朱砂之雄
秘宝館昇天堂一座1997年度特別公演「朱砂之雄」秘宝館昇天堂一座1997年度特別公演「朱砂之雄」
「始まり」
 霧の流れる谷あい・・・遠い過去のようでも有り、遥かな未来で有るかも知れない。
 ウータ、シジマ、アソビがこの芝居の語り部を務める。最初はみな百歳を越える老人の姿で、山間の霞のように登場する。一本の花が咲いている。背丈を超えるほどの花。三人、協力して花を傾け、その露を飲む。
 三人、見る見る若返り、若者のようにふざけたり、笑ったり、抱き合ったり、駆け回ったりする。
シジマ 「まるで、あの頃のようだ・・・・」
アソビ 「あのころ、私たちはよくこうやって・・」
ウータ 「海を見ていた。」
「物語は海からやってくる」
 海がわき上がる。逆巻き、大きく波打ち、舞台いっぱいに荒れ狂う。
 波間に声がする。生まれてまもない
赤ん坊が籠に乗って波間を滑り落ち、また、跳ね上げられる。
 沈もうとする赤ん坊を波間から救い上げる手。月の女神の如き姿の、ツクヨミの化身が赤ん坊を渚に安置する。
 朝がやってくる。浜に打ち上げられた魚を拾い上げている縄文の男、部族のリーダー、クルミ。泣き声に気がついて、赤ん坊=スサノオを抱き上げる。赤ん坊笑う。クルミ赤ん坊を頭上高くに持ち上げた。
「タイトル」/「いのちが満ちあふれている」
 巨大な木の実、キノコ、貝、などを持った縄文人と、狩りのダンスが展開される中で、スサノオは、見る見る青年へと育っていく。みんないなくなる。アマテラスが残る。
「想い」
アマテラス「スサノオ・・どうしても、ここにいなくてはいけないのか?」
スサノオ 「ああ、物見だ。夕べ、向かいの島に妖しい煙が立った。クルミの言いつけだ。」
アマテラス「とう様か・・・もう儀式が始まる。私は行くぞ。」
スサノオ 「大事な儀式だな。しっかりな。」
アマテラス「・・それだけか。知っているか?一の巫女は代替わりまで・・男と床を共にしてはならないのだ。」
スサノオ 「ツク=ヨミに聞いた。」
アマテラス「・・・よいのか?」
スサノオ 「何がじゃ?」
アマテラス「・・知らぬ!スサノオはモグラムチじゃ!人の心が判らぬ!お前なぞ鰐鮫にでも喰われてしまえばよい!」
 アマテラス、駆け去って行く。浜に近い丘の上。スサノオが踊る。スサノオの心が歌う。禁じられた恋の想いを・・・。
  狭霧に濡れる汝が黒髪 吾が指に漉かん 地平を染めし夕日の色 汝が唇にひかん
  花野の如き汝が優しさ 吾が指に触れん 母猿と小猿のように 汝が胸を抱かん・・
 恋しいものの名を呼ぶ。「アマテラス・・・・!」
「渡来人」
スサノオ 「なんだ!あの船は!」
 はっと気づくと、巨大な船が浜近くに乗り上げ、男たちが現れる!きらきらと槍の穂先が煌めく。
スサノオ 「しまった!」
 驚いたスサノオは、コタンへととって返す。男達が上陸してきた。
イカヅチ 「ナギ様、ご覧下さい!この土の黒さを!このように肥えた土地、米作りに適した土地は見たことがありません。ご覧下さい!あの森々を!この島は、山川草木に命が満ちあふれてサバエなし、五月蠅いばかりです!」
ナギ   「五月蠅い?」
イカヅチ 「命が五月の蠅のように舞い上がっております。これこそ、我らが先祖の神よりの賜り物、約束の地に相違有りません!」
 ナギ、長剣を浜に突き立てて宣言する。
ナギ「この島を高天原と名付けん!」
 
「マロウドの宴」
 ナギたち、奥地へと去る。
 スサノオの知らせを受けて客人(まろうど)を迎える宴の準備をする縄文の民たち。太鼓を叩き
笛を吹き、獲物を持ち寄り、着飾っている。
 異様な獣の雄叫びを聞いて、一同警戒する。渡来人が、仮面を被り、怪異な馬鎧をつけた馬にまたがってやってくる。
タヂカラオ「我は、お前たちの神。我に従わぬ者は首を失う。」
 戦斧が、うなりを上げて威嚇する。
アマテラス「あれは神にあらず。ただ人の見える・・・!」
クルミ  「神の声は人の耳には聞こえぬもの。ただ、心に響くという。・・・詰まらぬ座興は止めて、我らの宴の客となるか?どうしても、その物騒な道具を使いたいというのなら、こちらにも考えがある。」
 吹き矢が並んで仮面の男に向く。
タヂカラオ「飛び道具か・・しかし、この鎧に歯が立つかな・・?」
 クルミが手を降ろすと、馬が棒立ちになり、仮面の男は落とされる。
イカヅチ 「タヂカラオ!そこまでだ!小奴ら、馬の目を射抜いた!」
タヂカラオ「イカヅチ!!おぬしの策略はクソの役にも立たなかったぞ!」
 仮面を脱ぎ捨てたタヂカラオに、現れたナギが声をかける。
ナギ   「我らの負けじゃ。斧を納めい。」
 タヂカラオ、戦斧の柄を力任せに叩き折る。
イカヅチ 「さても短気な奴よ・・」。
 ナギ、武器を捨てて宴の席へと向かう。
1/9

面白いと思ったら、続きは全文ダウンロードで!
御利用機種 Windows Macintosh E-mail
E-mail送付希望の方は、アドレス御記入ください。

ホーム