1 Heart 2 Us

(ワンハートトゥアス)
初演日:0/0 作者:霧雨 鳳馬













   1 Heart 2 Us(ワンハートトゥーアス)





















緑川 雫(みどりかわ しずく)   女 24歳

雨月 紫(うづき ゆかり)   女 45歳

霜月 雪子(しもつき ゆきこ)  女 50歳

蘇芳 青四郎(すおう せいしろう) 男 30歳

a(スモールエー) 男 25歳







     幕が開ける。そこは夕日の綺麗な公園。ベンチがひとつ見える。女(雫)
が立っている。手には花束。その花束をそっと足元に置く。とその場に
しゃがみ込み手を合わせる。そのままで。

雫    紅太・・・。もうあれから二年も経ったんだね。紅太が私の側からいなく
なって・・・。紅太はずっと私のそばにい
るって言ったのに・・・。紅太の嘘つき。・・・。でもね私寂しくなんてない
よ。・・・大丈夫。私がいつまでも寂しが
ってたら紅太はゆっくりできないもんね。紅太は私の笑顔が好きだって
言ったくれたから、私いつも笑顔でいることにしたよ。・・・だから紅太
もいつまでも笑っていてね。私も紅太の笑ってる顔、大好きだったんだ
から・・・。もうすぐ夕陽が落ちるよ。一緒に眺めよう。

     雫ベンチに腰掛ける。ぼうっと夕陽を眺めている。時折思い出し笑いな
ど。ふと思い出し笑いから悲しげな表情に。そのまま顔を覆ってしまう。
とそこに花束を持った男(青四郎)が現れる。雫に気づき、

青四郎  どうかしましたか?
雫    (顔を上げ)えっ?(青四郎に気づき涙を拭いながら)いえ、何でもな
いんです・・・。
青四郎  そうですか?
雫    ええ、大丈夫です。
青四郎  まう、他人の私があまり深くは聞けませんが、そんなに悲しまないで。
きっと良い事ありますよ。
雫    ええ、そうですね。

     青四郎、雫から離れ手にしていた花束を地面に置く。静かに黙祷。その
姿を見つめている雫。黙祷を終えた青四郎、横の花束に気づき。

青四郎  これ、あなたが?
雫    えっ?
青四郎  あなたも誰かのはなむけに?
雫    ええ。そんな所です。あなたは?
青四郎  僕は友人が生前この場所の事を気に入っていたので彼の供養に・・・。今
日が彼の命日なんで。
雫    そうですか・・・。
青四郎  彼はここから見える夕陽が一番好きだったみたいですから。
雫    私も・・・。
青四郎  えっ?
雫    私の彼もそうなんです・・・。
青四郎  と、言うと?
雫    私の彼も今日が命日で、ここから見る夕陽が大好きでした・・・。
青四郎  ・・・そうですか。

     二人夕陽を眺めている。

青四郎  お隣、いいですか?
雫    ・・・ええ。

     青四郎、ベンチに座る。雫から少し離れたところ。無言。不意に。

青四郎  あの・・・。
雫    えっ?
青四郎  タバコ、吸ってもいいですか?
雫    どうぞ。

     青四郎、懐からタバコとライター、携帯灰皿を取り出す。タバコを口に
くわえ火をつける。静かにタバコを吸う青四郎。夕陽を見ている雫。突
然激しく咳き込む青四郎。

雫    だ、大丈夫ですか?
青四郎  (咳き込んでいる)
雫    あの、あの・・・。
青四郎  (咳き込みながら手で大丈夫だ、と。ややあって落ち着き)いや、すい
ません。驚かしたみたいで。
雫    いえ。それよりも本当に大丈夫ですか?
青四郎  ええ、何とか生きてます。いやー、びっくりした。
雫    ・・・。
青四郎  どうしました?
雫    タバコ、お止めになった方がいいんじゃないですか?
青四郎  いやいや、大丈夫。ご心配なく。
雫    でも・・・。
青四郎  いや、実は普段タバコ吸っていないんですよ。
雫    えっ?じゃあどうして・・・。
青四郎  いえ、その(自分の花束の方を見て)彼が生前好きだったんですよ、タ
バコ。それで命日くらい彼の代わりにと思いましてね。僕が代わりに吸
えば彼が天国で喜ぶかなと思って。それで・・・。今日初めてタバコを買
いましたよ。変な感じでしたね。もう立派に成人してるってのに何だか
どきどきして。高校生とかがこっそりタバコを買う時ってこんな感じな
んですかね?
雫    さあ・・・。どうでしょう?
青四郎  ああ、変な話しちゃいましたね。すいません。いや、しかしタバコって
思ったよりきつい物なんですね。よく皆こんなもの平気で吸ってる
な・・・。
雫    ちょっとそれ(タバコ)見せてもらえます?
青四郎  吸うんですか?
雫    いえ。
青四郎  それだったら。(タバコを渡す)
雫    あ・・・。
青四郎  どうかしました?
雫    同じ・・・。
青四郎  えっ?
雫    私の(自分の花束を見て)彼と同じタバコなんです。
青四郎  そう、ですか。奇遇ですね。
雫    ええ。・・・でもこれって確かものすごくきついタバコだったはずですよ。
青四郎  えっ?そうなんですか?
雫    私吸わないから分かりませんけど、そう言ってました。
青四郎  参ったなー。通りでむせこむわけだ。
雫    ふふふ。
青四郎  ははは。でももう少しだけ吸ってみようかな。
雫    彼、のためですか?
青四郎  そんな所です。
雫    仲がよろしいんですね。
青四郎  ええ・・・。彼は僕に彼のすごく大切なものを残してくれましたから・・・。
僕は彼に感謝しています。
雫    そうですか・・・。
青四郎  ・・・。
雫    ・・・。

     青四郎、夕陽を眺めている。雫、立ち上がる。

青四郎  どうかしました?
雫    いえ。ただあなたとお友達の邪魔をしちゃいけないなと思いまして。私
は帰りますね。(立ち去ろうとする)
青四郎  (それを引き留め)あの・・・。
雫    えっ?
青四郎  もう少しここにいませんか?
雫    でもお邪魔でしょう・・・。
青四郎  いえ、きっと彼も貴女のような美人がいてくれれば喜ぶと思いますし。
それにもうすぐ夕陽が沈む。その時が一番綺麗だって、彼も言ってまし
たし。
雫    ・・・。
青四郎  無理にとは言いませんが・・・。
雫    じゃあ、ご一緒させていただきます。
青四郎  ありがとう。でも貴女の彼に怒られるかな?
雫    きっと大丈夫ですよ。彼もここの夕陽が好きでしたから。
青四郎  そうですか・・・。

     二人夕陽を眺めている。落ちる夕陽。街灯に火が灯り始める。青四郎タ
バコを消す。

青四郎  すいません、引き留めてしまって。
雫    いえ。私も夕陽が見れて良かったし。
青四郎  もし良かったら家まで送りますよ。
雫    えっ?
青四郎  ああ、他意はありませんよ。ただ暗くなってきますしこれからは。女性
の一人歩きは危ないでしょう。最近じゃ通り魔とかも出るみたいですか
ら。
雫    大丈夫です。家近いですから。
青四郎  そうですか。まあ、あまりしつこく言うと下心があると思われますし・・・。
貴女の言葉を信じます。
雫    ありがとうございます。それじゃあ。
青四郎  あの・・・。
雫    ?
青四郎  あの僕、蘇芳青四郎って言います。紫蘇の蘇に芳香剤の芳で。
雫    蘇芳さん?
青四郎  ええ。あの・・・良かったらお名前を教えていただけますか?別に他意は
ないですよ。その、何て言うか同じ場所で同じ夕陽を見た者として・・・。
ああ、なんて言ったら良いんだろう・・・。
雫    ふふふ。そんなに慌てないで下さいよ。
青四郎  ああ、すいません。
雫    雫。
青四郎  えっ?
雫    緑川雫です。緑色の緑に三本線の川で緑川。雨冠に下で雫です。
青四郎  やっぱり・・・。
雫    えっ?
青四郎  いや、その・・・。最初に見たときに目の下に雫が光っていたから・・・。
雫    ・・・。
青四郎  ・・・もしかしてクサかったですか、今の?
雫    ふふふ。ええ、かなり。
青四郎  いや、その・・・。そういうじゃないですよ。ナンパとか。
雫    ふふふ。貴方の言葉を信じます。
青四郎  えっ?
雫    蘇芳さん、さっき私にそう言いました。だから私も信じます。
青四郎  ああ、良かった。
雫    それじゃあ、私は失礼しますね。
青四郎  ああ、そうですね。余計な時間を取らせてすいませんでした。
雫    いえ。私も楽しかったですから。それでは。
青四郎  ええ。お気をつけて。

     雫、青四郎に一礼して立ち去る。一人残った青四郎。タバコを取り出し
火を点ける。タバコを吹かしている。

青四郎  緑川雫、か・・・。

面白いと思ったら、続きは全文ダウンロードで!
御利用機種 Windows Macintosh
E-mail
E-mail送付希望の方は、アドレス御記入ください。


ホーム