『甘酸っぱい、靴下の話』
靴下シリーズ その2
『甘酸っぱい、靴下の話』2011.07
(人間大の靴下。「靴下の着ぐるみ」と言ってよい。)
(その前には、マイクが置いてある。顔の高さに。)

こんにちは。
ボク、靴下です。
こんにちは。靴下です。
大きいけど、巨人の靴下じゃないです。
ボクの、ほんとの大きさは、皆さんが今履いている靴下と同じ大きさだと思ってください。
もしかしたら、ボクと会うのが初めてじゃないヒトも、いますか?(あ、ありがとうございます)
本来なら、ゴミ箱に捨てられて、すでに焼却場で燃やされているはずのボクが、思いもよらず、再び皆さんの前に立って、こうしてしゃべる機会を与えていただけたことに感謝しています。

今日は一つ、『におい』というテーマを与えていただきましたので、僕の知る限りですが、足の匂いについてお話したいと思います。
所詮無学・無教養な靴下ですから、難しい話は苦手ですが、
この壇上でご高名な学者、研究者の皆さんと肩を並べて、足を並べて立つわけですから、緊張しますが、精一杯頑張りたいと思います。

ボクはサクラちゃんという19歳の女の子の靴下でした。
サクラちゃんは花も恥らう妙齢の乙女です。
芳しい乙女の匂いがします。例え足先からでも。
ほのかに、甘い。
サクラちゃんの足の匂いを嗅いでいると、なぜか頭の中がぽわ~っとなって、夢見心地になります。
ボクはサクラちゃんの足の匂いなら、何時間でも嗅いでいられます。
むしろ、嗅いでいたい。

素人考えですけど、19歳の女の子の足の匂いには、たぶん麻酔作用か鎮静作用があるんじゃないかな。
もし、今日ご来場の皆さんの中に、医療関係者の方がいたら、ぜひ、乙女の足からの分泌分から何らかの医薬品が開発できないか、試してみてください。
ぜひ!

でも、流石に汗をかいた時はいけません。
人間の汗の匂いは、臭いし、ちょっと酸っぱい。
ボクは運動靴と一緒に履かれることはまず無かったので、運動後の足の匂いについては運動用の白靴下くんの方が詳しいと思います。

あ、でも、僕も・・・。
ある時サクラちゃんが、同級生の男の子と一緒に夏の夜の港をお散歩していたことがあります。人々が海や夜景を眺めたり、観光船が漂ったり。ちょっとしたデートかな。
そんなデートの時の、サクラちゃんの勝負靴下はもちろんボクです。
二人は港の先っちょの灯台まで歩いて、また折り返して。
ぶらぶらと歩きながら、親しげに、楽しげに、恋の睦言を交わす中、
靴の中は、それなりにとんでもない状態になっていました。
サクラちゃんの元々の足の香りと、汗のにおいとのブレンド。
ボクはそのとき始めて知ったんです。これが甘酸っぱい恋の味なんだ、って。

諸事情により、
ボクのことを一時期サクラちゃんの『お母さん』が履いていたことがあります。
大人の女性の足は、これはボクの大人の女性体験から言えることなんですけど、
不思議なことに、全然匂いがしないんです。
いやいや、嘘じゃないんです。本当に「無臭」。
あ、でも、誰かが言ってた気がする、「敢えていうなら、ホコリの匂いがする」って。
カビの匂い?ホコリ?カビ?
どっちですか?
あ、落ち着いて。あなたの足の匂いを聞いてる訳ではないので、安心して。


でも、匂いがしないって本当に不思議ですよね。なんでだろう。
確かにお母さんは家族の中で一番清潔なヒトだし、あまり汗をかくことがないからかなぁ。
足が汗でしっとりと濡れていることはなくて、何ていうか、乾燥していて、うるおいがない。
だから、いつもサラサラなんですかね。
サクラちゃんのような乙女成分ももう涸れて出てないから、甘い香りもしない。
そっか!だから、ほとんど無臭なんだ!そっか〜。
謎が解けました。良かった〜。
触り心地については一言申し上げたいところですが。
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