A  無人駅の定番、駅ノート。駅を利用した人が好き勝手に落書きをして
     いくノートだ。
ユカ   あ、ほんとだ、こんなところにノートがある。

   ユカ、ノートを手に取り、開こうとする。

少女A  ストップ。
ユカ   何?
少女A  覚悟はできてるのか?
ユカ   覚悟? なんの?
少女A  そのノートには思いが詰まっている。それを知る覚悟だ。
ユカ   は?

   ユカ、ノートの中を見て、読む。

ユカ   「1992年9月15日、こんなところに駅があるなんて今まで気付
     かなかった」やっぱりみんな気付かないんだ。「もう何も信じられな
     い、生きているのが辛い、とても辛い」っていきなり重いっ、内容重
     っ。

   少女A、ユカに乗りかかる様にノートを覗いている。

ユカ   でもって、あなたも重い!

   ユカ、少女Aを振りほどき、ノートの次のページを読む。

ユカ   で、その次が……「1993年12月3日」え、前のお客さんから一年
     以上も経ってる。「愛しい人の突然の死。私には耐えられない。私もそ
     っちに行くよ。待ってて」ってこれまた重い! 連続で重い!

   少女A、ユカに乗りかかる様にノートを覗いている。

ユカ   でもって、あなたも重い!
少女A  ふっ

   ユカ、ノートをパラパラとめくり、流して見る。

ユカ   何なのこれ。みんな内容が重いじゃない。いったい何なの? ここって
     自殺の名所かなにか?
少女A  違う。ここははじまりの駅。おわりの駅へ向かう第一歩。
ユカ   おわりの駅に着くと何が待ってるの?
少女A  わからない。 でも、きっとそこには終わりが待ってるんだろう。
ユカ   終わりか……
少女A  君も、何かを終わらせたいんじゃないのか?
ユカ   ……………このノートの人たちもみんなおわりの駅に向かったのかな。
少女A  さぁ

   ユカ、ノートを見ていて何かに気付く。

ユカ   ! ……こ、この最後の書き込みって……
少女A  「20××年○月△日(公演日の3年前くらい) 私はおわりの駅に向か
     おうと思う。そして何もかも終わらせてしまいたい」

   サトミ登場。ユカ、少女A気付いていない。

ユカ   3年前……この近くで自殺した……
少女A  「いってきます。そして、ごめんなさい。サトミ」

   ユカ、サトミに気付く。

ユカ   お姉ちゃん……

   サトミ、ノートを書き始める。

ユカ   お姉ちゃん!
サトミ  ユカ……ゴメンね。
ユカ   ねぇ、お姉ちゃん。
サトミ  私、終わりにするわ。
ユカ   お姉ちゃん!
少女A  無駄だ。
ユカ   だって、お姉ちゃんがここに!
少女A  君のお姉さんは3年前に死んだんだろ?
ユカ   …………

   サトミ、ノートを書き終える。
   列車のドアが開く音。
   サトミ、列車の方へ。
   列車が発車する際のプルルルルって音。

ユカ   お姉ちゃん待って!
サトミ  いってきます。

   サトミ、列車に乗って去っていく。
   列車のドアが閉まり、去っていく。

ユカ   3年前、お姉ちゃんは死ぬ前にここに来たんだ。
少女A  そして列車に乗っておわりの駅に向かった。
ユカ   で、本当に終わりにしたんだ。なにもかも……
少女A  ここははじまりの駅。行き先はおわりの駅。乗せるは悩める人。もう
     すぐ列車がやってくる。もちろん列車に乗らずに帰るのも列車に乗っ
     ておわりの駅に向かうのも君の自由。

   列車が近づいてくる。

少女A  人生は決断の連続。その一瞬一瞬の決断の積み重ねが未来を作り上げ
     る。一歩を踏み出すのも吉、踏みとどまるのも吉、後退するのも吉、
     そして同時に全て凶にもなりうる。

   列車のドアが開く。

少女A  さあ、自分で選んで。
ユカ   私……

   列車が発車する際のプルルルルって音。

少女A  乗る? 乗らない?
ユカ   ………
少女A  さぁ、どっち!
ユカ   ………乗る。

   ユカ、列車に乗る。
   列車のドアが閉まり、去っていく。


○第二駅 にばんめの駅

   少女Bが大の字で寝ころんでいる。

少女B  …………なんだろう。なんなんだろう。とりあえず声を出したい。叫
     びたい。(問いかける)いいっすかね? いいっすかね? あたし叫ん
     じゃっていいっすかね? じゃ、叫びますから耳ふさいどいて下さいな。
     (大きく息を吸い込んで)あああああああああああああああああああ
     ああああああ!(落ち着いて)人はどうして生きるんですかね?自分
     は何のタメに生きてるんですかね? こんな悩みを持つ人間という生き
     物、どう思います? 何だか情けないですよね。頭でっかちなだけで。
     でも……いいいですよね。情けないけど良いですよね。私も悩みたい。
     (大げさな演劇調で一人二役)「嗚呼、自分、自分はどうして生きて
     るの?」「それはね、自分の生きる意味を見つけるためだよ」「そん
     な目的のタメに生きるなんて私はイヤだわ」「だったら僕のタメに生
     きてみないか」「あなたのタメ?」「ああそうさ、君がいなくなると
     僕はきっと壊れてしまうだろう。しかし、君がいる限り僕は何度朽ち
     果てても立ち上がることができる、さぁ、今すぐ僕の胸に飛び込んで
     おいで」「冗談じゃないわ!あんた見たいなブ男!」「どっひぇ〜」
     (一人芝居を終えて)あーあ、ほんと贅沢。私も悩んでみたい。

   列車が近づいてくる。

少女B  ……きたわ。

   列車のドアが開く。
   ユカ登場。はじめは少女Bに気付いていない。

ユカ   ここが、おわりの駅?
少女B  ノンノノン
ユカ   ! あなた誰?
少女B  私? 私はそうねぇ少女A?
ユカ   少女A?
少女B  そそ、少女A。
ユカ   少女Aはさっきはじまりの駅で会ったけど。
少女B  え? 少女Aに会ったの??
ユカ   うん
少女B  そっか、そっか、そかそかそか、あーあーあー、そうゆうことか。
ユカ   何?
少女B  じゃ、私は少女Bね。もしくは美少女でもいいけど?
ユカ   AがダメならBって。あなたも名前ないの?
少女B  んー、無いこともないんだけどね。ちゃんと用意してはあるし。でも、
     そんなこといいじゃない。
ユカ   そう。よくわかんないけど。で、ここはおわりの駅ではないのね?
少女B  うん。ここははじまりの駅でもおわりの駅でもない。とちゅうの駅。
ユカ   はじまりとおわりの間、途中だからとちゅうの駅?
少女B  あ、じゃあ、にばんめの駅でもいいよ?
ユカ   どっちでもいいわよ。とりあえずおわりの駅ではないんでしょ?
少女B  その通り。列車に乗って次の駅が終点なんて芸がないっしょ? だから
     とちゅうの駅は存在するのよ。でもさ、結局んとこ終わりの駅に向か
     うんだったらわざわざここで降りなくてもいいのに、どうしてあんた
     はここで降りたの?
ユカ   そういわれればそうね、どうして降りたんだろ?
少女B  わかったお腹でもすいたんでしょ?


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