夢裁判

(ゆめさいばん)
初演日:0/0 作者:八重樫路孝


        『夢裁判』









CAST


  渡
  友加里

  涼
  蘭子

  まみ

  





         プロローグ

       幕が上がると
       冬の夕暮れ。
       公園らしき広場に
       渡と、友加里がいる。
       
渡 「考えておいてくれよ」
友加里 「うん、ありがと」
渡 「よろしくな」
友加里 「うん。…とりあえず時間ないから行くね。また後で」
渡 「ああ」

       と、走り去る友加里。
       その後姿を見送る渡。
       振り返り、空を見上げる。

渡 「これでいいんだよ。何が一番良い選択なのかなんて、分かりっこないんだから」

       と、その側に、一人の少女。

少女「渡くん…」
渡 「はい…」
少女「渡くんだよね」
渡 「えっ」
少女「せっかく来たんだけど、困ったな」
渡 「何、何が」

       と、少女は一度振り返り、

少女「とりあえず、じゃあ、さよなら」
渡 「おいっ」

       と、駆け去る。

渡 「なんだ、ありゃ」

       と、去っていく姿を一瞥し、彼女がきた方向を振り返る。

渡 「倒れてる…。…。まさか…友加里?」

       と、駆け戻る渡。

       暗転


         第一章


       電話のベルの音がする。

蘭子 「はいはいはい」

       と、蘭子登場。
       矢野家の居間。


蘭子 「もしもし、矢野です。あ、渡くん。久しぶりじゃない。元気?…うん。旦那は、そろそ
ろ起きてくる頃だと思うんだけど」
涼 「オハヨウ」
蘭子 「あ、起きてきた。ちょっとまって、今代わる」

       と、そこへ涼が登場。

涼 「今何時」
蘭子 「7時ちょうど。はい」
涼 「朝」
蘭子 「夜に決まってるでしょ。ほら電話」
涼 「誰」
蘭子 「渡君」

       と受話器を受け取る涼。
       由美は夕食の用意か、部屋を片付けはじめる。

涼 「おう、久しぶり。ああ、今新作の執筆中でな。傑作になるぞ。この間の、宇宙ステーショ
ン実験中の事故があっただろ、そうそうまだ5人ぐらい行方不明のやつ、あれをモチーフにして
な、今世紀最高という評価を受けるためだけにあるような小説ができるんだよ。どうした、…
何?…うん、わかった。落ち着けよ、な。大丈夫だって。ああ、とりあえず、待ってるから」

       と、受話器を置く涼。

蘭子「なんかあったの」
涼 「友加里ちゃんが倒れたって」
蘭子「倒れた。病気か何か」
涼 「良く分からない」
蘭子 「わたし、明日お見舞いにいくわ」
涼 「ああ、俺もいくつもりだから、一緒に行こう」
蘭子 「友加里が倒れるなんて、よほどの事だと思うし」
涼 「とりあえず、渡がいまから来るってさ」
蘭子 「大丈夫なの、そういう時に側にいなくて」
涼 「生きるか死ぬかって訳じゃないようだし」
蘭子 「わたしだったらいて欲しいけど」
涼 「あいつは、そういう奴だから」
蘭子 「心配りがたりないわよ、君も渡君も」
涼 「まず、今から来るっていうから、準備よろしく。あ、それとも、どっか外に食べに行こう
か。給料日だし」
蘭子 「節約」
涼 「いや、せっかくだから、」
蘭子 「わかったわよ。じゃあベランダにご飯用意するわ」
涼 「…」
蘭子 「外食」
涼 「おいおい」
蘭子 「寒そうだから一人食べてね」

       と、玄関のチャイムがなる。

蘭子 「渡君かしら」
涼 「いや、いくらなんでも違うだろ。いいよ、俺が出る」

       と、立ち上がり、玄関へ向かう涼。
       蘭子は、部屋の片付けをはじめる。

       玄関には、一人の少女。まみ。
       ちょっと現代的ではない服装をしている。

涼 「どちらさま」
まみ 「こちらに、渡君はいますか」
涼 「いや、まだ来てないけど、誰?」
まみ 「そう…」
涼 「…」
まみ 「あの、いつ頃来ますか」
涼 「いつって、十分もあれば来ると思うけど」
まみ 「…あの、」

       と、不意に後ろから蘭子が涼を引き戻す。

蘭子 「誰」
涼 「なに怒ってんだよ」
蘭子 「誰」
涼 「知らないって。渡を訪ねて来たみたいなんだから」
蘭子 「…」
涼 「信じろって」
蘭子 「あ、ちょっと、何勝手に入って来てるのよ」

       と、振り返ると、まみが椅子に腰掛けている。

まみ 「あ、おじゃましてます」
蘭子 「じゃなくて」
まみ 「渡君がくるまで、待たせてもらってもいいですか」
涼 「いいけど…」
蘭子 「とりあえず、名前と理由ぐらい話してよ」
まみ 「ええと、まみといいます。渡君とは、昔ちょっとありまして…」
涼 「ちょっと」
まみ「ちょっと」
涼 「聞いたことないなぁ。そんな話は」
蘭子 「そりゃあ、友加里の手前、きみには話せなかったんじゃないの」
涼 「で、どうしたいのさ」
まみ 「これからのこと、きちんと話をしたいんです」
蘭子 「ここは、ビシッと言ってあげたほうがいいんじゃない」
涼 「そうだよな。ええと、まみちゃん、渡にはね、友加里ちゃんという人がいてね、」
まみ 「知ってます」
涼 「じゃあ尚更だ。今日、友加里ちゃんが、倒れたそうなんだ。渡は、そのことで非常に動揺
している。ここに向かっているのも、その話をしにくる所なんだ。きみがどういう用で渡に会い
に来たのかわからないけれど、今日のところは、あまり騒がしくして欲しくないんだよ」
まみ 「でも…」
蘭子 「そんなに大事な話なの」
まみ 「うん、多分間に合わなくなるから」
涼 「わかったよ」
蘭子 「ちょっと、」
涼 「待っていればいい。でもな、あいつを傷つけるような言動だけはして欲しくないんだ」
まみ 「…。それは無理かも…」
涼 「おいおい」
まみ 「でも、渡君のためにはなると信じています」
涼 「わかった。それでいい。蘭子、とりあえずなんか飲み物」
蘭子 「はぁい」

       と、蘭子はお茶の準備をする。

涼 「正直な話、渡とはどんな関係なのさ」
まみ 「内緒です」
涼 「あいつが、俺にも秘密にするぐらいだから、深い理由があるんだろうけど」
まみ 「ふかーい理由はあります」
涼 「どんな」
まみ 「約束したから」
涼 「…」
まみ 「そして、それはもう守ることができないから」
涼 「…」

       と、静かにうつむくまみ。

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