あの味をもう一度
-本当の最後の晩餐-
あの味をもう一度―本当の最後の晩餐―

〇店主・・・天国食堂の店主
〇近藤・・・火災で死亡したサラリーマン
〇白咲・・・バイクで交通事故死した女
〇安達・・・職場でいじめに遭い自殺した女

 食堂。テーブルを拭くなど店の準備をしている店主。前掛けをしている。
 近藤が店に入ってくる。

近藤:あのー、もうやってますか?
店主:はい、大丈夫ですよ。お好きな席に座ってくださいね。
近藤:ありがとうございます。

 テーブル席に着く近藤。水を持ってくる店主。

店主:それじゃあ少しお待ちくださいね。
近藤:え?まだなにも注文してませんけど?メニューとかないんですか?
店主:うちにメニューなんてありませんよ?
近藤:どうしてですか?ここ食堂でしょ?メニューがないってどういうことですか?
店主:うちはお客様が今一番食べたいものを提供する食堂なんです。だから注文を
   取る必要がないんです。
近藤:はぁ?今一番食べたいものが勝手に出てくるんですか?どうして分かるんですか
   そんなこと!
店主:どうしてって言われましても...。そういうシステムになってますので...。
近藤:責任者の人いないんですか?どういう経営方針なのか説明してもらいたいです。
店主:はぁ、少々お待ちください。

 一度はける店主。少しして再び出てくる店主。

店主:...。
近藤:なに?店長さんいないの?
店主:私です。
近藤:あんたかよ!なんで一度奥に行ったんだよ!
店主:もしかしたら他にいるかと思いまして。
近藤:いると思うなよ!自分が店長なんだから。
店主:すみません。
近藤:てか他の従業員は?
店主:誰もいません。私一人でやっています。
近藤:一人で店やってんの?接客から厨房まで?
店主:はい。一人で経営するシステムになっています。
近藤:はぁ...。

 席を立つ近藤。

店主:どうしました?
近藤:帰ります。もっとちゃんとしたところで食べたいので。

 帰ろうとして扉に手をかけるが開かない。

近藤:あれ?なんだこれ?
店主:お客様。一度お店に入ったら食べるまで出られませんよ?
近藤:どういうことだよ!こんなことして許されると思ってるのか?
店主:そう言われましても。一度お店に入ったお客様は食べるまで出られない
   システムになってますので。
近藤:誰が決めたんだよ!
店主:さぁ。誰が決めたかは教えてもらえないシステムで―。
近藤:システムシステムうるせーな!
店主:すみません。
近藤:こんな店入るんじゃなかった...。
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