TIME



         『TIME』




CAST


  渡

  真
  由美

  るり







         吹く風を心の友と
         口笛に心まぎらはし
         私がげんげ田を歩いてゐた十五の春は
         煙のやうに、野羊のやうに、パルプのやうに、

         とんで行って、もう今頃は、
         どこか遠い別の世界で花咲いてゐるであらうか
         耳を澄ますと
         げんげ色のやうにはぢらひながら遠くに聞こえる

         あれは、十五の春の遠い音信なのだらうか
         滲むやうに、日が暮れても空のどこかに
         あの日の昼のままに
         あの時が、あの時の物音が経過しつつあるやうに思はれる

         それが何処か?―――とにかく僕に其処へゆけたらなあ……
         心一杯に懺悔して、
         恕されたといふ気持ちの中に、再び生きて、
         僕は努力家にならうと思ふんだ―――

                              中原 中也


         第一章

       幕が上がると
       一人の男が歩いている。渡。

渡 「そろそろ花見の計画もたてないとなぁ。後で、渡に電話しないと」

       その後ろから、一人の少女が駆け寄ってくる。
       渡の側まで来て、不意に立ち止まる。

少女「渡くん…」
渡 「はい…」

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