我らが愛しのじいちゃん!

(われらがいとしのじいちゃん)
初演日:2016/3 作者:岡田昌悟
劇団 La Belle(ベル) Equipe(エキップ)



「我らが愛しの
じいちゃん!」


             

脚本・岡田 昌悟




登場人物

・高岡光(たかおかこう)司郎(じろう)(長男・堅太郎の息子。中3)

・高岡(たかおか)美(み)月(づき)(光次朗の姉。高2)

・佐那(さな)川(がわ)亮(りょう)(長女・聡子の一人息子。大2)

・加藤(かとう)俊介(しゅんすけ)(次女・美和子の一人息子。高1)

・高岡(たかおか)小百合(さゆり)(次男・卓哉の一人娘。高1)



一人二役です。兼ね役は次の通り。場合によっては演出家判断で変更も良し。

光司郎=卓哉
美月=佐和子
亮=祖父
俊介=堅太郎
小百合=聡子

祖父の役は交代で演じる(俊介の回想シーンは亮。亮の回想シーンは光司郎。等)



セットは、居間がメイン。客席側に縁側がある設定。
居間の中央には、掘りごたつ。生活感の漂う、ごちゃごちゃ感。



使用するタイトルバックの楽曲として、サザンオールスターズ「栄光の男」
十五年前。高岡家居間。照明は暗く、演者の顔は明確ではない。
    祖父は客席に背中を向け、座っている。堅太郎と卓哉、もみあっている。
    堅太郎、卓哉を殴り飛ばす。卓哉、縁側から外へ転げ落ちる。

堅太郎「とっとと出てけ!二度と……もう二度とこの家の敷居をまたぐんじゃない!」
聡子 「堅太郎兄さん!」
佐和子「とっとと出てけよ!」

    佐和子、靴を投げ飛ばす。卓哉、その靴を履き、黙って去る。

聡子 「佐和子!」
佐和子「聡子姉さんもよく平気でいられるわね!あんな奴…もう兄さんでもなんでも 
    ないわ…鬼よ!人の皮を被った鬼よ!」
堅太郎「あいつはもう高岡家の人間じゃない…いいな」
祖父 「………」

    聡子、佐和子を介抱する。

堅太郎「これからは、俺達と…俺達の子どもたちが高岡の一族だ…」

    照明が消えて、ホリゾントもしくはバトンに吊り物をし、そこにタイトル、
および、軽いあらすじ紹介。キャスト(スタッフ)ロールを投影する。
二〇一六年。春。高岡家居間。ウグイスの声で暗転が明ける。光司郎と亮がオセロをしている。盛り上がる両人。

亮  「よし勝った」
光司郎「大人げないなぁ…」
亮  「約束通りお前がじいちゃんの面倒見る」
光司郎「やだよ。介護なんて」
亮  「勝負に負けた方がじいちゃんの面倒みるってルール作ったのお前だろ」
光司郎「大学生がさぁ、少しは年下のいとこ相手にさぁ、負けてあげようとかいう優
しさはないの?」
亮  「そりゃ、小学生相手とかだったらまだそういう気にもなるけど、お前もう、
    中2だろ。そんな世の中……」
光司郎「中2じゃなくて中3」
亮  「受験生か」
光司郎「皆、そういうな、もう飽きたよ」
亮  「どこ行くんだ?」
光司郎「亮兄、そういうステレオタイプなことしか言えないの?」
亮  「普通だろ。こういう切り返しは。気になるし」
光司郎「なんも面白くないよ」
亮  「で、どこ行くんだ?」
光司郎「公立」
亮  「公立のどこ?」
光司郎「とにかく公立」
亮  「美月も…来年受験生だからな」
光司郎「お金かけたくないのよ…」

    美月、登場。

美月 「どっちが勝ったの?」
光司郎「俺ー(オセロの盤をめっちゃくちゃにする)」

    光司郎、はける。

美月 「ちょっと、光!ったく…」
亮  「変わらないな、光司郎」
美月 「どんどん、ひどくなってく一方」

    亮、微笑み、片づけを始める。美月、それを手伝う。ふと、手と手が触れる。

亮  「あっ、結局じいちゃんは?」
美月 「散歩じゃない?」
亮  「そのうち戻るか」
美月 「てか、なんで急に私達呼んだんだろ」
亮  「さぁ…」
美月 「今までこんなこと無かったじゃん」
亮  「美月の所には電話で?」
美月 「そう。おじいちゃんから電話なんて久々で」
亮  「そうか…」
美月 「ねぇ。なんだろう」
亮  「考えても見当もつかないから考えるのやめた」

    亮、その場に寝転ぶ。ウグイスの声。

亮  「あっ、アリ」
美月 「どこ?」

    美月、亮の横に寝転ぶ。

亮  「これ」
美月 「なにアリだろ?」
亮  「そんなアリの種類に詳しくないからなぁ」
美月 「はたらきアリ?女王アリ?」
亮  「えっ、そっち?」

    光司郎、戻ってくる。この様を見て、口を押さえる。

美月 「光?」
光司郎「ふぇ?」
美月 「おいで」
光司郎「なにも見てないよ?(口の中に何か入っている感じで)」
美月 「あんた、なんか食べてる?」
光司郎「食べてない(口の中になにか入っている感じで)」
美月 「あんた、まさか!」
光司郎「だから…(飲み込む)何も食べてないって!」
美月 「ちょっと!」

    美月、台所へ行く。光司郎、亮の隣に寝転び、亮に抱きつく。

亮  「何?」
光司郎「いいからいいから」
亮  「はたらきアリかな…」
光司郎「お前ら時給いくらなんだ?」
亮  「というか、こいつら資本主義じゃないだろ?」
光司郎「えっ?」
亮  「社会主義っぽいよなぁ…」
光司郎「さすが、経済学部」

    美月、戻ってくる。

美月 「光!冷蔵庫のメロン……ちょっと何……」
亮  「姉ちゃん、アリは社会主義なんだって」
美月 「えっ?なに、意味分かんない」

    亮、どことなく寂しげにアリを外に逃がしてやる。

光司郎「あぁーあ」
美月 「なに?」
光司郎「別に」
亮  「(なんともいえない表情)」
美月 「つか、メロン食ったでしょ!」
光司郎「えっ?(本当に食べてないという感じで)」
美月 「(口の周りの匂いを嗅いで)とぼけないで、なにこのメロン臭は」
光司郎「そんな加齢臭みたいに言わなくても」
美月 「食べた後あったし!」
光司郎「一口だけじゃん」
美月 「後でおじいちゃんに謝んなよ」
光司郎「うるさい、このウンコ」
美月 「もっとオブラートに包なさい」
光司郎「えっ、ウンコをオブラートに包むの?良い趣味してるー」
美月 「あぁっ!もう、うざい!」
光司郎「てか、俺達に用意してくれてたんだろ。じゃあ一足先に食べたっていいじゃんか」
亮  「礼儀ってもんがあるだろ。ちゃんと、いただきますと言ってから食べるのが礼儀っていうんだよ」
光司郎「亮兄……(まじまじと見つめ)合コンとか行ってもモテないでしょ」
亮  「モテるに決まってんだろ…」
光司郎「中高年に?」
亮  「氷川きよしか、俺は」
光司郎「いや、どっちかって言ったらきみまろじゃない?」
美月 「というか、私達にじゃないかもしれないの」
光司郎「えっ!?」
美月 「6切れ入ってたのよ」
光司郎「俺と姉ちゃんと亮兄…とじいちゃんの分だろ」
美月 「それじゃ4切れでしょ?」
亮  「余りなんじゃ?」
美月 「でも、おじいちゃん…」
亮  「あっ!」
美月 「うん…」
光司郎「そうだ!分配の帝王!」
美月 「どんなものでも皆で均等に分配しなくちゃ気がすまないって人だから」
亮  「それに、じいちゃんがよそうご飯は必ずご飯粒の数が8888個なんだよ」
光司郎「末広がりにも程がある」
亮  「そんなじいちゃんがメロンごときを余らすはずがない」
光司郎「ついに老化か?」
美月 「だから、私達のじゃないかもしれないってこと!」
光司郎「じゃあ、何用?」
美月 「知らないわよ、一緒に住んでるわけじゃないんだから」
亮  「そうだよな、一緒に住んでるわけじゃないから分かんないよな」

    インターホンが鳴る。

美月 「光!」
光司郎「なに」

    美月、光司郎を顎で指図する。

光司郎「やだよ。俺、人見知り」

    亮、黙って玄関に向かう。

光司郎「亮兄に行かせんなよ」
美月 「あんたが行かないからでしょ」
光司郎「てか、いとこ同士じゃなかったらねぇ…」
美月 「別に…法律上いとこ同士でも結婚はできますから」

    玄関から、俊介の声がする。

俊介 「じいちゃーん!来ったよー!」
亮  「おう」
俊介 「あれ!?兄(あにぃ)じゃん!」

    亮、俊介、居間に入ってくる。

俊介 「おぉ!変わってねぇ!この匂い…(深呼吸する。壁の吉永小百合のポスターを見つけ)それに、吉永小百合!」
光司郎「俊介!」
俊介 「お前らも!?」
美月 「私達だけじゃなかったの?」
亮  「この調子だとそうみたいだな」
俊介 「いやぁ、久しぶりだなぁ、もー。去年の正月以来?あれ、美月、髪切った?」
美月 「まぁね」
俊介 「ちょっと見ないうちに大人っぽくなっちゃってー。ねぇ、美月、名古屋の女子高生紹介してよ!名古屋のJKってみんなスカート短いじゃん!お友達になりたいなぁ…なんて」
美月 「おあいにくさま。あんたみたいなチャラついた男にか紹介したくありません。てか、私の方が一つ上なんだから敬語使いなさいよ(冗談っぽく)」
俊介 「いとこ同士なんだからさ、そんな良いじゃん」
光司郎「俊介もじいちゃんに呼ばれて?」
俊介 「(急にクールになって、光司郎の肩に肘をかけ)俺の方がなんやかんやで1つ年上だろ」
光司郎「なんやかんやって」
俊介 「(まだクールに)高校生には敬語使えよな、中坊」
光司郎「でも俺、早生まれだから年は一緒…」
俊介 「ところで!俺、聞いてないよ?皆揃うなんて」
亮  「俺達もだ」
俊介 「一週間前にメール来てさぁ」
美月 「おじいちゃんから!?」
俊介 「そうだよ」
美月 「おじいちゃん、メールなんか出来るの?」
俊介 「LINEもやってるよ」
一同 「えぇー!」
俊介 「ID教えようか?」
亮  「というか、ケータイなんかもってたのか……」
光司郎「そういや、持ってたな」
俊介 「最近、スマホに変えたんだよ。年寄り用のらくらくスマホ?とかいうのに」
美月 「美和子さんがプレゼントでもしたのかな?」
俊介 「うちの母さんがそんな事するわけないじゃん」
美月 「だって、前のケータイは美和子伯母さんがあげたやつでしょ?」
俊介 「なんかスマホは自分で買い替えたみたいだよ」
亮  「そんな華奢なじいちゃんだったかな…」
美月 「なんか色々ありすぎて怖いわ……しかも今までこんなことなかったでしょ?いとこだけで集まるなんて」
俊介 「あれ?叔父さんたち来ないの?」
亮  「来ないよ?」
俊介 「えっ?俺はてっきり来るもんだと」
美月 「私たちだけ」
俊介 「これはまた珍しいな!」
光司郎「なんかあるな!これは!」
俊介 「ところで肝心のじいちゃんは?」
光司郎「多分、散歩。いつもの杖と帽子が無かったし」
俊介 「あぁ…」
光司郎「LINEしてみたら?」
亮  「それより電話した方が早いだろ」
俊介 「さすが、兄。言う事が違うねぇ」

    俊介、電話をかけに行く。

亮  「変わらないな。あいつも」
美月 「変わらないもの見るとなんか安心するなぁ……」
光司郎「やっぱ、メロンは俺らのじゃない?これで数合うんじゃないの?」
美月 「おじいちゃん入れても5よ。6あるんだから」
亮  「もう一人…」
光司郎「でも、孫はこれで全員集合だろ。やっぱ、分配の帝王も老化が進んでおるのですよ」

    光司郎、俊介の元に行く。

俊介 「(電話口で)じいちゃん?今、みんな揃ってるんだけど。どこにいんの?おぉ、うん…それは何?えっ?だから、何用の?はいはい、了解了解。伝えとくー」
光司郎「(電話口に向かって)じいちゃん!冷蔵庫のメロン食べてもいい?」
俊介 「(電話口に)うん。はーい。はいはーい。じゃね」
光司郎「なんて?」

    俊介、電話を切る。

俊介 「食べていいって。んで、なんか散歩行ってたら、松岡さん?にばったり合って、なんかそんで松岡さんの車に乗せてもらってちょっと花買いに行く事になったんで、あと四〇分くらいかかるって」
美月 「松岡さん?」
俊介 「あの、胡散臭そうな、中年太りで妊娠6か月みたいなお腹したおじさん」
美月 「で、お花を買うって?」
俊介 「お墓と仏壇に供える用だって」
光司郎「やっぱ、あのメロン俺達のだったんだな!ねぇ、美月姉ちゃん!」
美月 「うん…」
光司郎「残りの一個はあれだよ。おばあちゃんにだよ」
美月 「仏壇にお供えする用ってことか…」
亮  「でも、まぁあと四〇分くらい待てよ。メロンは逃げないし」
俊介 「メロンあんの?」
光司郎「冷蔵庫に」
俊介 「おし、ちょっとトイレ…(光司郎に目配せ)」
光司郎「俺も…」

    俊介と光司郎、はける。

美月 「2人いっぺんになんて入れないでしょ!ちょっと!」

    美月、はける。亮、窓を開けて外を見る。ウグイスの声が聞こえる。
    瞬間、小百合が居間の様子を伺う。戻ってくる3人に気付き、はける。

光司郎「食べないから、本当にトイレ行かせてよ」
美月 「本当ね」
光司郎「本当」
美月 「行ってらっしゃい」
光司郎「行ってきます」

    光司郎、はける。ウグイスの鳴き声。

俊介 「ウグイスだ…」
美月 「この辺は全然、変わらないねぇ…」
亮  「山と川とたんぼしかないけどな…」
俊介 「それが、たまにくると癒されるんだよ」
亮  「お前、その格好で自転車で来たのか?」
俊介 「うん」
亮  「電車でくりゃ良かったのに」
俊介 「1時間に1本だろ。それよりは、サイクリングがてらこようと思って、2時間半かかったけど。(亮と美月の呆れ顔にも気づかず)お3人さんは?」
美月 「亮兄の車に乗せて来てもらったの」
俊介 「えっ!あのベンツ!?亮兄、ベンツなんか乗ってんの?」

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