モラトリアムの贖罪

『モラトリアムの贖罪』

「persona」の完結編である。

登場人物:

木崎修平

斉藤岬

進藤浩介

井上知世

森本若菜

木村裕子



囁く声が聞こえる。
それは後半で読まれる台詞の羅列。何を言っているかは聞こえないようにする。

岬がアンパンマンを歌っている。

傍らに修平が座っている。

だんだんと囁く声よりも岬の歌声の方が大きくなる。

囁く声は聞こえなくなる。

修平「お前ってその歌好きな」
岬「はい、私昔からアンパンマンが大好きでした。今も大好きです」
修平「あんなアンパンマ人間のどこが好きなわけ?」
岬「えっと、優しいところです」
修平「優しい、ねえ」
岬「アンパンマンはすごいんですよ!お腹が空いてる人に自分の顔をあげるんです。普通はこんなことできません」
修平「まあ確かに、あの献身の意欲はどこから湧いて来るのかねえ」
岬「そんな言い方しないで下さい。誰かの為に自分を犠牲にするのって、すごいことだと思います!」
修平「ま、俺には真似できないな」
岬「木崎先輩は、誰かの為に何かしてあげたいって気持ち、ないんですか?」
修平「ない」
岬「即答ですね……」
修平「ないない。誰かの為にがんばったりとか、ダルいだけじゃん。俺は自分の為だけに生きて、自分の為に死にまーす」
岬「せんぱーい……。……私は、誰かの為にがんばれる人に、なりたいです。私は、1人じゃ何にもできないから、誰かに助けてもらわないと、がんばれないから。だから私も、誰かの為にがんばれる人になりたいんです」
修平「ふーん」
岬「だから、アンパンマンは私の憧れなんです」
修平「いいんじゃないか?俺はお前のそういうところ、嫌いじゃないぜ。でも、アンパンマンみたいになりたいかあ、何か顔だけブクブク太ってるイメージが……」
岬「木崎先輩ひどいです!」
修平「悪い悪い。あははは」

浩介がやって来る。

浩介「よう修平、お前1人で何やってんの?」
修平「別に何でもねえよ。帰れ帰れ」
浩介「それにしてはでっかい独り言だったけど?誰かいたの?」
修平「ちょっとな。お前、何か気付かないか?」
浩介「何が?」
修平「……なんでもないよ」
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