クリスマスイブルース
〇摩天楼といってもさほど大きくもない建物に三方を囲まれた空き地、或いはそういう公園。深夜。

   不法投棄の業者がゴミを捨てている。
   捨てて、棄てて、棄てている。
   
   現在、二〇一二年の夜。
   ゴミから出る気体のせいで辺りは、緑に見える。
   ゴミの山がそびえ立っている。
   よく見ると、様々なゴミ。医療関係のゴミ、工業関係のゴミ。所謂、産業廃棄物の山。
   少年がぼんやりと歩いてくる。ゴミの山の上に人影を見て一言。

少年   サンタクロース?見間違い?

   人影がいなくなる。
   奇しくもその日は、クリスマスイヴ。少年がゴミの山に登る。
   ゴミ業者も少年もお互いには、気がつかない。

少年  僕が住んでいる街には、大きな大きな鉄塔が四本建っています。四本はシホン何て読める訳ですから、何だか不吉な事を思ってしまいます。資本主義とか、生死のシとか。その大きな四本の鉄塔は、この公園のジャングルジムからよく見えるんです。ただ、見てる時にこのジャングルジムから落ちたら死ねるかなと、ついつい考えてしまう自分が正直、うっとしくなってきた今日この頃です。でも、まぁ。死にたがりの僕ですから、きっと死んでも誰も泣かないでしょうね。何てな事言ってしまうと、死にたがっている人間に見られそうで正直、不安です。いえ、不快です。いえいえ、正直な話、死んでしまいたいのかもしれません。いえいえいえ、正直死にたくなどないのですが、死んでしまえば楽だろうな、と思ってしまうわけです。正直、生きているより、楽なんじゃないかと思ってしまうのです。思えてしまうのです。思えてしまう、そんな世の中ですし。つれない世の中ですし。そんな僕の妄想が暴走しているのにもお構い無しに真夜中に響くサイレンは、途絶えた事はありません。今晩も鳴り響いています。正直、鳴りっぱなしです。ここは相変わらずそんな毎日です。まぁ、僕といえば、相変わらず深夜に公園に行って、朝になるのを待たずに帰ります。それが日課です。いえ、正直に言うと公園と呼んでいるのは僕だけで、そこは単なる空き地。ジャングルジムは、公園だった頃の名残です。そのジャングルジム以外何もなくて、うんざりする公園の跡地です。そこへ行って帰って、行って帰っての繰り返し、繰り返し。ただその日、僕が公園に行くと、公園が、ゴミの山になっていました。公園にゴミの山が出来ていました。いえ、もっと言うなら、産業廃棄物のゴミの山が出来ていました。公園が一夜にして、夢の島です。いえ、島ではなく、山が出来ていたのですから、夢の山でしょうか。正直、何てな馬鹿なことを言っても、そのゴミの山は夢の山にはなりません。むしろ、夢が終わった後の山です。終わってしまったから、捨てられてゴミになったのでしょうから。正直、空しさで一杯です。そして、皮肉にもその日は、この場合、奇しくもといった方が良いのでしょうか?とりあえず、僕がこの公園であのゴミの山を見てしまったその日は、世間一般で云うところの、クリスマス・イヴと呼ばれる日でした。その時、僕はなんてサンタクロースもいたもんだと思い、そして、昔夢見たあの夢を思い出したのです。僕が捨て去った夢を…。

   過去へとゆっくり溶けていく。
   時間があやふやに、戻って、曖昧に歪む。
   
   ゴミ業者がゴミを棄てている。

   同じ公園なのだが、暗闇の中、数人が立っている。
   人数がわからないぐらい、暗い闇。
   過去の亡霊が悪戯をする。
   言葉と過去の幻影が混じって、溶ける。

エージェント  今日付けで、貴方の配属になる事になりました、コードネーム赤鼻です
青猫  ワイは、青猫。よろしゅう。といっても、見えへんか
エージェント  光栄です。は、それが貴方の体質なのでしょう?
青猫  せや、ウチんとこの星の人みんな、この体質。まぁ、得する事多いけどな
エージェント  わたしの装備品は?
青猫  そこに置いてあるわ…、なんか新式の銃まであったな…
エージェント  それは、わたしの趣味です。  
青猫  なぁ。なんで、キミはこんな仕事選らんだん?
エージェント  夢があるからでしょうか…、昔、その憧れてまして…
青猫  そうか…、でも、ワイはもう疲れた
エージェント  は?
青猫  着任そうそう悪いが、ワイは逃げる。逃げさしてもうで!
エージェント  えぇ!ちょっと、待って!

少年  何処から来たのかと
少女  訊ねられたら
少年  きっと何も答えられずに
少女  笑って
少年  誤魔化します
少女  それが
少年  幾つかの
少女  物語にもならない
少年  この一夜の
少女  真相だから
少年  そもそも真相なんて、本当に
少女  必要なのか
少年  たまに思います
少女  よく昔を思い出す人が
少年  いますが、それは
少女  昔を思い出して
少年  自分が持っている思い出は
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