眠れぬ夜に見る夢は
「眠れぬ夜にみる夢は」
               作 結城 翼

☆登場人物
イヴ・・・・・ドール型ロボット
オリビア・・・ドール型ロボット
マリア・・・・あずみの養育係
ユウイチロウ・・研究員・ロボット修理士
あずみ・・・・ユウイチロウの妹

 

Ⅰ プロローグ うれしいひなまつり

        ピアノの「うれしいひな祭り」が弾かれる。
        幕が開く。
        上手のピアノに薄暗くトップサス。
        あずみ(イヴ)がピアノを弾いている。姿ははっきりとは見えない。
        舞台中央にイス。ミルティスとルナの人形。
        下手に紅い格子、その前に壺にいけられた見事な左右の桃の花。周りには桃の花が散っている。
        ユウイチロウ。あずみを見つめている。薄暗いトップサス。
        曲の終わりにピアノの不協和音が大きく響く。
        ルナとミルティスのトップサスのみ残して、ばしっと暗転。
        「うれしいひな祭り」オルゴールの音。
        それとともに、全体がゆっくりと暗転。

Ⅱ 雛の夜

        オルゴールの音が切れ切れになりやがてとぎれる。
        溶明。
        イヴが座っている。ミルティスがいる。
        ネジを巻いている。

ユウイチロウ:起きていたのか。
イヴ :ええ、おにいちゃん。
ユウイチロウ:相変わらず巻いてるね。
イヴ :する事もないし。

        と、手を離す。
        オルゴールが流れる。
        少し聞いて。

ユウイチロウ:具合はどう。
イヴ :いいわ。今日は。昼間なんか、少し外を歩けたもの。
ユウイチロウ:暖かかったからね。
イヴ :桃の花咲いてた。ほら、塀の隅にある。よくにおったの。
ユウイチロウ:ああ、あそこはよく陽があたるからね。昨日つぼみがほころんでた。それかい。
イヴ :マリアに活けてもらったの。
ユウイチロウ:マリア何か言ってた?
イヴ :何も。
ユウイチロウ:そうか。
イヴ :ねえ、いつまで生きられるのかなあ。私。
ユウイチロウ:何、馬鹿なこと言ってる。いつまでだって、生きられるよ。
イヴ :嘘が下手ね、お兄ちゃん。
ユウイチロウ:嘘じゃないよ。

        くすっと笑って。

イヴ :いいの。むりしなくても。自分の身体は自分がいちばんよく分かるんだから。

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