五人目

『五人目』



1   男。ハイネックのセーターを着ている。

2   女。右手首に大きなリボン。

3   男。左手首にリストバンド。

4   男。常にマフラーを巻いている。

5   男。薬瓶を懐に持っている。

6   男。シルクハットに黒マント。白い手袋に口だけが出たマスク。

 それぞれ演じるものの名のりたい名前で演じる事。脚本の台詞中の1−5はそれぞれの呼び名とする。





  真っ暗な舞台。五人が立っている(1、2、3、4、5)。全員シルクハットを目深にかぶり黒いマントをまとっている。手には蝋燭の立った燭台。蝋燭に火は点いていない。1がマッチで自分の燭台に火を灯す。そして舞台は幕を開ける。

1  誰にだって触れられたくない傷がある。

1、 2の燭台に火を移す。

2  誰にだって隠しておきたい過去がある。

2、 3の燭台に火を。

3  誰にだって忘れたい悲しみがある。

3、 4の燭台に。

4  誰にだって失いたくないものがある。

4、 5の。

5  誰にだって大切な場所がある。

   五人、火の点いた燭台を手に、中央に集まる。そのまま円陣を組む。

1  僕らは大切なものの隠し場所に。
2  この場所を選んだ。
3  誰にも邪魔されない。
4  誰にも奪うことの出来ない。
5  この場所に。
五人 僕らは僕らの生きる糧を。
1  僕が僕として。
2  僕らしく生きていけるように。
3  僕が誰にも阻害されないように。
4  僕が誰にも否定されないように。
5  僕が僕であるために。
五人 僕らはこの場所を封鎖した。・・・でも、
1  何かが。
2  何かが。
3  何かが。
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