寸前家族
〜クレイジー・イヴ〜
「寸前家族 〜クレイジー・イヴ〜」
                 八城 悠
登場人物
    ・父   ・男1
    ・母   ・男2
    ・娘   ・女
    ・警官  ・強盗1
         ・強盗2

第一章 「邂逅」

          幕が上がると、そこにはリビングの見渡せる家がある。
          ソファーやテーブル、サイドボードといった一般的な調度品。
          舞台下手には玄関付き通路、上手にはキッチンやトイレへと続く
          通路、リビング奥には階段等に続く通路が接続している。
          挙動不審な男2が、人参を片手に口笛を吹きながら歩いてくる。
          玄関先で立ち止まり、意を決してチャイムを鳴らす。
          音はしない。今度は連射をしてみる。無反応。
          満足げに頷くと、周囲を窺いながら道具を出し、鍵をいじくる。
          しばらくしてカシャンという音とともに鍵が外れる。

 男2 「おっしゃ」

          きちんと靴を脱ぎ、細心の注意を払って歩を進める男2。キッチ
          ン方面から、ブタの貯金箱を持ってソロリと女が近づいてくる。
          男2と女がリビングに入ると同時に、奥の戸から男1も。
          固まる三人。

男12女「あ・・・」
  女 「こ、こんにちは」
 男12「こんにちは・・・」
 男2 「何度もチャイム鳴らしたんだけどよ、返事がねえからそれで・・・」 
  女 「わ、私もそんなもん」
 男1 「え・・・じゃあ、お客さんですか?」
 男2 「そうそう、お客さん! 決して怪しい者じゃねえぞ!」
  女 「わ、私もそんなもん」
 男2 「あの、この家の人・・・だよな?」
 男1 「そ、そうですけど。どちら様でしょう?」
 男2女「えーと・・・」
  女 「ホラ、こちらにお子さんがいるじゃない?」
 男1 「こここ子供? そういえばいましたね、そんな子が」
男12女「AHAHAHAHA・・・」

          気まずい沈黙。

 男1 「あの、参考までに聞きますが、息子と娘、どっちでしょう?」
  女 「え?」
 男1 「いや、あくまで参考までにね」
  女 「えと・・・男?」
                                   
          張り詰めた沈黙。

 男1 「いやあ、親馬鹿と言われても仕方ないですが、自慢の息子でねぇ!」
  女 「はじめまして! 私、息子さんのクラスメイトです!」
 男1 「そ、そうですか。あいにく息子は外出してるんですよ」
  女 「え。セーフ」
 男1 「は?」
  女 「いや、残念だわ。あ、コレ、そこに落ちてました」

          女、ブタの貯金箱を渡す。
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