紅い薔薇咲く五月に
神林響の冒険第二章 薔薇迷宮編
「紅い薔薇咲く五月に」・・神林響の冒険第二章・・・薔薇迷宮編
                      作 結城 翼
                                        第一回四国高等学校演劇祭上演台本

登場人物
神林響・・・・
茉莉・・・・・
カケル・・・・
ハリネズミ・・
ヤグモ・・・・
ムラサメ・・・
桔梗・・・・・


Ⅰプロローグ

        宗教的な音楽。
        全体が靄に包まれたような空間。
        舞台中央に、少し高くなったエリア。その後ろに銀色の薔薇の花が咲いている格子がある。
        エリア全面に白い布がしかれ、その上に紅い薔薇の花が散っている。
        スローモーションのようにゆっくりとした動きで戯れる響と茉莉。おいかけっこのようでもある。
        上手斜め奥から青い光の光条が格子を貫くように、薔薇と二人を照らしている。
        舞台奥にやや高い通路がある。
        通路中央に冷ややかに見つめる人影。薔薇を一本持っている。
        下手斜め前方よりこれまた青い光条が持っている紅い薔薇を照らす。
        やがて、エリアを照らしていた光はその明るさを失う。
        とともに、二人は別れて去る。
        奥の人影はそれを見届けると、薔薇を前方へ投げた。
        暗転。同時に激しい、ダンダンというリズムを伴う音楽。緊迫感がある。

Ⅱ出発

        音楽が消える。溶明。エリアのみに明かり。
        エリアの布や格子は消えている。
        イスが一個。
        イスの上に薔薇が一本。
        ヤグモがしゃきっとしたスーツを着て、口笛吹きながら入ってくる。手にはレポート。

ヤグモ:おっはよう。っていっても誰もいない。助手の独りもいないよろづ相談探偵事務所。世の中相変わらず不景気だよね。

        と、愚痴こぼしながら、

ヤグモ:ま、ネズミたち相手じゃ仕方ないか。

        と、イスに近寄り、薔薇に気づく。

ヤグモ:ん?

        不審そうにしていたが、やがてレポートをいすにのせ、突然薔薇を取り上げ、口にくわえた。

ヤグモ:すきなんだけどー。

        と、「星のフラメンコ」を歌いながらパパパンと手を打ったが。

ヤグモ:いってー。

        と、口を押さえる。
        どうやらバラのとげが刺さったらしい。アホだ。

ヤグモ:くっそー。
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