カミヒトエ

(かみひとえ)
初演日:0/0 作者:ハシモトアヤ
カミヒトエ
 
 【登場人物】
 健一(男)
 京子(兼・美奈子)(女)
 狛犬:朱(あき)
 狛犬:緑(ろく)
 北野(吉田)幸(女)
 吉田(男)
 
 
    舞台中央には鳥居
    そこから健一と京子が登場
 
 健 新年早々、なんでおまえの初詣なんかに付き合わなきゃいけねーんだよ。
 京 なに?その言い方!私がせっかく誘ってあげたのに。
 健 誘ってあげた、だー?
 京 そうよ。インフルエンザで家族に置いていかれちゃったあんたを初詣に誘ってあげたの!
 健 べつに初詣なんていかなくてもいいし、行きたかったら一人で行くし。
 京 またー意地はっちゃってさ!
 健 は?い、意地なんてはってねえから!
 京 健一って、わかりやすいよね。
 健 どこがだよ!
 京 あ、そうだ!さっき引いたおみくじ、健一の見せてよ!
 健 あ?・・・いいよ。
 京 え!?大吉じゃん!!すごーい!!
 健 そ、そうか?
 京 いいなー!!なんか、大吉とか、新年か     
   らテンション上がっちゃうね!
 健 お前、もうちょっと静かにしたほうがいいと思うぞ。あそこの家のおばさんからまた苦情くるから。
 京 ・・・そうだった。人嫌いの北野さんでしょ?
 健 そうそう、北野ばばあ。この前は小学生に怒鳴ったらしいぜ。
 京 え、こわっ。
 健 な。たまーにこの神社の掃除してるのは見かけるけどよ。
 京 北野さん、この近くに住んでいるから、掃除当番なのかも。
 健 まじかよ。
 京 だから、夏祭りの係でもあるんだけど、秋祭りだけは毎回、ぜっったい顔を出さないんだって。
 健 はあ?サボりじゃん。最低だな。
 京 でも、なんでそこまで偏屈なんだろ?
 健 さあな。
 京 そんなことよりさ、すごいじゃん?大吉!よかったね〜!
 健 そんなにすごいか?
 京 うん。だって見てよ!学問?の運以外、全部「安心せよ、すべて思い通りゆく」だって!!
 健 ウソくせぇ。
 京 私なんか毎年末吉。まあ、平和でいいけどさ。ね!あそこの枝に結ぼう。
 健 めんどくせーけど、持って帰っても仕方ねえしな。
 京 どこに結ぼっかなー。
    京子、木を見つけ、はける
 健 ・・・のんきだな、あいつは。・・・はあー。大吉か。当分思い通りになんかなんねえよ。恋愛運、「安心せよすべて思い通りゆく」んなわけねえよ。じゃあどうにかしてくれっての。
 
    鈴の音
 
 健 ん?・・・雪だ。
 京子戻ってくる
 京 健一!雪降ってきたよ!!早く結ばないと木に雪積もっちゃうよ〜?ねえ・・・健一?
 健 おまえ、せかせかしすぎなんだよ!ちょっとは落ち着け。
 京 健一?
 健 ん?京子?
 京 健一!どこにいるの?・・・隠れて私のこと脅かそうったってそうはいかないから!
 健 はあ?おまえこそまるで俺が見えないみたいにふざけてんじゃねえぞ。
 京 ・・・ほんとに帰っちゃったのかな。
 健 え・・・。
 京 ひどい。嘘でしょ。
 健 はっ?!な、泣くなって!!やばいやばいやばいやばい。
 京 健一!!隠れてるなら返事してよ!!・・・もーバカーーー!!!
 
 京子叫びながらはける
    健一、京子を止めようとするが触れることが出来ない
 
 健 ええええ?!どっどうなってんだ?まるで俺、透明・・・・・・。まさか!!
 
 健一、家に向かう
 
 健 ただいまー!!あ、兄ちゃん!俺・・・兄ちゃん?お、おい。あ!母ちゃん!!なんかさ、今日みんな変なんだ!俺のこと見えないみたい・・・。母ちゃん・・・?
    間
 健 ウソだろ・・・まさか本当に、俺誰にも見えてないわけ?は??どうすんだよ!
   なんで?いつこうなったんだ?俺しんじまったのか?
    ちょっとの間考える
 健 いや、俺たぶん死んでないな。夢だこれ。
 なーんだよー夢かよー。妙にリアルな夢だな。ま、透明人間になっちうなんて一生に一度あるかないだもんな。やってみたいこと出来るチャンスじゃね?
 まてよ・・・。「安心せよ、すべて思い通りゆく」ってこのことか〜?!
 ひゃっふーい!!
 
 健一、思い思いのやってみたいことを次々とやる。
 
 健 金もいらねえ、だれにも怒られねえ、警察にもつかまらねえやりたいことやーりほーうだーい!!
 
 健一、はける
   狛犬登場
 
 朱 やっと、当たったか。
 緑 やっとじゃのう。
 朱 しかしながら、危うく結ばれるところだった。緑、さすがだな。
 緑 だてにお主より長く生きておらんわい。人の意識など簡単に抜き出せる。
 朱 それにしても、あのような信仰心のない無礼者に当たるとは。
 緑 仕方がなかろう。わしも心配だが、主がお決めになったことじゃ。なにか縁があるのじゃろ。
 朱 ・・・そうだな。仕方がない。とりあえず当たったのだ。やっと。
 緑 やっと、変えられるかもしれんの。
 朱 それまで待つとするか。
 緑 やがては気づくじゃろ。
 朱 自分がどこに行くべきなのかを。
 
 狛犬、勢いをつけて飛び跳ねる、と同時に暗転
 
 健 やばいぞ・・・。なんか変だ。夢なのにぜんっぜん覚めねえ。てか、夢ん中で夢って気づくことってほとんどないし、たいてい気づいた時点で目覚めるよな。
 さすがにこんなに無視されつづけると、すげー傷つくしな。・・・ほんとに俺、生きてんのか・・・?なんでこんなことになったんだっけ?
 そうだ。あのときだ。
 
    健一、神社に駆けていく
 
 健 (息が切れている)こ、ここで、あいつと、京子とおみくじを引いて、それから、あいつが結びに行って、俺が、見えなくなったんだ。そのとき・・・何が起こったんだ?俺、階段から落ちたとか?いや、そんなことするほど、俺トロくねえしな。
 ・・・!そうだ、ゆ、
 
 鈴の音
 一瞬、暗転
 
 朱 雪がふってきたのだ。
 緑 ほろりほろり
 
    明転
 
 健 え?・・・雪?・・・・・・ううううわああああああ!?
 朱 うるさい奴だ。
 緑 威勢がいいのう。
 健 え?誰?てか、コスプレ?え?てか、俺のこと見えんの?え?夢?
 朱 よくもそんなに次々と問えるものだ。
 緑 口が達者なのじゃな。
 健 はっ・・・?
 緑 ちと落ちつけ。
 健 夢?
 朱 嗚呼、これだから信仰心のない人間はいやなのだ。すぐ、夢、夢などと。
 緑 それならそれでいいのではなかろうか?夢だと思わせておけば、事は容易く進むじゃろ。
 朱 ・・・そうするか。
 健 あ、あのー
 朱 いいか、よく聞くのだ。
 健 へ?
 朱 健一、お主は選ばれた。今から我らの言うことに従い、どうか我らの願いをかなえてはくれないだろうか。
 健 なんで俺の名前知ってるんだよ。てか、願い・・・?
 緑 そうじゃ。見事、わしらの願いをかなえられたら、飛び切りの運勢をお主に与えよう。
 健 マジか!え、でもかなえられなかったら、どうなんだよ?!このままか?!
 朱 いいや、そのようにするつもりはない。すべてが終わったら、結果がどうあれ、お主はもとの生活にもどしてやろう。
 健 よ、よかった〜!!!
 朱 しかし、今回お主の引いた大吉は返してもらう。
 健 え、んじゃ何吉になんの?
 朱 平凡な運勢のものだ。
 健 まあ、それならいっか。
 朱 やる気がないようだな。いっそのこと、凶の運勢にするか?
 健 い、いや!がんばるからさ!凶は勘弁してくれよ・・・。
 朱 考えておく。
 緑 ほっほっほ。
 健 て、てかさ、まだ俺の質問に答えてもらってねえんだけど。あんたら誰?なんで俺がみえんの?
 緑 わしらは、この社の狛犬じゃ。
 朱 名は、朱という。
 緑 緑じゃ。
 朱 お主を人から見えなくしたのは我らだからな。術をかけた側は見えるに決まっている。
 緑 なにより、わしらは人間ではないからのう。
 健 ・・・。
 朱 そんなこと言っても、最近の人間は信じないのだろうがな。
 健 いや、信じるよ。
 緑 意外じゃの。
 健 いや、普通は電波な人だとしかおもえねえけどさ、俺自体が今変な状況だし、そんなこともあんのかもしんない。
 
 狛犬、目を見合う
 
 緑 おお、お主、話がわか・・・
 健 でも!
 朱・緑 ?
 健 なんで、俺なんだ?あれか?裁判員制度みたいなもんか?あと、もとの生活に戻すってのは、みんなに認識してもらえるんだよな?あと、おまえらの願いってなんだよ?世界を救え、なんてレベルだったら、ガチで無理だかんな?
 朱 お主、見た目よりずっと慎重な人間なのだな。
 健 俺は見た目から慎重そうだろ!!
 緑 はて?
 朱 そして、お主、見た目に反して単純ではないのだな。
 健 俺は見た目から複雑そうだろ!
 緑 はて?
 健 お前ら・・・。
 朱 そうだな、好奇心旺盛なお主の問に答えているのも面倒だ。
 緑 そうじゃの。
 健 おい・・・。
 朱 こうしよう。
 緑 そうしよう。
 
    狛犬、扇子を広げて一回転
    突如強風、
 
 健 うわっ!!!
 
 狛犬動きが止まる
 蝉の声
    美奈子、吉田登場
 
 緑 いつか、わしらに名前を付けた娘があった。
 美 いつも町を見守ってくれてありがとう。朱ちゃん、緑ちゃん。
 吉 名前をつけたのか。しかし、どういうわけで朱と緑なんだい?
 美 だって、モミジがそばにあるから。夏は緑、秋には赤くなるでしょう?この神社は、モミジの紅葉がとてもきれいだし。
 吉 なるほど。そういうわけか。ただ、落ち葉の掃除はたいへんだけどね。
 美 そういう風情のないことは言わないでよね!
 吉 あはは、失礼。
 美 それに、落ち葉の掃除は、近くに住んでるさっちゃん家がやってくださってるのよ。大変なんて吉田君が言えることじゃないわ。
 吉 まあね、幸さんには感謝しているよ。
 美 吉田君って、いつもなんか嘘くさいわ。
        幸、登場
 幸 本当にね。
 美 あ!さっちゃん!待っていたのよ!
 幸 ごめんなさい、少し、準備に手間取ってしまったの。
 吉 幸さんまでひどいや。僕はいつも本当のことしか言っていないつもりだよ。
 美 つもりなのね。
 幸 吉田君は口がうまいのよ。
 吉 そんなことないさ!
 美 じゃ、三人そろったし、いきましょうか!
 幸 そうね。今日は提灯の修理だったかしら?
 美 そうそう。あと一週間後だものね、夏祭り。楽しみだわ!今日も頑張ってお手伝いしましょう!!
 吉 ・・・。
    美奈子、はける
 美 二人ともはやく〜!
 幸 もう、せっかちなんだから。行きましょ、吉田君。
 吉 ・・・あと、一週間なんだね。
 幸 ええ。本人は隠してるつもりなんでしょうけど。バレバレだわ。あんなに空元気で振る舞われたら、こっちの方がしんどくなってきちゃう。
 吉 蔵の塚って、ここから遠いのかな。
 幸 ええ。汽車で十時間かかるってお父さんが言っていたわ。
 吉 そうか。でも、今は一緒にいられるんだ。夏祭りまで楽しくいこう。
 幸 そうね。・・・吉田君、みっちゃんがいなくなるの本当にさびしいのね。
 吉 そりゃ、寂しいさ。だって、小学校からのつきあいだからね。
 幸 つきあいね。本当に仲がよさそう。
 吉 でも、幸さんの方がよっぽど美奈子さんと仲がいいよ。親友なんだろう?
 幸 ・・・そうね。

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