冬の星を結んで

(ふゆのほしをむすんで)
初演日:2018/2 作者:いざきた鈴
冬の星を結んで

作:いざきた鈴


ここは、終わりの場所であり、始まりの場所
ねえ、また一緒に見ようね・・・
最後まで生き続けた星たちを


キャスト


一ノ瀬 雛(23歳)      若い小説家。只今絶賛スランプ中。
佐野 優月(23歳)      ひなの中学からの親友。高校では陸上部のエース。常に笑顔を絶やさない。
佐野 沙希(25歳)      優月の姉。一番の理解者。妹を大切に想っている。
井上 明海(30歳)      病院の、看護師助手(自称)病院については、誰よりも詳しい。沢山の患者を見送っている。
高坂 健司(27歳)      ひなの編集者。ちょっと怖い。



序章  昔の約束

ひなと健司が屋上で夜空を眺めている。

健司、空へ手を伸ばし、星を取って(実際はその代りになるもの)ひなへ渡す。(実際渡さなくても、素振りで)

健司、去る。


ひな   冬のダイヤモンド・・・。綺麗に輝く六角形を一緒に眺めた不思議な男の子。その子が引っ越してから、15年が経った。
    ・・・元気かな?今も星を眺めているかな?あなたが、冬のダイヤモンドに手を伸ばして星を掴んで言った言葉、今でも覚えているよ。

ひな、もらったのを包み込むように胸に抱き、目を閉じる。

ひな   僕はいつもここにいるよ・・・って。離れていても、この広い空の下では、繋がっている・・・私はそう信じているんだよ。

オープニング曲イン。
ひなを取り巻く人間関係を表現。





第一章   スランプの作家

場所は、仕事場。
ひな、原稿用紙を眺めながらうなっている。

ひな   ・・・あは・・・・あはははははははははは・・・・。書けないーーーーーー!!!!

転がりながら、悶えるひな。

ひな   締め切り一か月後なのに、書けないよーーー!!!!早く、何とかしないと奴がくる!足音が聞こえる・・・
    恐怖の奴の足音がーー!!!どうしよう・・・なんて言い訳をする?あ、ごめんねー、ちょっとおなかの調子が悪くてー(ハート)
    ・・・だめだ、通じない!それなら・・・死体のふりでも・・・。

ひな、一度床に寝そべる。

ひな   ・・・これ、意外といけるかも?
健司   (声のみ)一ノ瀬、入るぞ。
ひな   き、きたーーー!!!

ひな、寝そべる。
健司登場。

健司   原稿の進捗状況は・・・って、何をやっている?
ひな   私は、ただの屍。だから、返事がないのです。
健司   思い切り返事しているぞ。おい、ふざけるな!

健司、ひなをひっぱたく。

ひな   酷い!
健司   そんな遊んでいる暇があれば、原稿の一枚でも書いたらどうだ?
ひな   お腹・・・
健司   また仮病か?
ひな   急ぎの用事が・・・
健司   ないよな?
ひな   編集者のくせに偉そう!!なんでいつもそんなに偉そうなの!
健司   受け持つ書き手が、こんなんだからだ。
ひな   こんなんって、なに!
健司   ば・か。
ひな   なんでこんな奴が担当なんだよーーーー!!!
健司   それよりも、原稿!
ひな   ・・・まだ・・・何も書けていない・・・。
健司   ほう?
ひな   書こうとして頑張ったんだよ?でも、全然ネタが浮かばなくて・・・。
健司   絞り出せ。
ひな   無理!頭パンクしそう!!
健司   パンクしようが、狂おうが、原稿さえ完成させれば問題ない。
ひな   鬼!!人でなし!!
健司   いいから原稿をやれ。
ひな   うーーー。
健司   ネタがないのなら、探してこい。
ひな   どこに?
健司   そんなの、周りを見て自分で考えろ。
ひな   ・・・・・・(見渡す)何もないけど?
健司   もっと視野を広げろ。
ひな   もーむーりーーーー!
健司   一ノ瀬。これで大丈夫だ。
ひな   なに?

健司、鏡を渡す。

健司   自分自身の不甲斐なさをネタにしろ。その間抜け面でな。
ひな   酷いーーーーー!!!!
健司   こんなに沢山提案してやっているのに、酷いはないだろ。
ひな   そもそも!高坂さんの出してくるテーマがいけない!
健司   俺がいけない・・・と?
ひな   もう少し具体的なテーマはないの!?
健司   いいか、一ノ瀬。俺はな、面倒な事が嫌いだ。
ひな   言っちゃったよ、この人、今面倒な事とか言っちゃったよー・・・。
健司   お前が本当に書きたい物を書かなければ意味がない。
ひな   ・・・書きたい物書いてるわよ。
健司   そう思えないが?
ひな   そんなこと!
健司   それよりも、早く書け。今すぐ書け、意地でも書け、何があっても書け。
ひな   だから!ネタが浮かばないの!!なんか情報頂戴よーーーー!!!
健司   はぁ・・・テーマは人との繋がりだ。
ひな   人との繋がり?
健司   今のお前が書く話は、登場人物の個性が足りない!見て、話して、感じてこい。
ひな   え?ええ???
健司   今回は特別サービスだ。個性ありすぎる人物を紹介してやる。
ひな   え?ちょ、ちょっとまってよ!!高坂さーーーん!!!












第二章   看護師助手

井上   皆さん、おっはよーーー!!え?もう午後だって??何言っているのよー、今日初めて会えば、おはようなのよ!
    朝じゃないから違うって?もー、正論ばっかり言ってたら、冗談だって言えなくなるわよー。もっと気楽に構えましょうよ!

沙希、登場。

沙希   井上さん、相変わらず元気ですね。
井上   佐野さん、おはよー!
沙希   おはようございます。
井上   今日もお見舞いですか?
沙希   はい。
井上   ここまで来るの大変でしょ?
沙希   妹の事を思うと、大変とは思わないです。一日でも多く一緒にいてあげたいので。
井上   優月ちゃんも、いいお姉さんを持って、幸せよねぇー。
沙希   (微笑む)
井上   今検査中だから、ちょっと休憩室でお茶でも飲んで待たない?
沙希   でも、井上さん、お仕事・・・。
井上   それも、仕事の一つ!!ほら、遠慮せず!!

ひな、健司登場。

健司   井上さん。
井上   あらやだ!高坂さんじゃないですか!!
ひな   え?知り合い?
井上   こちらの子は?
健司   この前、お話したへっぽこ小説家ですよ。
ひな   違います!一ノ瀬ひなです。よろしくお願いします。
井上   宜しくねー。
沙希   ひなちゃん、よろしく。高坂さん、この間はありがとうございました。
健司   いえ、こちらこそ、ご丁寧に井上さんのところまで案内して頂き、大変感謝しています。
ひな   ちょ、ちょっと高坂さん!
健司   なんだ?
ひな   うっわ、私に対してはそういう態度なんだ・・・。
健司   何か不服でもあるのか?
ひな   ないわよ!それよりも、私、話についていけていないのだけど?
健司   お前は、ここに来る前に俺の話を聞いていなかったのか?
ひな   聞いていたけど・・・。
健司   申し訳ない。なんせ、まだ駆け出しの小説家なもので、至らない事ばかりですが、よろしくお願いします。
井上   どーんときなさい!!とりあえず、皆でお茶にしましょう!
沙希   そうですね、一緒にお話ししましょう。
健司   というわけで、一ノ瀬、有力な情報を入手するまで戻ってくるな。
ひな   え?高坂さん、どこいくの?



健司   お前と違って、俺は忙しいんだ。
ひな   え?ちょ、高坂さん!?

健司、退場。

ひな   まったく、なんなのよー!!
井上   さ!いっくわよーーーー!!!!

井上、退場。

ひな   あ・・・いっちゃった・・・。
沙希   井上さん、いつもああいう感じだから、なれてね。
ひな   が、頑張ります・・・。あの・・・高坂さんとは、どういったご関係なのでしょうか?
沙希   え?私??
ひな   はい。
沙希   先週、この病院にいらした際に、具合の悪くなった妹を介抱してくださって。その時に、井上さんを探していたので、案内しただけですよ。
ひな   そうだったんですか?!てことは・・・個性ある人って、井上さんの事?うーん・・・。
沙希   何のことか、よくわからないけど、この病院については、井上さんに聞くのが一番いいわよ。
ひな   なるほど。
井上   (声のみ)ちょっとー!早くきてよー!!
沙希   はーい!さ、行きましょう!
ひな   あ、は、はい!

沙希、ひな退場。
別の場所から、井上登場。それに続いて、ひな、沙希登場。

井上   ここはね、大自然に囲まれた病院。空気がとってもおいしくて、心もホッと落ち着くの。沢山の患者さんが来るけど、どこか、
    笑顔があふれる、そんな病院。噂では、この病院の事を、「最期の時を過ごす場所」という人もいるみたい!
ひな   最後の時を過ごす場所・・・?
沙希   山の奥にあるから、誰にも知られず、その時を待つ場所ともいわれているみたい。
井上   ま、あくまで噂だからねぇー。ここに来る人は、色んな事情を抱えている人も、少なくないからね。
ひな   そうなんですね。
沙希   疲れた?道も複雑だから、ここに来るの、大変だったでしょ?
ひな   凄く大変でした。と言っても、運転手は私じゃないから、疲れもありませんが。・・・って、あれ?まって!
沙希   どうかした?
ひな   ・・・私、どうやって帰ればいいの・・・?
井上   あははは!間抜けな子ねぇー。
ひな   笑いごとじゃないですよ!
沙希   ・・・多分、ああは言っていたけど、待っていると思うわよ。
ひな   それはないです。高坂さん、絶対私を置いて帰りましたよ!
井上   だったら、このままこの病院に泊まればいいじゃない。
ひな   え?いいんですか?
井上   私のお手伝いをしてくれたらね!
ひな   私にできますか?
沙希   ダメとなると・・・野宿・・・。
ひな   ・・・・・・それは嫌ですーーーー!!!!
井上   もー、うるさい子ねぇー。
ひな   あなたに言われたくないです!
井上   で?私に用事があるんでしょ?
ひな   ・・・なんというか・・・。多分、情報収集?
井上   多分って・・・。
沙希   高坂さんからは、何も聞いてないの?
ひな   なにも・・・。ん?あ、個性的な人を紹介するって聞いただけです。
沙希   それで井上さんか。
ひな   みたいですね。あ、そうだ!
井上   何?
ひな   この病院って、何か他と違うのですか?
井上   そうねぇー、特に、やっていることは変わらないのだけど、屋上から綺麗な星が見れたり、好きな時にお見舞いが出来たり、
    結構サービスはいいかもしれないわねぇー。
ひな   星!?
沙希   もしかして、星好きなの?
ひな   はい!えっと、夜見ても大丈夫ですか??
井上   ええ、大丈夫よ。屋上に行けば見れるからね。あ、さきちゃん、そろそろ妹さん、検査終わる時間よ。
沙希   本当ですか?それじゃぁ、行かないと。
井上   また、お茶飲みましょう。
沙希   そうですね。今度は、ゆっくりと・・・それじゃぁ。

沙希、退場。


ひな   仕事頑張らないとな・・・。ちゃんとやらないと、高坂さんに怒られます。
井上   厳しい人なのねぇー。
ひな   そうなんですよ。なので、ネタになるような情報をくださいよー!
井上   ネタって・・・そんな大したネタは持っていないわよ。
ひな   いや、そこをなんとか!!
井上   だから、持っていないって!
ひな   井上さんの事、付け回していればいいですか?カタモミすればいいですか?何したら、教えてくれますかーーーーーー!?
井上   あ、仕事に戻らないと。
ひな   ちょっと!逃げないでください!!
井上   あー、忙しい忙しい。
ひな   さっきまでお茶していたじゃないですか!ちょっと、待ってください!!

ひな、逃げるように出ていく井上を追いかける。





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