只見さん

 『只見さん』



 登場人物

 男1
 男2
 男3
 只見さん(声)



 古アパートの一室。ふたりの男がだらだらと過ごしている。
 時刻は午後の九時くらいか。一人はテレビをぼーっと眺めており(男1)、
 もう一人は携帯ゲームをやっている(男2)。
 暫くの無言。

男2 なんか面白いこと無いかなあ。
男1 ないよー。
男2 ないか……。

 無言。

男2 なんか面白い話してよ。
男1 ないよー。
男2 じゃあ踊れよ。
男1 は?
男2 は、じゃないよ。俺はお前んちに遊びにきてんだよ。いわばゲストよ。ゲストを少しは接待しろ
   よ。
男1 だからゲームやらせてやってんじゃん。
男2 違うよ! 何ていうか、もっとスリリングでエキサイティングなやつだよ!

 男2、部屋を物色し始める。

男1 何にも無いって言うのに……。
男2 うるさい。何も無いかどうかは俺が決める。(暫く漁って)……ん?

 男2、日記帳を見つける。

男1 あ、それは。
男2 あるじゃないか。こんなに面白いものが。どれどれ……。

 男2、日記を読み始める。

男2 『九月十八日。天気、晴れ。午前中は予備校。午後からは北山さん、木村と一緒にカラオケ。寮
   に帰ると寮長がカレーを作っていた』……何これ。
男1 浪人時代の日記だよ。
男2 あ、お前一浪なんだっけ?
男1 地元の予備校の寮に入ってたんだけどな。自習時間があったのよ。そん時に、勉強してる振りし
   て書いてた。大学に入ってからの日記は無いから、読んでてもあんまり面白くないと思うよ。
男2 ふうん……。(呟きながらもページをぱらぱらめくる)『十月一日。予備校をサボって仲間と公
   園に行く。近所の駄菓子屋で爆竹を買ってきて、鳴らして遊ぶ』……何やってんの、お前。
男1 何が?
男2 十月一日って、センター試験三ヶ月前じゃない。何で爆竹で遊んでんだよ。
男1 ……だからこんな三流大学にしか入れなかったんだろうな。
男2 しょうがない奴だな……『十月三日。予備校の近くに捨てられていたスケボーで遊ぶ。寮の近く
   の坂でジャンプ大会を行った』……何やってんだよ!
男1 まだ読んでんのかよ。
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