KAIDAN

天鳥伝説異聞 もしも明日世界の終わりが来ても

(かいだん)
初演日:1999/7 作者:神崎あゆみ
          KAIDAN

  天鳥伝説異聞 もしも明日世界の終わりが来ても


         神崎あゆみ



    ◆ CAST

   林檎  18〜20才:女
   裕太  大学4年生 :男
   拓   同上    :男
   桃子  同上    :女

   林檎の母 44才  :女
       (回想シーンでは32才)
   村人  50〜60才 :女
   賢治  小学生    :男
   ひろし 同上     :男

   天鳥様 神様     :???


    ◆時  現代       ◆季節   夏

       舞台は山小屋の雰囲気が出せれば、ほとんどなにもいらない
       小さい劇場の方が雰囲気は出る。


 プロローグ 天鳥祭の夜
       ある田舎の村。天鳥(あとり)神社へ行く途中の
       林の中。賢治とひろしがやって来る。


 賢治  すげーよな!本当に誰もいないぜ!
     まるでゴーストタウンみたいだ。

 ひろし ねえ、賢ちゃん、もう帰ろうよ〜

 賢治  バーカ!何言ってんだよ。こんなチャンスめったにないんだぜ。
     ひろしだって天鳥神社の供物の話聞いた時、喜んでたじゃないか!

 ひろし そ、それはそうだけど・・・

 賢治  年に1度の天鳥様の祭りには、神社にすげえ供え物がされて、
     それも一晩中外に置いとくんだろ?
     見たこともない様な果物とか、宝石みたいなのとかを船の模型に
     入れて神社の境内に並べてるの、俺、チェックしたもんね!

 ひろし 天鳥っていう神様が祭りの3日間、夜中に村の中をねり歩くんだ。
     魑魅魍魎を引き連れてさ。
     船の供物は天鳥様とその行列に捧げるんだってよ。

 賢治  で、村の連中はこの3日間、夜は家に閉じこもって絶対外には出な
     いわけだろ?その立派な供物を放りっぱなしにしてさ。
     船の模型の中にはすげぇたくさんのさい銭も入ってるんだぜ!
     それこそ最新のゲーム機が何台も買えちゃう位にさ!!

 ひろし う、うん・・・そう・・・だけど・・・

 賢治  おまえだって、あのゲーム、欲しがってたじゃないか!

 ひろし でも・・・やっぱり怖いよ。供え物を盗るなんて

 賢治  バレやしないって。
     それに、どうせあの船は燃やしちゃうんだぜ。
     燃やす位なら俺達がもらっちゃったって構わないだろ?

 ひろし でも・・・こんな夜に外にいて、天鳥様の行列に会っちゃうかも
     しれないよ。
     天鳥様は出会った人間はみんな、行列に加えて「船」に乗せちゃうっ
     て

 賢治  バーカ!天鳥様だの魑魅魍魎なんているわけないだろ!!
     おまえ、こんな田舎にいて頭くさっちゃったんじゃないの?

 ひろし 賢ちゃん・・・

 賢治  いいか、ひろし。俺とおまえは親の転勤でこの村に来た、いわば
     ヨソ者だ。
     村の奴らは天鳥様だの何だのって、いもしない神様の事を色々言っ
     て俺達ヨソ者の事をソガイしてんのさ。

 ひろし ソガイ?

 賢治  そうさ。天鳥様の事になると、誰もが黙ってコソコソしちゃうじゃ
     ないか。あのガキ大将のゲンまでだぜ。
     あいつら絶対、みんなでグルになって俺達を怖がらせて面白がって
     るのさ。

 ひろし そうかなぁ・・・

 賢治  だから、その天鳥様の行列があるって日に外に出て、そんなもの
     いなかったって言って、ゲン達の鼻をあかしてやるのさ。
     ついでに供え物をちょっとばかりもらって、新しいゲームを買って
     あいつらに見せびらかしてやろうぜ!

 ひろし う・・うん・・・

 賢治  それにしても、そろそろ神社のはずなんだけど・・・・
     おかしいなぁ?こんなに遠かったっけ?

 ひろし ねぇ、賢ちゃん。僕達、さっきから同じ所をぐるぐるまわってない?

 賢治  え?

 ひろし だって・・・あそこにあるお地蔵さん、さっきも通り過ぎたよ。

 賢治  バ・・・バカ!そんなはずないだろ!
     俺達は役場の横の林の入り口から、神社に向かう一本道をまっすぐ
     来たんだぜ!
     きっと夜だから感じが変わって見えるんだよ。

 ひろし だ、だけど〜林の入り口から神社までは1キロもないんだよ。
     僕達、林に入ってから、もう1時間近く歩いてるよ!

 賢治  1時間・・・?!ま、まさか〜(笑)


       鈴の音


 ひろし 何?!今の

 賢治  鈴の音・・・?

 ひろし け・・賢ちゃん!あれっ

 賢治  光が、浮かんでる?!

 ひろし ひっ・・・人魂だよっ!!


       鈴の音、どんどん大きくなる


 賢治  おい!あの変な光の向こうに何かいるっっ
     行列みたいなのが

 ひろし 天鳥様だ!!

 賢治  こっちへ来る!!

 ひろし う・・・うわぁ-------------------


       ひろし逃げる。賢治、転んで逃げおくれる。


 賢治  ひろし!おい!待ってくれよ!ひろし----------------!!


       鈴の音。何かの気配に振り向く賢治。


 賢治  ・・・あ・・・ああ・・・た、助けて・・・・
     うわあぁぁぁぁぁぁ-------------------------------


       鈴の音 MAXになる



 ACT1  天鳥山頂上付近にある山小屋
       中央にベンチ。
       上手にテーブル代わりの台(箱の様なもので可)。
       他には何もない。
       村人に案内されて拓と裕太がやって来る。


 村人  荷物はこんだけかね?そこ、階段がくさっとるから気ィつけんと
     いかんよ。

 拓   ひゃ〜やっと着いたぁ〜

 裕太  ワシ、一生分の体力使ってしもーたわ。

 拓   まさかここまで山奥だとは思わなかったよ。

 裕太  もう絶対一人じゃ下りれんで。案内がなけりゃ、遭難や!

 村人  しかしあんたらも物好きじゃねぇ。
     いくら大学の卒論のための取材って言っても、わざわざこんな
     山小屋まで・・・しかも、こんな時期に。

 裕太  避暑にはなるでぇ。さすがにここまで来ると涼しいわ。

 拓   こんな時期だからいいんですよ。

 村人  何度も言う様だけど・・・本当に何があっても知らんよ。
     やめて村にもどるなら今のうちだよ。

 裕太  堪忍してぇな!またあの道帰るなんて殺生や!!

 村人  全く、これしきの山道でねをあげるなんて!
     いい若い者が情けないねぇ。

 裕太  おばちゃん・・・サイボーグなんとちゃうか?

 拓   ・・・そんなに色々あったんですか?ここで

 裕太  ・・・いいかい、くれぐれも言っとくけど、これから3日間、
     夜は何があっても外に出ちゃいけないよ。
     扉には鍵をかけて、万一夜訪ねて来る者がいても、決して中に入れ
     ちゃいけない。わかったね?

 裕太  ヤギに化けた狼でも訪ねて来るんかい?
     「トントン、開けておくれ、お母さんよ」

 拓   裕太!(村人に)わかりました。気をつけます。

 村人  3年前、やっぱりあんたらみたいな若い子達がこの山小屋にやって
     来て消えちまったんだとさ。

 拓   消えた?

 村人  そうさ。跡形もなく、ね。
     私はその頃、姑が町の病院に入院したんで付き添いで村にいなかっ
     たしこの山小屋の管理を任されたのは去年の事なんで、詳しい事は
     知らんけどね。

 拓   それで、その人達は?

 村人  それっきりさ。多分・・・「船」に乗っちまったんだろうね。
     ここはそういう場所だからね。

 裕太  夜の訪問者は「船」に乗る者か「船」に誘う者って事やな?

 村人  そうさ。特にこの3日間は1年に1度の「船」が出る日だからね。
     連れていかれたくないのなら、外には出ない事さね。

 拓   連れていかれたくないのなら・・・・

 村人  私は3日後の朝に迎えに来るからね。
     さ、急いで帰らないと行列がたっちまう!!くわばらくわばら

 拓   どうも・・・ありがとうございました。


       村人、拓に小屋の鍵を渡して急いで去る。
       裕太、鞄からリンゴを取り出してかじり始める。


 拓   ・・・なかなかすごい所じゃないか。なぁ裕太。
     まさに伝説が生きてるって感じでさ。

 裕太  なぁ、拓。どう思う?

 拓   え?

 裕太  天鳥伝説や。ホンマに「船」はこの山から出るんやろうか?

 拓   さあ・・・。でも面白い伝説ではあるな。

 裕太  だいたい山のてっぺんからどうやって「船」が出るんや。
     下の海まですべり落ちるんかい?

 拓   スプラッシュマウンテンみたいだな(笑)

 裕太  はぁ〜ごっつうおもろいレポート書けそうや(笑)


       桃子やって来る


 桃子  あ〜も〜やっと着いたぁ〜

 拓   桃子

 裕太  だぁほ!!遅いでぇ

 桃子  何よぉ、さっさと先行っちゃってさ!!

 裕太  時と場合を選んでお花摘みしような〜桃子チャン

 拓   おいおい、裕太

 桃子  何よッッ相変わらずデリカシーないわね!!
     仕方ないでしょっ、生理現象なんだから

 拓   桃子・・・・

 桃子  拓も拓よ。か弱い女の子一人置いて先に行っちゃうなんてひどい。
     何かあったらどうするの?

 裕太  おまえが誰かを襲うとか?


       桃子、裕太をはたく


 拓   桃子、おまえも女なんだからさ

 裕太  こいつのどこが女やっっ!!
     ガキの頃から、ごっつー乱暴者なんやで!!

 桃子  何よ!小学校の時あんたが転校して来て以来、チビだったあんたを
     誰がいじめっ子から守ってやったと思ってるのよ!!
     あの頃は可愛かったのに、今はこんなになっちゃって、
     あーもーサイテー

 裕太  何やと〜このアマ〜言いたい事ぬかしやがって〜
     今やって十分可愛いやないか〜

 桃子  何ふざけた事言っちゃってんのよ〜

 拓   全く!!痴話げんかはそれくらいにして、さっさと片付けろよ!
     (リンゴをかじっている裕太を見て)ほら、裕太!そんなの食べて
     ないで。桃子も

 桃子  あーん、も〜、わかったわよ〜


       裕太、桃子に更にちょっかいを出して逃げる。


 拓   裕太!!

 桃子  (笑)やっぱ、拓ってお兄ちゃんだわね。

 拓   いらないよ、こんな弟と妹なんて(笑)

 桃子  裕太とは全然タイプ違うのに、妙に気が合っちゃってるよね。

 拓   あいつとは宿命のライバルだからな

 桃子  あはは!1年の時から何かと競ってたもんね。
     テストの成績とか写真の腕前とか・・・

 拓   写真・・・

 桃子  私、拓がカメラマン志望だなんて知らなかった。
     どうしてそっちの方の学校に行かなかったの?

 拓   それを言うなら裕太だってそうだろ?
     あんなすごい写真撮るのに、何でうちの大学なんかに来たんだろう?

 桃子  脳天気だからじゃない?

 拓   おまけに4年になってから一切カメラを持たなくなっちゃってさ。
     もったいないよ。

 桃子  そうね・・・裕太ってば、カメラやめちゃうつもりなのかもね。

 拓   え?


       隣の部屋から裕太が声をかける。


 裕太(声) 桃子〜!!さっさとこっち片付けんと、おまえの寝場所は
     ないでぇ〜

 桃子  わかったわよ、片付ければいいんでしょ!


       桃子、退場。入れ代わりに裕太登場。


 裕太  (桃子に)早いとこやらんと日が暮れるで。
     拓、今のうちに小屋のまわり見とくか?

 拓   ああ、そうだな。

 裕太  もしかしたら天鳥様の関係者がおるかもしれへんでぇ(笑)


       隣の部屋から桃子の悲鳴があがる。


 桃子(声)キャ--------!!

 拓   何だ!?

 裕太  桃子!?


       桃子、飛び出して来る。


 桃子  で・・・出・・・出たぁ〜!!

 拓   どうしたんだ!!何が?

 桃子  今、窓の外を白いものがふわって横切ったの!


       裕太、外をのぞいて戻って来る。


 裕太  何もおらへんで。

 桃子  いたの!確かに!!ふわって・・・ふわっ

 拓   見間違いじゃないのか?

 桃子  (首をぶんぶん振る)いたの!女の子が!!
     真っ白い顏して横切ったの〜!!!

 裕太  おい、ワシ、ホンマはそーゆー話、あんまり得意やないの知ってる
     やろ?堪忍してぇな。

 拓   こんな所に来ていながら、そんな事言っても説得力ないけどな。

 裕太  だいたい、こんな山奥に女の子が一人でおるはずが


       ノックの音。3人、顔を見合わせる。


 裕太  な、なあ・・・今、何時や?

 桃子  何言い出すのよ急に!

 裕太  あのおばちゃん、夜の訪問者は絶対中に入れるなって言ったんや。


       ノックの音。


 拓   ・・・少なくとも、まだ夜じゃない。

 桃子  拓!!


       拓、ドアを開けに行く。
       白い服を着た林檎がふらふらと入って来る。
       息を飲む桃子。


 林檎  ・・・連れて行って・・・私も・・・・


       林檎、倒れる。桃子の悲鳴。駆け寄る裕太と拓。
       暗転。



 ACT2  その日の夜
       上手の台にはポット、カップ、リンゴが置いてある。
       中央ベンチには林檎がすわっていて、それを囲む様に
       拓と裕太がいる。
       桃子が林檎にコーヒーを持って来る。


 桃子  どう?少しは落ち着いた?

 裕太  まあ、あんだけ飯食えりゃ、大丈夫やろ。

 拓   裕太。


       寒そうな様子の林檎


 桃子  寒い?これ、着て。


       桃子、自分の上着を脱いで、林檎に貸す。
       林檎、着る。


 拓   ねえ、よかったら聞かせてくれないかな?
     何でこんな所にいたんだい?君、一人で来たの?

 林檎  ・・・・一人よ。

 桃子  よくこんな山奥まで案内もナシで来たわねぇ。

 林檎  ・・・・・・・

 裕太  あんた、名前何ていうんや?

 林檎  ・・・・林檎

 桃子  林檎?可愛い名前!私は桃子っていうの。

 裕太  林檎と桃・・・果物屋か漫才師か?


       桃子、裕太をはたく


 桃子  気にしないでね。礼儀知らずな奴で。
     こいつは裕太。そっちが拓。
     3人共同じ大学で、天鳥伝説を調べに来たの。

 林檎  天鳥伝説を・・・?!

 拓   興味深い話だよね。君も知ってる?

 林檎  知ってるわ。年に1度、天鳥っていう神様が、魑魅魍魎や
     その年死んだ人間の魂を引き連れてこの山に昇って来るんでしょ?
     この山から船が出るのよ。
     天鳥船(あめのとりふね)・・・・他界へと渡る船が。

 桃子  へえ・・・ずいぶん詳しいのね。

 林檎  天鳥様は山に昇る前の3日間、麓の村をねり歩くのよ。
     そこで死者の魂を行列に加えていくのね。
     行列に出会うと生きた人間でも連れて行かれるわ。
     だから村の人間は、この3日間、夜は絶対外に出ない・・・・


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