Garden
〜the cross emotion〜
Garden 〜the cross emotion〜




登場人物

 桜井宏太    さくらいこうた・水彩画家  
 牧野つばき   まきのつばき・学生・すみれの妹  
 蓮見修司    はすみしゅうじ・会社員・桜井の親友  
 蓮見すみれ   はすみすみれ・修司の妻・つばきの姉  
 長野葵     ながのあおい・ブライダル会社社員
 牧野菊代    まきのきくよ・つばきとすみれの母
 梅田太郎    うめだたろう・レストラン経営
 三好香澄    みよしかすみ・レストラン従業員
 今藤義仁    こんどうよしひと・ブライダル会社社長
 浅賀音次郎   あさがおとじろう・ブライダル会社社員
 香田桃子    こうだももこ・すみれの友人
 高津辻夫    たかつつじお・雑誌記者





      【プロローグ】
      舞台中央に一人の男が立っている。そして、それを囲むように全員がいる…。皆、手には本を持っている。

桜井   この世界には、色がある。山も海も空も街も、みんな色を持っている。そしてそれは、私たちも…人間も同じ。肌が白いとか黒いとか、そういうことではなく…。私たちは、皆それぞれに…それぞれの色を持っているのだ。
桃子   私が初めてこの力に気づいたのは、まだ幼い時だった。その日は確か、学校の授業で…近くの公園に絵を描きに行った。黄色いバックに二十四色のクレヨンを詰めて、胸を高鳴らせていた。そして、公園に着くと先生はこう言った。
すみれ  「今日は、みんなの好きなものを好きな色を使って書いてくださいね。」
桜井   だから私は、友達の絵を描いた。私に見えた、そのままを…。しかし…先生は褒めてはくれなかった。そして代わりにこう言った。
すみれ  「宏太君、先生好きな色でって言ったけどこれじゃあ…。」
蓮見   …そう…私の描いた絵は、みんな赤や青、黄色の瞳をしていたのだった。本当に好きな色で描いたわけではない…見えたままを描いたのだ。そしてその時、気がついた…。自分に見えるものが人とは違う。
桜井   自分には…「力」がある。そう…私には、人の瞳が…様々な色に見えるのだ。もちろん色は、人によって違うし見え方は様々である。そしてそれは、感情によって色が変わり、色の濃さによって…その人の未来を感じとれてしまうものだった…。
すみれ  それに気がついたのは、それから三ヵ月後のこと…。絵を描くことが好きだった私は、敬老の日におばあちゃんに似顔絵を描いてあげた。父も母も、私の絵を見てとても上手だと褒めてくれた。しかし、描いた似顔絵のそれは…透き通るような真っ白な瞳をしていた。
桜井   私を優しく包み込む純白とも呼べるべきその綺麗な瞳は、手に触れることを許さぬように…色が抜け落ちていた…。そして、それから数日後、おばあちゃんは亡くなった。そしてやっと分かった…。自分の持つ力の怖ろしさ…。それからというもの、人生は酷く…辛いものだった…。誰が、何を思い…いつ亡くなるのか…感じ取れてしまうのだから。
桃子   父は病気で亡くなった…。
蓮見   母は事故で亡くなった…。
すみれ  そして…自分が愛した人さえも…。
桜井   もちろん全部分かっていた。でも…私には何も出来なかった。いくらいい医者に診せたって、いくら注意を促したって…。瞳の色は戻りはしなかったのだから。
蓮見   何も出来ない自分の無力さ…。見ているだけ…。分かっているだけ…。その時に私は悟った…。いくら足掻いても変えることが出来ない…。
全員   それが…運命。
桜井   その運命を突きつけるこの「力」…。私は…自分の運命を呪った…。しかし…。
全員   その考えは変わった。
桃子   そう…一つの出会いが…。
蓮見   彼女との出会いが私を変えた。
桜井   初めて彼女に会ったのは友人の結婚式。
桃子   私はその日の彼女の言葉を忘れない。
すみれ  とても薄い色をした瞳で、悲しい声で彼女は言った。
つばき  …ごめん…。
桜井   そして、彼女と出会ったことが…全ての始まりだった…。

      【1場】
      桜井の仕事場。桜井は一人でいる。誰かを待っているようだ。そこに高津辻夫がやってくる。

高津   おはよーございまーす!ヨモギヤ出版の者ですけど…。
桜井   ん?あ、おい!随分時間が…。
高津   遅刻しちゃって申し訳ありません!これには、あの、深い理由がありましてですね…。
桜井   理由?
高津   はい。実はですね、ここに来る途中おばあさんが倒れていまして…。
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