大好きなペット
   男と女が同棲しているアパートの一室。
   蛙をメチャクチャ可愛がって撫でている男

男 アー、カワイイカワイイ。いい子だねぇ。ピョン太。

   男、カップを取ろうとする。

女 その手で触らないでよ。
男 何だよ。
女 気持ち悪いの。蛙触った手で。
男 濡れてるだけでしょ。
女 違うでしょ。ヌルヌルしてるでしょ。
男 まあ、若いからっ。まだピョン太は若いからっ。お肌がスルスルなんだよ。
女 バカじゃないの。
男 ・・・カサカサだから羨ましいんだってさ。いやだね、あのオバサンねー。だから売れ残っちゃうんだよね。
女 ・・・お前が結婚しろよ。
男 え?
女 売れ残ってるのは誰のせいだと思ってんのよ。あんたが結婚しろって言ってんの。
男 何真面目になってんの。
女 ・・・。
男 冗談じゃんねー、ピョン太ぁ。冗談なのに、真面目になっちゃって。冗談なのにねー。
女 売れ残りは、そっちの方でしょ。ペットショップで蛙800円って。売れるわけないわ。
男 ・・・何、言ってんだよ。
女 え?
男 何が売れ残りだよ。お前、何言ってんだよ!
女 冗談でしょ・・・。
男 いや、冗談とかじゃなくて。冗談とかじゃなくて。まじで。まじで冗談じゃなくて。
女 人のこと、売れ残りとか言うから、ピョン太の方だって売れ残りだって。
男 売れ残りじゃねえよ!俺買ったじゃん!俺、買ったじゃん!
女 わかったわよ。わかったから。
男 ・・・ねー、やだねー、あのお姉ちゃん。歳取るとヒステリックになるんだね。
女 ・・・歳ってね、人間に換算したらピョン太、もう老人だからね。
男 え?
女 もう年寄りだって。ヨボヨボだって言ってんの。
男 何がヨボヨボだよ。
女 でも本当、そうなんだもん。
男 誰も好き好んで歳とるわけじゃないだろ!
女 ・・・だったら私だって・・・。
男 謝れ。
女 え?
男 ピョン太に謝れ!謝れ!
女 ・・・ごめん・・・なさい?
男 まったくよ・・・ねえ、ピョン太。酷いこと言われても気にしちゃ駄目だよぉ。そうだ。はーい、誕生日プレゼント。お前の好きな虫君でーす。
女 ねえ、私のは?
男 虫いる?
女 違くて。誕生日。
男 え?
女 前、私の誕生日プレゼント買いに行って、ピョン太を見つけたんでしょ。だから今日、私も誕生日。
男 ・・・ああ・・・そうか・・・(虫)半分いる?
女 ・・・。
男 ・・・・・・びょン太・・・アーン・・・。
女 ・・・ねえ、別れない?
男 え?
女 別れようよ。
男 何で・・・何?いきなり。誕生日プレゼント忘れたくらいでさ。
女 ・・・じゃ、一つ聞くけど、私と蛙、どっちの方が好き。
男 え?
女 止まるとこじゃないでしょ。
男 好きとか、比べる対象がおかしいだろ、お前。
女 好きでしょ。蛙。ねえ、すっごい好きでしょ。ねえ、蛙。
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