赤鬼と青鬼

(あかおにとあおおに)
初演日:2004/7 作者:原田 健民
「赤鬼と青鬼」

脚本:原田 健民
演出:原田 健民
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ーーー明転ーーー

 雨が降り、雷が鳴り響く夜。

きぬ
   「ひ、ひぃっ!ひぃっ!だ、だれか・・・」

   「ぐをぉぉぉおお・・・」
きぬ
   「た、助けて下さい!私の命ならいくらでも差し上げますけぇ。この子の・・この子の命だけは・・」

   「ぐをぉぉぉおお・・・」

 権作登場。手には鍬(くわ)を持っている。

権作
   「おいっ!だ、大丈夫か、きぬ!」
きぬ
   「あ、あんたー!」
権作
   「や、やいっ!鬼公!わしの子に指一本触れて見ろ!貴様を叩き殺してやるっ!」

   「ぐをぉぉおお・・・貴様等に用はない・・・子供をよこせ・・子供をよこせ・・・」
権作
   「う、うるせえっ!」
きぬ
   「いやぁーっ!!」

   「ぐをぉおおおおー!」
権作
   「ぐわぁあっ!」

 鍬(くわ)が吹っ飛ぶ。

きぬ
   「あ、あんたー!」
権作
   「うぅ・・くっ!大丈夫じゃ!」
きぬ
   「(泣きながら)この子が喰われるなんてイヤっ!この子が喰われるなんて絶対イヤッ!」
権作
   「お前は坊から離れるなっ!大丈夫じゃ!絶対にわしが守ってやる!だから絶対に坊から離れるなっ!」

   「ぐをぉぉおお・・・」
権作
   「やいっ!鬼公!わしが貴様を叩き殺してやるっ!出てきやがれ!」

   「ぐをぉおお・・・」
権作
   「出てきやがれって言ってんだっ!貴様のような、子供しか狙わない卑怯者は絶対に許せんのんじゃっ!死んでもわしの子は渡さんっ!出てきやがれっ!」

   「ぐをおおぉぉぉぉ・・・・・・」(鬼の声、だんだんと遠くに行く感じで、小さくなっていく)


 少し間。


きぬ
   「あ、あんた・・・鬼が・・」
権作
   「・・・あ、あぁ・・・どうやら何もせず帰っていったみたいだの・・・・」
きぬ
   「あぁーっ、怖かったよぉーっ」
権作
   「だ、大丈夫じゃ、きぬ」
きぬ
   「あの子が喰われてしまうかと思って・・・あたし、どうしたらいいか分かんなくって・・」
権作
   「大丈夫じゃ。鬼は帰っていった。・・・でもとりあえず今日は用心しなくてはの。わしが朝まで起きとってしっかり見張っておくから安心するんじゃ!」
きぬ
   「あんた・・うん」

 きぬ、子供を下に寝かす。
 権作、飛ばされた鍬(くわ)を拾いに行く。


   「子供をよこせっ!」

 落雷。音がスゴイ勢いでなる。光る。

きぬ
   「あ、あんたぁーっ!」
権作
   「きぬーっ!坊ーっ!」

   「がーはっはっは・・・」
きぬ
   「あ、あんたっ!あの子が・・あの子がいないっ!」
権作
   「ぼ、坊!坊っ!!」
きぬ
   「いやぁーーーーっ!!」

 落雷。バックで鬼の笑い声。


ーーー暗転ーーー


ーーー音楽スタートーーー


ーーー明転ーーー


ナレ     
   「この物語はむか〜し、昔のお話じゃ。この時代、まだ鬼達がたんとおった頃。人間達は毎日のように怯えながら生活しとった。日がくれる頃になると、鬼達が村にやって来ては、
   子供やおなごを狙っておったそうな。人間達は腕に覚えのあるお侍達が、鬼が来るのを待っておって、幾度と無く戦をしておった。ここもその村の一つ。辺りは緑が生い茂り、生活
   するには最も適した村じゃったのだが鬼がここ2,3年の間に村にやってきて、人間達を襲うようになった。それを阻止しようと、色んな者が戦をしたが、誰も倒せる者はいなかった。
   さて、ここはその村の一角にある山の森の中。そこに一軒赤い色をした不思議な小屋があった。だれかが生活しているのか、外には鍬と鎌が置いてある。村の者達は、ここが鬼
   の住処じゃないかと噂をしておったが、だれもその姿を見た者はおらなんだそうな。実はこの小屋、村の噂通り鬼の住処じゃったのじゃ。ほ〜ら話をしている間にどうやら赤鬼が目
   を覚まして出てきおったぞい。」

 (赤鬼、登場)

赤鬼     
   「(あくびをしながら)ふぁ〜あ・・・。あ〜よく寝た。(外を見て)ん〜、今日も心地よい朝だ。うわぁ!寝癖がひどいや。(髪をクシャクシャしながら)ま、いいか。(お腹を押さえて)
    う〜ん・・それよりお腹がすいたなぁ・・。(鍋の中を見て)はい、何も無し。昨日全部喰っちゃったからなぁ。(奥を観て)あっ!そうだ、確かここに前獲った芋があったはずだけど・・・。
   あ、あった!よしこれで、汁でもつくるか。」

 赤鬼、鍋を奥から持ってくる。そこに芋を丸ごと入れる。野菜を入れながら鼻歌を歌っていると、外から村人らしき人間の声がしてくる。

権作・きぬ
   「大量♪大量♪こりゃ大量♪かごの中身は宝の山じゃ♪  大量♪大量♪こりゃ大量♪今日もお顔が恵比寿顔♪  蓮根・白菜・大根・長ネギ♪お芋に木の実に山の幸♪  
   大量♪大量♪こりゃ大量♪村のみんなは大喜び♪」
権作     
   「いやぁ、今日もたんと穫れたなぁ」
きぬ     
   「あぁ、ほんまじゃ。近頃ちゃんと雨が降ってくれるでの。山の神様のおかげじゃ。感謝、感謝」
権作     
   「ほんと、この量を見たら、村の奴ら大喜びするぞ」
きぬ     
   「連日じゃからの。喜ぶ顔が目に浮かぶの」

 村人1・2、笑う。

きぬ     
   「(鬼の家を見て)お、おい!あ、あんた・・」
権作     
   「ん?なんじゃ?おいおい、どうしたが、そんなおっかなびっくりの顔してからに」
きぬ     
   「あ・・あれ・・・!」
権作    
   「ん?・・・!(鬼の家を見て)な、何と言うことじゃ!あの小屋から煙が出とる!」
きぬ     
   「あ、あそこは噂の鬼の家・・・」
権作     
   「ま、まさか・・・鬼がいるだか?」
きぬ     
   「み、見つかったら、あたしたち喰われてしまうぞ!」
権作     
   「!」
きぬ     
   「こりゃ早く村の奴らに教えてやらねば・・」
権作
   「ちょ、ちょい待てきぬっ!」
きぬ
   「な、なんじゃ!どうしただ!」
権作
   「ほ、本当に鬼がおるか、確認してみるぞい」
きぬ
   「何を馬鹿なこといってるだ!そんな事してたら、あたしたち喰われてしまうぞい!」
権作
   「バカタレ!忘れただかっ!・・・わし等の大事な坊をさらっていった、憎っくき鬼じゃぞ!」
きぬ
   「そげなこと忘れるもんけっ!あの日のことは、一生忘れん!・・・だが、倒したくてもだれも勝てんかった。そうじゃろうが!わしらが見つけたからといってどうするつもりなんじゃ!」
権作
   「・・わしが憎っくき鬼をしとめる」
きぬ
   「無、無理じゃ!喰われてしまうのがオチぞい!」
権作
   「そ、そげなことやってみな分からんじゃろうが!」
きぬ
   「いんや、無理じゃ!わざわざ殺られにいくようなもんじゃ」

 そこに、家の中から赤鬼が何やら探しながら出てくる。
 2人、出てくる物音に反応し、家の方を隠れながら見る。

赤鬼     
   「(辺りをキョロキョロしながら)なんか忘れてると思ってたら、肉入れるの忘れてた。どうりでさっぱりしすぎてて美味しくないわけだ。え〜と、確かここにイノシシの肉が・・・あった
   ような・・・え〜と、肉、肉っと・・」
きぬ
   「あ、あ、あんた・・・」
権作
   「あ、あぁ鬼じゃ・・・。赤鬼じゃ。間違いない。あの憎っくき鬼じゃ・・」
赤鬼
   「肉・・肉っと・・・(2人の方を見て)ん?・・・今何やら話し声が聞こえたような・・・」
権作・きぬ
   「!(口をふさいだり、シーッと仕草をしたりする)」
赤鬼
   「・・・・。誰かいるの?」
権作・きぬ
   「・・・・・・」
赤鬼
   「誰もいないの?ねぇ!・・・ん〜、気のせいかな?」
権作・きぬ
   「・・・・・・」
赤鬼
   「・・・鳥の鳴き声か何かが間違って聞こえたのかな?ん〜・・・。おっと、それより肉だ。鍋が煮え立っちゃう!肉、肉・・・っと」
権作
   「きぬ・・・わしが・・わしがあの赤鬼めを叩殺してやる」
きぬ
   「あ、あんた!」
権作
   「止めるでねぇ!やっとさ、坊の敵がとれるんじゃ!わしはこの日を待ちに待っとったぞい。(立ち上がって)や、やいっ!この赤鬼めっ!そこを動くでねぇ!」
赤鬼
   「ん・・・?」
権作
   「うちの・・・うちの坊をさらっていきやがって・・・叩殺してやるっ!」
赤鬼
   「え?!な、なに?」
権作
   「とりゃーっ!」(鍬を片手に赤鬼めがけて突っ走る)
赤鬼
   「う、うわぁ!な、なにするんだよ!」
権作
   「う、うるせぇ!うちの坊を喰いやがったくせに!覚悟しろ!」
赤鬼
   「ちょ、ちょっと待ってよ!何の事だか全然分からないよ!」
権作
   「この期に及んでまだしらばっくれるだかっ!」
赤鬼
   「ちょっ!待ってよ!本当に何も知らないんだってば!」
権作
   「うるせぇ!うるせぇ!うるせぇ!!」
赤鬼
   「うわぁ!ちょ、あ、危ないじゃないか!」
権作
   「赤鬼ー!覚悟ーっ!」
赤鬼 
   「う、うわぁーっ!」

 赤鬼がやられそうになったとき、突如赤い光が辺り一面に光り、爆風の音と共に権作が吹き飛ばされる。

権作
   「ぐわぁーっ!」
きぬ
   「あ、あんたーっ!」
赤鬼
   「へ・・・?」
権作
   「あいててて・・・こ、腰が・・腰が・・・」
きぬ
   「あ、あんた!しっかりするだ。」
権作
   「く、くそーっ!よくもやってくれただな!この鬼公めっ!あいてて・・・」
きぬ
   「動いちゃ駄目だ!あんた!」
赤鬼
   「あ、あの〜・・・」
きぬ
   「こ、こっちさ来るでねぇ!」

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