成仏は一日にしてならず2006

(じょうぶつは1にちにしてならず)
初演日:2006/9 作者:上野 小夜

島田知子(女)→幽霊の女の子。はかなげ。おとなしい。
松原(男)→軽いいまどきの男子高校生。
田中(男)→真面目な男子高校生。松原の友達。
酒井美和先生(女)→新任の先生。頑張りやだけど、まだミスが多い。
寺崎先生(女)→酒井先生の一つ上の先生。酒井が入ってくるまで若くてちやほやされていたため悔しい。
ホームレス(男)→ひとなつっこいおじさん。廃校に人がくると嬉しくて仕方ない。
鎌田(男)→幽霊恐怖症の男。隣の廃校の幽霊が怖くて仕方ない。丁寧な性格。
浮遊霊子(女)→除霊がしたくて仕方ない少女。一応能力はあるらしい。
謎の少女(女)→ダークだけど知子とホームレスとは仲がよい。今の生活に満足している。

第1場 学校の中
 知子、酒井がいる。険悪なムード。

知子 もういいじゃん。私がいいって言ってるんだから。
酒井 何でそうやってすぐ諦めるの!?
知子 別にいいじゃん。美和に関係ないでしょ!!
酒井 あ、そう。そうだよね。じゃあ勝手にすれば!?
知子 あぁ、勝手にしますよ!!
酒井 そ。じゃあね。

 酒井、退場。暗転。

第2場 下校途中(舞台前方)
  松原、田中上手から登場。歩きながら喋る、座ってもいいかも。

松原;あー疲れた。でもやっとテスト終わったなぁ。どっか遊びにいこーぜ。
田中;お前は勉強全然してないんだから、疲れないだろ?俺は疲れたからもう早く帰って寝るよー。
松原;つまんねーな。いいじゃん。何かこう開放感でわくわくしないか?
田中;いいか、確認するぞ。
松原;何だよ、急に。
田中;お前、今いくつだ?
松原;18。
田中;高校?
松原;3年生。
田中;この状況で、わかっているのにこの状況でよくそんなことが言えるな?
松原;何か、それが関係あるのか?

 酒井登場。

酒井;お疲れ様。田中君、相変わらず学年トップだったわよ。頑張ってるわねー。
田中;有難う御座います。数学は得意なだけですよ。
松原;お前すげーな。
酒井;松原君、あなたいい加減進路調査表出しなさいね。寺崎先生も困ってたわよ。
松原;えー、だってどこでもいいんすよ。酒井先生代わりに適当に書いといてくださいよ。
酒井;何言ってるの、ちゃんと決めなきゃ駄目じゃない?
松原;いやー俺勉強好きじゃないしなぁ。せんせー勉強しないでも楽に入れるようなところ見繕って下さいよ。
酒井;はぁ、全く。そんなわけにいかないでしょ。

 寺崎、上手から登場。

寺崎;酒井さん、
酒井;寺崎先生、お疲れ様です。
寺崎;お疲れ様じゃないわよ。今日臨時のMTあるって言ったじゃないの。
酒井;あ、すみません。うっかりしてて。すぐ戻ります。
寺崎;いつまでも学生気分でいられると周りが困るのよ。
松原;ほらほら、先生俺なんかに構ってないで早くいたほうがいいよ。
酒井;それとこれとは別でしょ。
寺崎;(二人に気づいて笑顔で)二人ともさようなら。松原君、あなた早く調査表出しなさいよ。
松原 はいはい、さよーならー。
田中 さようなら。

 田中、松原何か喋りながら下手へ退場。

寺崎 全くあなたがしっかりしていないから松原君もいい加減になるのよ。
酒井;すみません。
寺崎;明日までには必ず出してもらいますからね。
酒井 でも無理矢理提出させても松原君がしっかり考えないことには意味がないんじゃないでしょうか?
寺崎 仕事できない癖に言うことは一人前ね。
酒井 すみません。
寺崎 まぁ今はとりあえずいいわ。MTに行きましょう。でも、松原君は家にも釘を刺しておいたほうがいいと思うわ
よ。どうせ三社面談も知らないでしょうから。
酒井 はい。あとで電話しておきます。

 酒井、寺崎、上手へ退場。

第3場 廃校の中
 ホームレス、謎の少女がいる。知子入ってくる。

知子;おはようございますー。はい、お茶が入りましたよー。
ホームレス;いつもありがとね。今日はいいお弁当が見つかったんだよ。食べるかい?エビフライも残ってるよ。
知子;私は食べなくても大丈夫ですから。
少女;食が楽しめないと人生損してるわよ。
知子;私、人生終わってますし。
少女;まぁそれはそうだけど。食べてもいいじゃない。
ホームレス;まぁまぁ喧嘩しないで。ほら他にもパセリとかあるから。
知子;そういう問題じゃないんですけど。
少女;私はそんなもの食べないわよ。
ホームレス;そんなものって失礼だよ。大事な食料なんだから。
少女;はいはい、失礼しました。
知子 でも、よく毎日毎日見つけてきますねー。
ホームレス 僕の特技だからね。おいしそうなお弁当持ってる人をじーっと見つめると大体くれるよ。
知子 拾い物じゃなかったんですか!?
少女 嫌なホームレスね。そのうち親父狩りに遭うわよ。
ホームレス その時は助けにきてね。
少女 嫌。
知子 (同時に)嫌です。
ホームレス 二人とも冷たいなぁ。
少女 はいはい、じゃあ私も食べ物でも探してくるわ。
知子 じーっと見つめて奪うんですか?
少女 違うわよ。じゃあ、これご馳走様。

 少女、お茶を知子に返して退場。ほのぼのと無声劇を続けるホームレスと知子。舞台手前に下手から松原、田中登場。

松原 なぁ、おまえんちどうしても駄目??
田中 無理だって。今日は勘弁してくれよ。叔母さん泊まりに来てるんだよ。
松原 そこを何とか。物置とかでもいいからさぁ。
田中 曽根とか野村の家は??
松原 曽根んちは親が厳しいだろ?野村も今日は無理だって。頼むよー。お前しかいないんだよ。
田中 そもそも家出なんかするからいけないんだろ?
松原 だってうるせーんだもん。大体それもこれも寺崎のせいだ!!
田中 自業自得じゃん。諦めろって。悪いけどとにかくうちは無理。明日なら平気だけど…。
松原 明日じゃ意味ないんだよ。ちくしょう、今日は野宿しかないかなぁ。
田中 それは止めとけよ。

 少女、学校から出てきて二人の前を通り過ぎる。

松原 あ。ちょっと、そこのあんた。
少女 何?
松原 今その廃校から出てきたじゃん?もしかしてそこに泊まってるの??
田中 そんなわけないだろ。
少女 そうだとしたら何かあなたに関係あるの?
松原 いや、俺今日泊まるとこなくてさ。そこもしかして泊まれるかなって。
少女 さぁ。住もうと思えばここの道路にだって泊まれるわよ。
松原 そりゃそうだけど。すっげーぼろいから無理とか、入れないから無理とかそういうことはないわけ?
少女 さぁ??それは感性の問題ね。
松原 だからそーいうことじゃなくてさー…
少女 自分で確かめればいいでしょ。若いんだから行動しなさいよ。

 少女、下手に退場。

松原 (少女に)おまえもそんなに年変わらなねーだろ。(独り言のように)はいはい、わかったよ。田中、ちょっと入ってみよーぜ。
田中 は??止めとけよ。不法侵入だろ。
松原 どうせ誰も住んでないしいいって。ほらほら。

 松原、田中を引っ張って学校へ入る。

松原;こんにちはー。誰かいますか??
知子;(ドアの方に行き)はーい、おはようございます。何か御用ですか?
ホームレス;珍しいね、人がやってくるなんて。
田中;なんでこんなとこに人が住んでるんだよ。
松原 先客がいたかぁ。
ホームレス うん、どうしたんだい?
松原 いやー。ちょっとわけありで泊まるとこ探しててさ。
ホームレス だったらここに泊まるといいよ。
知子 うん、部屋もいっぱいあるし。
松原 え、いいの!?
田中 止めとけよ。こんな胡散臭いところ。
松原 いいじゃん。外よりましだろ??
ホームレス 僕のお勧めは音楽室だね。夜にはベートーベンの目が光ると評判だよ。
田中 あほくさ。
松原 何か廃校って感じだな。もしかして幽霊とかもいたりして。
知子;(手を挙げて)はい、はーい私幽霊です。幽霊になって今年でちょうど10年目を迎える新人幽霊島田智子、享年15歳、夢は早く成仏することです!
松原;えっ!?まじで!?すげー。
ホームレス 因みに僕はホームレスになって今年で3年目の中堅ホームレスのひろさんです。夢は就職、住みたい家 は積水ハウスです。
田中;馬鹿だろ、おまえら。お前も何で真に受けるんだよ。明らかに嘘だろ。ほら、足もあるし。
知子;失礼な人だなー。本物です!!
ホームレス;本当だよ。知子ちゃんはずーっと年取らないし。
田中;あーはいはい。
知子 何その返事?大体私たちちゃんと名乗ったんだから自己紹介ぐらいしてください。
田中 何で俺がおまえらなんかに…。
松原;そっかぁ。やっぱ幽霊は死んだ時のままなんだな。
田中;いつまでも何感心してんだよ。やっぱ帰ろうぜ。こんなとこ泊まってたらますます馬鹿になるぞ。
ホームレス;そうなんだよ。僕も彼女を見て初めて知ったよ。ここには他にも色々怖い話があってね…。
松原;へぇーどんなの?
田中;勝手にしてろ。俺は帰るからな。

  田中、退場。

松原;え。おいちょっと待てよ。
ホームレス;あぁ、僕何か悪いこと言ったかな。もっと面白いこと言わなきゃいけなかったのかな?
知子;そういう問題じゃないと思いますよ。
松原;そうだよ。あいつ頭固いから気にしないでいいよ。俺今日ここ泊まってっていい?
知子;でも、ちょっと悪乗りしちゃったのも事実だし…。追っかけた方がいいんじゃないかな。
松原;ぜってー眠いだけだって。
ホームレス;でも、友達は大事にした方がええよ。
松原;そんな大事にしなくても…。(二人を見る)分かったよ、謝ってくりゃいいんだろ?
ホームレス;うん。行っておいで。
知子 泊まるならどこか部屋片付けておくよ。

 見送る、二人。松原、退場。二人もちょっとしてからお茶とか片付けつつ退場。

第4場 学校の前の道路(舞台前方)

 隣人下手よりに立ってうろうろしている。学校の中からいらいらと歩いていく田中。遅れて出てくる
松原。学校から出てきたことにびっくりし、様子を伺う隣人。

松原 おい。
田中 ………。
松原 おい。(肩に手をかけ)おいって。そんなに怒るなよ。
田中 あまりにも馬鹿馬鹿しくてやってられなかっただけだよ。別にお前は泊まっていっていいんだぜ。
松原 お前のせいで気まずくなったんだよ。空気読めよー。
田中 おれはもうちょっとレベルの高い空気じゃないと読めないんだよ。
松原 おまえ、ほんとつまんないなー。
田中 別に面白くなろうと思ってないから。
鎌田 あの、すみません。
田中 (思わずいらっと)はい!?
鎌田 あ、いや、あの、すみません何でもないですごめんなさい人違いです申し訳ありませんでした。
田中 あ、…いや。すみません、こちらこそ。何かつい。どうかされましたか?
鎌田 あのその、こんなこと唐突に申し上げて恐縮なんですが今お二人はお隣の南第三中学校から退出してこられましたよね?
田中 はい。すみません。決して何か悪いことをしようとか思ったわけじゃないのですが。そのぉ。俺は止めろって言ったんですが…。
鎌田 いえいえ、決して非難しているわけではないのです。むしろその勇気に感服致しました。あ、申し遅れましたが私隣に住んでおります鎌田と申します。
田中 はぁ。
鎌田 あのような噂のある恐ろしい廃校にお二人だけで向かわれるなんていやはや…
松原 (遮って)お兄さん幽霊に興味あるの?
鎌田 (丁寧さをかなぐり捨てて)幽霊!?やっぱり出るんですか?ここ?そうなんですか?どうなんですか?ねぇ、あなた方見てきたんでしょう?いるんですか、いないんですか?はっきりしてください!!
田中 (迫力に押されつつも)いません。
松原 (同時に)いました。
鎌田 (喜んでいいのか怖がればいいのか困る)
田中 だからあれは幽霊じゃないだろ。
松原 だって本人が認めてたじゃないか?
田中 じゃあおまえあれが幽霊だって証拠あるか?
松原 そんな証拠あるわけないだろ。
田中 ただの子供のいたずらだ。
松原 子供が廃校でお茶飲んでるかよ。

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