血を吸う鬼
-陰陽師・安倍ノ晴明・鬼伝-

血を吸う鬼 ver.0.95



【登場人物】

晴明・・・吉備に滞在中の都で名高い陰陽師。実は・・
火垂・・・晴明の使い魔?謎の少女。

薬子・・・吉備の豪族の新妻。夜ごと通う吸血鬼に魅入られたという。
     人形等で表現されても良い。
主人・・・吉備の豪族。

吸血鬼?・・・最近、吉備の国を騒がせている。温羅の祟りとも噂される。
         人形等で表現されても良い。

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 突然、平手打ちをくったように闇が満ちる。
 闇の中に妖美な女のうめき声と荒々しい獣の呼吸音、そして必死に祈る声が流れ・・

薬子の声
「あなた・・・あなた・・・ああ・・・もう・・」
主人の声
「おんあぼきゃべいろしゃのうまかぼだらまにはんどまじんばらはらばりたやそわか・・
怨霊退散!怨霊退散!おんりょおーったいさあーんっ!」

 女のひときわ高い声・・・そして沈黙

 舞台は吉備の鬼ノ城にほど近い豪族の館。
 はや丑三つ時になんなんとする夜更けに
 灯りを手にした主人に導かれて現れたのは
 近頃、この地に逗留しているという
 都で評判の陰陽師"安倍の晴明"

主人
「お座りください。都で評判の陰陽道の大家"安倍の晴明"殿をお迎えして、
せめて田舎料理なりと用意いたしたいとは思えども、あいにくと使っております者どもが、
その・・・子細あって里へ帰っております。無調法をお許しくださりませい。」
晴明
「気にされるな。宴に呼ばれたとは思うておらぬ。
が・・・まあ、酒の一献くらいはあってもよいか・・」

 晴明が軽く手を振ると、闇の中から幼い女の子にも見える姫がとっくりを下げて現れる。

主人
「おう!・・この姫君はいつのまに館に入られたのやら・・とんと気づきませなんだが」
晴明
「酒が欲しいと呼びました。・・火垂、注いでくれ。」

 火垂、主人と晴明に酒を注ぐ。晴明飲み干して、お代わりをする。

晴明
「いい酒だ。米と水が良いのだろう。」
主人
「いかにも、この吉備の国は米どころ、水どころでござります。
・・この酒は吉備の地酒の中でも一番の物、じゃが、土地の者しか知りませぬ・・・
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