奏彩
『奏彩』(かなでいろ)

原作 岩本憲嗣 / 脚色 矢崎咲良


佐伯かなで (さえきかなで     18歳 ♀ 政治学者佐伯泰朗の娘)
山田風汰  (やまだふうた     24歳 ♂ 浪人)
秋月竜彦  (あきつきたつひこ   25歳 ♂ 佐伯家の従者)
平岩あや  (ひらいわあや     21歳 ♀ かなでの従姉妹)
平岩けい  (ひらいわけい     40歳 ♀ あやの母親)
平岩錬三郎 (ひらいわれんざぶろう 65歳 ♂ あやの祖父)
菊池寛吉  (きくちかんきち    20歳 ♂ さわの兄)
菊池さわ  (きくちさわ      16歳 ♀ 平岩道場生)
塩田七海  (しおたななみ     29歳 ♀ 医師)
浅田宣助  (あさだせんすけ    35歳 ♂ 新聞記者)









1 明治十四年@ホール楽屋。

かなで 前略。寒さ厳しきみぎり、お体など崩されておられないでしょうか。果たして、
    あなたは私のことなど覚えてくださっているのでしょうか?この言葉はあなたに
    届いているのでしょうか?私はこの十年ずっと忘れません、あの時……十年前あ
    なたと交わした約束を。

     文久三年@東国のとある藩の道場。
     宣助と秋月が木刀を構え睨み合っている。それを眺めている風汰。

宣助  もうお終いですか?

秋月  くそっ……まだまだ……。

宣助  どうしました?震えてるんですか?

秋月  そ、そのようなこと……。

宣助  あなたのような臆病者、浪士組には相応しくない。

秋月  うるさい!

宣助  無理しなくていいんですよ。子供はよけいなことは考えないで故郷に帰りなさい。

秋月  ふざけるな!俺はもう子供(ガキ)じゃない!

     秋月、立て続けに宣助に太刀を浴びせる。それを受け止める宣助。

宣助  ほう、なかなかやりますね。

秋月  当然だ!これでも我が秋月家は十代続く道場。

宣助  それはそれはご立派なこと。ですが詰めが甘い。

     宣助、秋月に続けざまに太刀を浴びせる。秋月、防ぎきれずそのまま倒れこん
     でしまう。宣助、秋月に追い打ちをかけるが風汰が間に入り宣助の太刀を受け
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