楽しい樹海
「楽しい樹海」
 男→20代前半。特に深い理由はないがなんとなく死にたい今日この頃。
 芸術家→年齢不詳の男性。森の奥に住む自称芸術家。頭がかなりおかしい。
 地主→40代男性。樹海も私有地として持っているお金持ち。偉そうだけど、実は小心者。
 女→喫茶店で働く店員。20代半ば。アルバイトで将来に展望がない。
 客(男)→会社員のカップル。20代半ば。休暇中。気弱で彼女に弱い。
 客(女)→会社員のカップル。20代半ば。わがまま。
 
 シーン1 喫茶店
  暗転。BGM、何か喫茶店らしい音楽。明転。喫茶店には二人組みの客が雑談している。給仕をしている女。音楽FO。ドアが開いて何かが鳴る音「カランカラン」
 
 女 いらっしゃいませ。
 
 男無言で席につく。
 
 女 (水を持ってやってきて)ご注文はおきまりでしょうか?
 
 男、机の上のメニューを指で指す。
 
 女 ホットコーヒーですね。かしこまりました。
 
  男、ものすごく鬱っぽい。隣の席の客を憂鬱そうに眺める。
 
 客1(男) それにしても本当に寒いねー。
 客2(女) 本当だよ。何で今日に限って…
 客1(男) しょうがないじゃん。仕事今日明日しか休めないんだから。
 客2(女) でも、絶対寒いよ。山って冷えるよね?
 客1(男) そりゃ、上のほうだからね。止めとく?
 客2(女) うーん、せっかく来たから富士山登りたいんだけどね。
 客1(男) 登るのあきらめて氷穴でも見る?
 客2(女) 氷穴ってまた寒そうだよー。ねえあれは?樹海。
 女 (コーヒーを持って)お待たせいたしました。
 
  男、無言で飲み始める。
 
 客2(女) 実際、樹海っていうのも愉快じゃない?死体とか見つけちゃったりして。
 女 止めた方がいいですよ。寝覚め悪いですから。
 客2(女) えっ?
 客1(男) すみません。こいつバカなんで。こんな寒い日に樹海なんて行って迷ったら洒落になんないだろ。まさか、行きませんよ。
 女 こちらこそすみません。余計なことを。入口に近いせいか。ここから樹海に入る人が多くて…。
 男 死ぬ前に一息つきたくなるんじゃないですか?
 
  一瞬全員凍りつく。
 
 客1(男) まぁ樹海に入るからって死ぬとは限らないですから。お客さんも冗談きついですね。
 男 冗談じゃないんですけどね。(無言で立ち上がり、外へ向かう)
 女 (入口付近で)450円になります。
 
 男、支払って無言で出て行く。
 
 女 ありがとうございました。(そのまま不安気に見送る)
 客2(女) あれ。まずくない?
 客1(男) 関わらないほうが良いよ。
 
  客の雑談、女の嫌そうな様子を残しつつ、音楽あおって下げる。暗転。
 
 シーン2 樹海
  何か愉快な曲。明転。舞台中央で瞑想する芸術家。台詞が始まるとFO。
 芸術家 (突如目を開くと)はっ!?(何か叫びながら一心不乱に絵を書き出す)
 
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