レコンキスタ
ごあいさつ

 ここ数年、「癒し」や「感動」を与えてくれるものが強く求められ続けています。
 癒されることや感動の涙を流すことに飢えている人達が増え続けているということなのですが、これは精神的に「しんど
い」状態に晒され続け、弱っていることの表れであると思います。現実のしんどさに目を背け、「癒し」「感動」に流れるこ
とを「現実逃避」だと批判できたのは、現実のしんどさを知らなかった若い頃の話です。けれども一方で、現実のしんどさ
とは全く無関係の「癒し」や「感動」を与えるものだけを作り続けることが、表現する者として本当に正しいことなのか、
と問われればどうもそうではないようにも、思われます。
 で、結論は何なのかと言われれば、僕は困ってしまいます。けれど、この困った状態に引き受けることこそ、生きること
そのものであり、それが僕にとっての「レコンキスタ」なのだと思います。
 神出鬼没、変幻自在のFavorite Banana Indiansです。今日はどうもありがとうございます。
最後までごゆっくりご覧下さい。


登場人物
第一景 地球先住民族
女1(地球先住民族・ガイア)
女2(地球先住民族・ベルバラ)
女3(地球先住民族・マリ)
男1
声1
第二景 癒されない女(ひと)
女4
女5
男2
声2
第三景 母性回復プログラム
女6
女7
女8
男3
職員
記者1
記者2


※ それぞれの登場人物は、全て違う役者が演じてもよいが、一人の役者が異なるシーンの複数の役を兼ねることも可能である。
※ 今回の上演では、女1・女4・記者1=A,女2・職員・記者2=B、女3・女6=C、男1=D、女5=E、女7=F、女8=G、
男2・男3=Hとする。


プロローグ

暗闇の中、声が聞こえてくる。

全員 日常は退屈だと気付いたとき、私達は物語を求めた。物語が退屈だと気付いたとき、私達は帰り道をなくした。

舞台、ゆっくりと明るくなる。
そこには、A、B、C、D、E、F、G。

B 日常の真綿で首が絞まって酸欠になったとき、私達は物語を求めた。
C 物語の光景が日常の光景のネガだと知ったとき、私達は帰り道をなくした。
D 日常の疎外された寂しさに耐えられなくなったとき、私達は物語を求めた。
E 物語が私達を受け入れてはくれないと悟ったとき、私達は帰り道をなくした。
F 日常という戦いに傷付き、物語という母親に癒されなかった私達に、もはや帰る場所はない。
G この日常に出口はなく、物語の仮初めの高揚は余計私達を傷付ける。
B 生きにくいこの日常を変える術も力も私達は持たず、
C 生きにくいこの日常に物語はとって代わりはしない。
D 私達の姿は、いつか私達を追いつめた日常という名の敵に似てくる。
E・F・G 私達の中に生まれた敵が、誰よりも強く私達を苦しめる。
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