天使と悪魔のお仕事

(てんしとあくまのおしごと)
初演日:0/0 作者:雪村二葉

 
      夕方。
      学校の屋上。
 
      一人の男子高校生(以下「少年」)が現れる。傷だらけ。制服も汚れている。
      少年はのそのそと柵の方へ寄っていくと、柵から少しだけ身を乗り出し、下の様子を伺う。
 
少年 よし。これならいけそうだ。
 
      少し柵から離れて、靴を脱いで、靴を揃えて、その上に白い封筒(表に「遺書」の文字)を置く。
      再び柵へ。
      その間に二つの陰が少年に近づいてくる。天使と悪魔。
      天使は少年を見つける。
      
天使 いたよ!
悪魔 こら、大きな声は出しちゃダメだって。人間に気付かれる。
天使 別にいいじゃん。あたしたち、人間には見えないし、声は聞こえないんでしょ?
悪魔 でも、閻魔様に気を付けろって……
天使 分かってるって!
 
      わくわくしながら少年に近づく天使。
 
悪魔 こら!
天使 大丈夫、大丈夫!
 
少年を間近で見ている天使。
     少し離れた物陰で様子を伺う悪魔。
少年は二人をはっきりと認識しながらも、あまり気にしないようにしている。
 
      身を乗り出す少年。さっきよりも大きく。
 
天使 (興奮気味に)おお! おお!
悪魔 しーっ!(「静かに」という意味)
 
      少年はやっぱり二人のことが気になるが、気にしないようにする。
      柵を乗り越えてそこに立つ。
 
天使 とうとう来るよ……!
 
      息を吸い込む少年。飛び降りを覚悟している。
      もう一度息を吸ったときに前を向く。飛び降りる覚悟完了。
 
天使 よし! 行っけー!
少年 ……ああ、もう! うるさいな! なんなんだよ、さっきから!
悪魔 (あの野郎、やっちまったよ……)
 
      呆然とする天使。
 
少年 天使みたいな格好して悪魔みたいなこと言いやがって! お前、いったい誰なんだよ! そんなおかしな格好して、僕を笑いにきたのか? だったら早く帰れ!
 
      少年は一人の空間を邪魔されて怒っている。
      しかしそれどころではない天使。驚き過ぎて呆然としたままである。
 
少年 ね、ねえ……ちょっと? 話、聞いている?
天使 ………………
少年 もしもーし。
    
      悪魔が陰から出てくる。
      天使を連れて帰る。
 
悪魔 ほら、行くよ。だから言ったのに……
天使 に、に、に……
悪魔 (少年に)あ、すみません。お邪魔しました。自分らはここから立ち去るんで、どうぞお気になさらず。
天使 人間がしゃべったあああああ!
悪魔 全く閻魔様の話を聞いてないんだね。呆れた。
天使 聞いてるよ、ちゃんと! あたしたちの姿は見えないって……
悪魔 それには例外があるんだとも言ってたよ。ほら、いったん帰るよ。
少年 えっと……
悪魔 ほんと、すみません。もう邪魔しないので。ほんと、気にしないで……
少年 え、ちょっと待ってよ!
 
      足を止める天使と悪魔。
 
少年 名前くらい教えてよ。
天使 冥途の土産に?
悪魔 こら。
少年 ……名前知らないで帰られたら、気持ち悪い。
天使 変なの、死ぬ直前なのに。
悪魔 こら、いい加減にしなさい。
天使 ……はい。
悪魔 (少年に)自分たちは、まあ、見ての通りというか、人間じゃない者です。
 
      少年は二人の恰好をまじまじと見る。
 
天使 えー、分かんない? さっき答え自分で言ってたんだけどなあ。
少年 もしかして……本当に天使なの?
天使 だいせいかーい! あたしは天国から来た天使ちゃんだよ!
少年 (悪魔をまじまじと見て)……あなたも?
悪魔 あー……自分は、天使じゃなくて……
天使 なんだと思う?
 
      天使はこの状況を楽しんでいる。
      少年は考える。

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