夕陽のあたる教室〜俺たちの応援歌
「夕陽のあたる教室〜俺たちの応援歌」 中島清志 作
〔キャスト〕♂1人 ♀ 鈴木健一・・・高校3年生
やかましいセミの鳴き声。
真夏の太陽が差し込む誰もいない学校の教室。
後ろの黒板に大きな文字で「めざせ甲子園」と書いてあり、その他色とりどりの小さな文字や絵が描いてある。
しばらくしてから大きなバックパックを背負った鈴木健一がドアから教室に入ってくるとタオルで顔を拭く。
「ふわあー。
こりゃマジ蒸し風呂だな〜」
ぐちゃぐちゃに進路関係の本や教科書類や辞書などが突っ込まれている書棚の中からうちわを見つけてとると、体中あちこちをしきりにあおぐ。
「はあ、あっぢい・・・
疲れたあ!」
カッターシャツをはだけてあおいだりする。
しきりと鳴いているセミの声にむかついて、書棚にケリを入れながら
「ミンミン、うるっせーんだよ!」
しかし、セミは健一をあざ笑うかのようにますますやかましく鳴き始める。
健一は床にべちゃっと座り込んでしまい
「あっぢー!」
そこへ携帯電話の呼び出し。
健一、面倒くさそうに出る。
「もしもし・・・
何だオトンか・・・
え?
今学校・・・
さっき言っただろ。
クビになっちまったからさ、自分の持ち物取りに来たんだよ・・・
ああ、誰もいねえよ・・・
え?
オカンから、電話があったって?・・・
え、何で?・・・
ああ、そうだよ、オカン再婚するっつってた。
あさってさ、その男がうちに来るよ・・・
え?
だからもう会わない方がいいだろうって?・・・
あんなー、それってあんたらの都合なんだから、オカンと話つけろよ・・・
俺?
俺は・・・
どっちでもいいよ。
ああ、マジで。
じゃ。」
健一、携帯をしまうと、それと入れ替わりのようにタバコを取り出して火をつけ、床に座ったままで吸い始める。
「大体、オトンもオトンだよな。
普段おっぽり出しといて、自分の好きな時だけ息子に会わせろってのは虫が良過ぎるんだよ。
ま、俺は小遣いもらえるから会ってやってもいいんだけどさ。
ぶっちゃけ、タバコ代だってバカになんねえもんな。」
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