視覚的絵巻シリーズ「TAROH」
登場人物

・柿太郎
・鬼太郎
・お姉さん
・鬼嫁
・青い鬼
・村長
・村娘&町娘

・語り部




   第一幕   柿太郎

   舞台脇に一人の演者
   客席に一礼、ゆっくりと語り始める

語り部     太郎・・・柿、太郎。むかーしむかし、ある所におじいさんとおばあさんが住んでいました。二人はそれほど裕福ではありませんでしたが、とても仲良く暮らしていました。そんなある日、おじいさんは山へ柴刈に、おばあさんは川へ洗濯に行きました。おじいさんがどれほど柴を刈ったのか?は置いといて、おばあさんが川で洗濯をしていると、川の上流からドンブラコ、ドンブラコと流れてきました・・・おじいさんが。どうやら山で足を滑らせて川に落ちた様です。おばあさんは慌てておじいさんを助けようとしました。しかし、ふと見るとおじいさんの横を、大きな柿がドンブラコ、ドンブラコと流れてきました。無性にお腹が空いていたおばあさんは、おじいさんそっちのけで流れてきた柿を拾い上げました。

   語り部の台詞中、おじいさんとおばあさんが語り部の語りに合わせて動く

お爺さん    ばあさんやぁ~~~・・・。

   お爺さん、川の流れに飲み込まれて流されていく(出番ここのみ)

お婆さん    それがあの人の最後の言葉でした。
語り部     拾った柿を家に持ち帰ったお婆さんは、早速拾った柿を食べようと思い、お婆さんが、包丁で柿を切ろうとした、その時でした。何と柿が独りでに割れ、中からまばゆい光と共に、一人の子供が・・・
お婆さん    おい、おい、おい、おいお前。
語り部     ・・・え?
お婆さん    え?じゃないよ。さっきから呼んでるんだけど。
語り部     いや、でも私語り部なので、そっちとは話せないんですけど。
お婆さん    語り部だろうがアタリメだろうがどうでも良いんだよ。あんたさっきから人の事なんて呼んでるんだい?
語り部     え?
お婆さん    だから、あたしのことなんて呼んでる?
語り部     お婆さん、ですけど。
お婆さん?   誰がお婆さんだ、誰が。どっからどう見てもお姉さんだろうが。
語り部     でも、お婆さんって書いてあるので。
お婆さん?   そんな事知らないよ。こんな年頃の娘を捕まえておいて、お婆さんだなんて失礼な奴だね。
語り部     設定ではお婆さんって聞いてるんですけど。
お婆さん?   じゃあ何?私が悪いって言いたいの?お婆さんって設定なのに、お婆さんになってない私が悪いって?じゃあ今からメイクやり直してこようか?ココとかココにシワを入れてくればいい?みんな30分くらい待たせてメイクしてこようか?そうする?そうしようか?
語り部     いや、それはちょっと・・・。
お婆さん?   ちょっと何?
語り部     困りますね。
お婆さん?   私だって困るわよ。このまま続けたら私が手を抜いてるみたいじゃない。
語り部     じゃ。じゃあ変えましょう。変えちゃいましょう設定。お婆さんじゃ無くて・・・(思いつく)お母さんって事に。
お母さん?   お母さん?
語り部     お姉さん!お姉さんです。
お姉さん    若くてキレイなお姉さんか。まあ、それならいいか、じゃやり直そうか。
語り部     え?最初から?
お姉さん    当たり前でしょ。途中から変えたらおかしくなるでしょ。はい、よーい・・・スタート。
語り部     むか~しむかし、ある所にお爺さんとお婆さ・・・お姉さんだけが住んでいました。ある日お姉さんは川へ洗濯へ行きました。お姉さんが川で洗濯をしていると川の上流から大きな柿がドンブラコ、ドンブラコと流れてきました。驚いたお姉さんは巨大な柿を拾い上げると、家に持ち帰りました。お姉さんが柿を食べようと、包丁で柿を切ろうとしたその時でした。柿が独りでに割れ、中から眩い光と共に一人の赤子が出てきたのでした。
赤ん坊     おぎゃー。
お姉さん    (大きいとは言え、バスケットボール大程度の柿と赤ん坊を見比べて)どうやって入ってたの?
語り部     子供のいなかったお姉さんは天からの授かりものと思い、赤子を可愛がりました。その赤子こそがこの物語の主人公が一人。

   音楽

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