ペーパー・プレイン

(ぺーぱー・ぷれいん)
初演日:2001/2 作者:宮沢裕司
   題名:ペーパー・プレイン
   劇団:劇団さくら組
   作者:宮沢裕司
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劇団さくら組第12回公演
ペーパー・プレイン
作:宮沢裕司


第一場

舞台中央に、丸テーブル。

遠藤上手から登場。
原稿用紙を小脇に抱えている。
遠藤、テーブルに着くと、原稿用紙に向かって何か書き出す。

男3が上手から登場。

男3    遠藤さん。

遠藤、男3に気付き原稿用紙を慌てて手で隠す。

男3    次の公演の台本ですか?
遠藤    ああ。
男3    すすんでいますか?
遠藤    ああ。
男3    どんな話しなんですか?
遠藤    …。
男3    いいじゃないですか、少し教えて下さいよ。
遠藤    だめだ!
男3    今日も遅いんですか?こんな練習小屋で書かなくたって、家で書けばいいじ
      ゃないですか。奥さん待っているんじゃないですか?
遠藤    おまえには関係ない。
男3    みんなもう帰りますよ。最後の戸締まりよろしくおねがいします。それじゃ、
      お先に。

男3バックを抱えて退場。

間違い、消しゴムで消すが、原稿用紙がグシャグシャになる。
怒って原稿用紙を丸めて投げ捨てる。
席から立ち、何か考え事しながら辺りをうろつく。
椅子に、けつまづく。
怒って椅子を蹴飛ばす。逆に足の方が痛い。
遠藤、痛さにこらえる。

男3上手から顔をのぞかせて。

男3    灰皿の後始末もお願いしますね。

遠藤慌ててテーブルの上の原稿を隠す。
男3あっさりと下手に消える。
遠藤、男が立ち去るのを見届けて、物思いにふける。
ふと、ひらめいて椅子の上に椅子をのせてみる。
二段重ねの椅子の上にのぼろうとして、椅子から落ちる。
椅子を一つ持ち上げ、テーブルの上にあげる。
自分は、テーブルの上の椅子に座る。
椅子の上にあぐらをかき、いいアイデアは無いかと考える。
ふと、何かを思い付いたように椅子から飛び下りる。

さおりが上手に登場。黙って遠藤の行動を見ている。

テーブルの上で正座をして、原稿に向かって背中を丸める。
何かを手にして再び椅子に座る。
手の中にある紙飛行機を客席に向かって飛ばしてみる。
紙飛行機が飛んで行く光景に思わず席を立ち笑みを浮かべる遠藤。
次の紙飛行機を作ろうとして、振り向くと、上手に立っているさおり
と思わず目が合い、固まる。

さおり   翼の両はじを上向きに折るともっと飛びますよ。

遠藤は大慌てで原稿用紙を隠す。
さおり、おかまいなしに遠藤の方へ。

さおり   今日も遅くまで台本書きですか?

遠藤、さおりを警戒している。

さおり   こんな芝居小屋で書かなくたって、家で書けばいいじゃないですか。
遠藤    …
さおり   家で奥さんが待っているんじゃないですか?
遠藤    うるさい!
さおり   怒らなくてもいいじゃないですか。
遠藤    お、おまえは誰なんだ。
さおり   先週からこの劇団にお世話になっている さおりです。
遠藤    新人か。
さおり   よろしくお願いします。
遠藤    …
さおり   遠藤さんと会うのは初めてですよね。
遠藤    そうか。
さおり   遠藤さんは練習見に来ないですよね。
遠藤    台本書くのがおれの仕事だ。
さおり   いつもみんが帰った後にこっそり台本書いてるんですか?
遠藤    …
さおり   …
遠藤    変わってるって、言いたいんだろ。
さおり   いいえ。
遠藤    じゃ、何だ。
さおり   別に。

さおり、台本を覗き込む。
遠藤、体を張って台本を隠す。

さおり   何で隠すんですか?
遠藤    おまえには関係ない。
さおり   どーして。
遠藤    別にいいだろ。
さおり   どーせ、後でみんなにくばるんでしょ。
遠藤    まだ完成してない。
さおり   ふーん。

遠藤、何だよって感じで さおりを見る。

さおり   へー。

遠藤 だから何だよって感じ

さおり   自信がないんだ。

遠藤の筆がピタッと、止まる。

さおり   遠藤さんは、自信漫々って感じだと思ってたのにな。
遠藤    おまえになんか分かるか。締め切り前の、この胃の痛みが。真っ白なところから、
      何にもないところから全てを作るんだぞ。面白くなかったら、みんなに文句言われ
      るんだぞ。アンケートにも書かれるんだぞ。もうすぐ締め切りなんだよ。今とって
      も胃が痛いんだ。頼むから黙っててくれ。
さおり   はい、胃薬と水。
遠藤    胃酸をおさえるやつか。

さおり、うなずく。
遠藤、薬を飲む。

さおり   ちょっと読ませてもらえませんか。
遠藤    だめ。
さおり   発表するまで、絶対に内緒にしますから。
遠藤    だめだ。
さおり   自信がないのは分かりますけど、

遠藤、さおりをにらみつける。

さおり   すみません、そんなつもりで言ったんじゃないんです。
遠藤    じゃ、どういう意味だ。
さおり   いや、みんなに見せる前に私が読んで、その感想を参考にして。
遠藤    書き直すのか。
さおり   そうです。
遠藤    舞台経験は?
さおり   初めてです。
遠藤    素人がダメだしするのか。
さおり   …ダメだしって、何ですか?
遠藤    素人が俺の脚本にケチをつけるのか。
さおり   そんなつもりじゃありません。
遠藤    じゃ、邪魔するな。
さおり   でも、読みたいんです。
遠藤    どうして。
さおり   …だって、もしかしたら自分が出るかもしれないし。
遠藤    役者ってのはな、きた役をこなすのが仕事だ。それに…おまえは、役者って
      顔じゃない。
さおり   か、顔で決まるんですか。
遠藤    当たり前だ。
さおり   頭にきちゃったんですけど。
遠藤    それで。
さおり   読みたい。
遠藤    だめ。
さおり   読みたい。
遠藤    だめ。
さおり   いいじゃない。読みたい、読みたい、よみたーい!
遠藤    うるさい!
さおり   絶対、読んでみせます。

遠藤、筆が止まり何か考えている。
さおり、バックの中からおもむろにノートパソコンを取り出す。

さおり   どんな字?
遠藤    ひろうえん。
さおり   ひろうえん(パソコンで打つ)こんなんですけど。(遠藤にパソコンの表示を
      見せる台本を覗き込む)
遠藤    あ、そうか。わぁー!(慌てて台本を隠す)
さおり   へー披露宴会場が舞台になるんですか?
遠藤    うるさい!
さおり   お茶でも飲みます?

遠藤、無視。
さおり、コップにお茶を入れてわざとコップを倒す。
お茶がテーブルの上にこぼれて台本が濡れる。

遠藤    わぁー!
さおり   あ、ごめんなさい!

さおり、テーブルを拭きながら台本を盗み見する。

遠藤    みるな!

さおり、テーブルを拭く素振りで遠藤にひじ打ち。
遠藤、よろける。そのすきに台本を盗み見するさおり。

遠藤    だめだ!

遠藤、体をはって台本を死守。

さおり   遠藤さんも強情ですね。
遠藤    (荒い息づかい)伊達に劇作家をやってるわけじゃない。
さおり   別に全国の劇作家がみんな、そんなんじゃないでしょ?
遠藤    うるさい! 邪魔をするなら出て行け!

さおり、テーブルの端で雑誌を開く。

遠藤    何やってんだ。
さおり   別に。邪魔しなきゃいいんですよね。

さおり、おせんべいなんかぼりぼり食べ出す。
遠藤、原稿用紙に向かう。
しばらくすると、遠藤イライラしてくる。貧乏ゆすりで足がガクガクしてくる。
しきりにさおりを気にする。

遠藤    いつまでそうやっているんだ。
さおり   別に。
遠藤    もう、夜遅いぞ、帰らないのか?
さおり   まだ10時ですよ。
遠藤    10時はもう立派な遅い時間だ。
さおり   そうですか?
遠藤    何もすることがないなら帰ったらどうだ。
さおり   もう邪魔はしません。
遠藤    親が心配しているぞ。
さおり   大丈夫です。私、信頼されてますから。それに、明日は日曜日ですし。
遠藤    そうは言ってもな。
さおり   遠藤さん、ひょっとして心配してくれてるんですか?
遠藤    まさか。
さおり   え? もしかして、私の事、気になるんですか?
遠藤    馬鹿を言うな。
さおり   遠藤さんが30才でしょ?わたしが22才だから…
遠藤    何考えてんだ。
さおり   私と浮気したいんでしょう?
遠藤    どーしてそーなるんだ!
さおり   じょーだんです。心配しないで下さい。もう邪魔はしません。
遠藤    だから、さっさと…ううう…(お腹を押さえて思わず席を立つ)
さおり   どーしたんですか?

遠藤、我慢しきれず尻を押さえながら、内股で駆け出し、下手に去る。
さおり、急いで台本を読む。
しばらくして、水洗便所の水を流す音。トイレのドアを閉める音。
遠藤、恐い形相で下手より登場。

遠藤    俺に何の薬を飲ませた。
さおり   あ、ごめんないさい。私けっこう便秘症でいつも
遠藤    下剤を飲ませたな!
さおり   胃薬と間違えちゃったみたい。
遠藤    わざとやったな。
さおり   遠藤さん、これ、面白いですね。
遠藤    あ、読んじゃ…だめ…

遠藤、再びお尻を押さえて下手へ走り去る。
さおり、台本を読みあさる。

舞台下手奥から遠藤の声。

遠藤    お、おい!
さおり   おい、なんて人はいません。
遠藤    お、おい…
さおり   さおりです!
遠藤    さ、さおり!
さおり   どーしたんですか?
遠藤    ちょっと、来てくれ!

さおり、ポケットからティッシュを出して下手へはける。
舞台下手、遠藤の声

遠藤    ばか!見るな!

さおり下手から出てくる。

水洗便所の水を流す音。トイレのドアを閉める音。
遠藤、荒い息づかいで下手より登場。

遠藤    便所のトイレットペーパーも、おまえの仕業か。
さおり   それは、知りません。事故です。
遠藤    人の尻まで見やがって。
さおり   見たくて見たわけじゃありません。チャック開いていますよ。

遠藤、さおり背を向けて慌ててチャックを閉める。

さおり   遠藤さん、今回の脚本、面白いですね。
遠藤    (深いため息)本当のことを言え。
さおり   面白いと思いますよ。
遠藤    途中までで何が面白いだ。
さおり   面白いですってば。
遠藤    いや、そんなことはない。
さおり   何で。面白って言ってるじゃないですか。
遠藤    本当はつまらないんだ。
さおり   いいえ、面白いです。
遠藤    いや、つまらない。
さおり   面白い。
遠藤    つまらない。
さおり   面白い。
遠藤    つまらない。
さおり   じゃ、つまらない!
遠藤    え? 
さおり   披露宴を題材にした舞台なんて私見た事ないですよ。
遠藤    やっぱり、つまらないのか…
さおり   だから、面白いと思います。
遠藤    …

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