オレンヂニュートリノ

(おれんぢにゅーとりの)
初演日:0/0 作者:岡田昌悟







「オレンヂニュートリノ」





脚本・岡田昌悟








キャスト

諸星 哲夫

諸星アンヌ
     諸星 夕子

     霧山 昭二

     古橋 伊吉
     蘇我 信介
     天城 敏
       カミオカンデの研究員たち


     実相寺浩子


         実相寺 一



※時代設定を何年にするかによってシナリオ内の年号などは自由に変えてください。2011年の震災からある程度時間が経った日本のお話に。
 
岐阜県飛騨市神岡鉱山内の地下1,000m。そこにはかつて日本だけではなく世界各国の科学者たちが集まった。しかし、この施設はその役割を終えようとしていた。新たな光電子増倍管の発明により新施設が建造され、そこに観測の全機能が移管されることとなった。この施設が稼働を開始して25年。科学の進歩とともに老朽化した施設はその役目を終える。その施設こそ、スーパーカミオカンデ。その役割は大宇宙を漂い、今現在も我々の身体を貫いている超微粒子ニュートリノを観測することであった。
常に我々の身近にありながら、いまだかつて誰も見たことがない存在。まるで、神のような。
    
山口百恵「さよならの向う側」のメロディが流れる。
    波の音と共に幕がゆっくりと上がる。

    諸星、アンヌ、夕子、浜辺で星空を見上げている。

夕子 「ねぇ、お父さん。あれ北斗七星でしょ」
諸星 「よく知ってるな」
アンヌ「勉強したもんね」
夕子 「お父さんはお星さま調べるお仕事してるんでしょ」
諸星 「正確にはお星さまのあるところから降ってきてるものを調べるお仕事だよ」
夕子 「流れ星?」
諸星 「まぁ、そんなところかな」
アンヌ「ニュートリノっていうのよ」
夕子 「鳥?」
諸星 「ニュートリノは今も空からずっと降ってるんだよ」
夕子 「そんなはずないよ。だって見えないよ」
諸星 「目に見えないくらいずっとずっと小さなお星さまなんだ。だから夕子の身体をスゥーっと通り抜けちゃうんだよ」
夕子 「お父さんのウソつき!だって見えないじゃん!つかまえてきてよ、お父さん。そのなんとか鳥、つかまえて夕子に見せてくれたら信用してあげる」
アンヌ「まぁ、いつからこんなに口が達者になったのかしら」
諸星 「お前に似たんだろ」
アンヌ「夕子、いつかお父さんが見せてくれるわよ?ねぇ?」
諸星 「無茶言うなよ。ニュートリノはどう頑張っても人間の目には見えないんだよ」
夕子 「ねぇ、そのニュートリノって何色なの?」
アンヌ「そうね…きっと綺麗なオレンジ色よ。夕焼けを瓶に詰めたみたいな。綺麗な色」

蝉しぐれ。山間地の田舎の真夏。扇風機の風が心地良い。諸星、畳の上に寝かされている。浩子が頭の水枕を換えてやると、目覚める。

諸星 「アンヌ…」
浩子 「お気づきになりましたか」
諸星 「誰だ」
浩子 「すみません。婆で。ついさっきお医者様を呼んで診てもらったけど、軽い日射病らしいで、ほら、麦茶ですけど飲んだほうがいい」
諸星 「………」

    諸星、無言で飲み干す。

浩子 「おかわりはいくらでもあるで。遠慮せず。なにもない家だけど茶だけはたんまり」

    浩子、言いながら部屋から去る。
    なおも蝉しぐれ。時折、風鈴の音。一が帰宅する。浩子、音だけで帰宅が分かる。

浩子 「お帰りなさい。諸星さん、お目覚めになりましたよ」
一  「おぉ、そうかい…お気づきですか」
諸星 「あの…ここは……?」
一  「カミオカンデの掃除をやっとるんです。神岡村シルバー人材センターの紹介で。この年でも仕事がもらえるで助かっております」
諸星 「あ、研究所の清掃係の…」
一  「はい。神岡村シルバー人材センターに登録しております実相寺一89歳です」
諸星 「これはご丁寧に…諸星哲夫です」

    浩子、戻ってくる。

浩子 「あんた、90になったでしょ、先月役所の人がお祝い持ってきたじゃないの」
一  「あぁ…あれはワシの誕生祝いか?」
浩子 「だからそうやって写真も撮って、ほれ、今月の広報。諸星さん、広報におじいさん載ったんですよ」
一  「これカメラマンの腕が悪いでいかん。もっと男前だよ。実物はー、ねぇ?」
諸星 「あの…すみません。そんなことはどうでもいいので…それで…ここは?」
一  「私の家です」
諸星 「なんで私は実相寺さんの家に…」
一  「はっはっはっ、覚えておりませんか」
諸星 「お恥ずかしい……」

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