ゴリラ
練習用脚本
ゴリラ
登場人物 イチロウ（男）
職員（男）
動物園で、檻の中にいる動物を見て回るイチロウ。
イチロウ おお、チーターかあ。やっぱ、かっこいいなあ。
プレートを読むイチロウ。
イチロウ チーターは時速110kmで走ることができ、これは陸生生物の中では最速である。・・・おれもこれだけ足が速ければなあ。
そこへ、職員が現れる。
職員 あ、いたいた。すみません。
イチロウ おれですか？
職員 はい。あなたイチロウさんですよね。
イチロウ はあ、そうだけど。
職員 良かった。では帰りましょう。
イチロウ は？
職員 私についてきてください。
イチロウ ちょ、ちょっと待ってくれよ。
職員 はい。
イチロウ 帰りましょうって、どこに帰るんだよ？
職員 それはですね、単刀直入に言いますと、お帰りになって下さいということです。
イチロウ 答えになってねえよ。一緒じゃないか、要は帰れってことだろ。
職員 納得いただけましたか。
イチロウ できるかよ！どこをどう納得しろって言うんだよ！
職員 まあ、とりあえず、私と一緒に帰りましょう。
イチロウ いやいや、おれ、さっき来たとこだよ。何も観ずに帰れって、どういうこと？てかあなた誰？
職員 私はここ、深草動物園の職員です。
イチロウ そんなの見りゃ分かるけどさ。で、どうして動物園の職員さんにおれは家に帰れって言われるわけ？
職員 分かりきったことでしょ。あなたにこんなとこウロウロされちゃ、困るんですよ。
イチロウ はい？それは何？おれがここにいちゃ迷惑だってこと？
職員 いえいえ・・・。
イチロウ 冗談じゃねえよ。せっかくの休暇だから、気晴らしに外出して来てみたら、何この対応！
職員 まあそう興奮しないで下さい。いえね、あなた自体は迷惑じゃないんです。問題なのは、そう、あなたの行動ですね。
イチロウ 行動？おれが何かした？
職員 よく思い出してくださいよ。ここまでの道のりを。
イチロウ 家から直で、ここに来たよ。
職員 寄り道してないですか？
イチロウ してない。
職員 そうですか。ここは・・・・・・えっと、何の檻ですか？
イチロウ チーター。見たら分かるだろ。
職員 ああ、メガネ忘れてきちゃったもんで。黄色いのが動いているのはぼんやり分かるんですが・・・・・・。
イチロウ よくそれで職員できるよな。
職員 今日忘れたのはたまたまですよ。で、チーターの檻の前にいるということは、爬虫類のほら穴を通ってこられたんですね？
イチロウ ほら穴って、蛇とかワニとかいるあそこ？
職員 いえいえ、蛇とかワニのあそこは普段見えないんですよ。
イチロウ は？
職員 爬虫類のあそこはね、交尾のときにしか出てこないんです。
イチロウ いや、何の話だよ。
職員 分からないですかね。交尾というのは・・・。
イチロウ ちょちょちょ、違うって。ほら穴はどうなんだよ。
職員 穴の方は常に開いていますよ。
イチロウ だから意味わかんないんだけど。あんたそんな話おれに聞かせにきたわけ？
職員 あ、すみません、職業病が、つい。
イチロウ は？
職員 よく幼稚園児や小学生が遠足に来るんです、うちの動物園。そのときに話すんですよね。君たちとは違うんだよって。
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