寸前家族

〜クレイジー・イヴ〜

(すんぜんかぞく)
初演日:0/0 作者:八城 悠
「寸前家族 〜クレイジー・イヴ〜」
                 八城 悠
登場人物
    ・父   ・男1
    ・母   ・男2
    ・娘   ・女
    ・警官  ・強盗1
         ・強盗2

第一章 「邂逅」

          幕が上がると、そこにはリビングの見渡せる家がある。
          ソファーやテーブル、サイドボードといった一般的な調度品。
          舞台下手には玄関付き通路、上手にはキッチンやトイレへと続く
          通路、リビング奥には階段等に続く通路が接続している。
          挙動不審な男2が、人参を片手に口笛を吹きながら歩いてくる。
          玄関先で立ち止まり、意を決してチャイムを鳴らす。
          音はしない。今度は連射をしてみる。無反応。
          満足げに頷くと、周囲を窺いながら道具を出し、鍵をいじくる。
          しばらくしてカシャンという音とともに鍵が外れる。

 男2 「おっしゃ」

          きちんと靴を脱ぎ、細心の注意を払って歩を進める男2。キッチ
          ン方面から、ブタの貯金箱を持ってソロリと女が近づいてくる。
          男2と女がリビングに入ると同時に、奥の戸から男1も。
          固まる三人。

男12女「あ・・・」
  女 「こ、こんにちは」
 男12「こんにちは・・・」
 男2 「何度もチャイム鳴らしたんだけどよ、返事がねえからそれで・・・」 
  女 「わ、私もそんなもん」
 男1 「え・・・じゃあ、お客さんですか?」
 男2 「そうそう、お客さん! 決して怪しい者じゃねえぞ!」
  女 「わ、私もそんなもん」
 男2 「あの、この家の人・・・だよな?」
 男1 「そ、そうですけど。どちら様でしょう?」
 男2女「えーと・・・」
  女 「ホラ、こちらにお子さんがいるじゃない?」
 男1 「こここ子供? そういえばいましたね、そんな子が」
男12女「AHAHAHAHA・・・」

          気まずい沈黙。

 男1 「あの、参考までに聞きますが、息子と娘、どっちでしょう?」
  女 「え?」
 男1 「いや、あくまで参考までにね」
  女 「えと・・・男?」
                                   
          張り詰めた沈黙。

 男1 「いやあ、親馬鹿と言われても仕方ないですが、自慢の息子でねぇ!」
  女 「はじめまして! 私、息子さんのクラスメイトです!」
 男1 「そ、そうですか。あいにく息子は外出してるんですよ」
  女 「え。セーフ」
 男1 「は?」
  女 「いや、残念だわ。あ、コレ、そこに落ちてました」

          女、ブタの貯金箱を渡す。

 男1 「あ、ああ、こんな所に。探してたんですよ」
  女 「あ、あら、それはよかった」
 男1 「そういえばお宅は?」
 男2 「え、俺は今日は・・・きょう・・・そう、学校の教師だよ!」
 男1 「では息子の担任の先生?」
 男2 「そう! 担任の先生! はじめま・し・て?」
 男1 「はじめまして!」
 男12「よかったよかった」
 男2 「これ、つまらないものだけど」

          男2、人参を渡す。

 男1 「これはこれは御丁寧に」
  女 「なぜ人参を・・・」
 男1 「という事は2人は顔見知りな訳ですね」
 男2女「(互いに顔を見合わせて)え?」
 男2 「・・・今度、君達の学校に新しく赴任するんだよ」
  女 「ど、どーりで見た事ないと思った」
 男2 「よろしくな、姉ちゃん」
  女 「こちらこそ」
 男1 「あの、参考までに聞きますが、息子の名前は何でしょう?」
 男2 「へ?」
 男1 「いや、あくまで参考までにね」
 男2 「・・・えーと」
  女 「ほら、先生」
 男2 「えーと」
  女 「はやく答えなさいよ!」
 男1 「まあまあ。君、名前は?」
  女 「私? 私は・・・夢子」
 男1 「夢子ちゃんですか! はいはいはいはい、息子の話によく出てきますよ」
  女 「で、でしょ」
 男1 「君なら分かるでしょう?」
  女 「え?」
 男1 「息子の名前」
 男2 「頼むぞ、夢子くん」
  女 「えーとですね・・・」
 男12「うんうん」
  女 「・・・ジョニー・・・」

          沈黙。

 男1 「そう! ジョニーって呼んでるんです!」
  女 「私ってエスパー?」
 男2 「ところで本名は何てんだい?」
 男1 「さあ、何だったかな。今度市役所行って調べておきます」
 男2 「すいませんねぇ」
 男1 「いやいや」
  皆 「AHAHAHAHA・・・」
 男2 「ところで、さっきから気になってるんだが」
 男1 「何でしょう」
 男2 「なんで2人とも土足なんだ?」
 男1女「・・・・・」
 男2 「違和感で落ち着かなくてよ」
 男1 「ウ、ウチはホラ、アメリカンスタイルを追求してるのです」
 男2 「ああ、アメリカンスタイルかぁ!」
  女 「ジョニーの家ではそうなんですよね」
 男1 「そ、そうなんです」
 男2 「じゃあ、俺も履いた方がいいのか?」
 男1 「いえいえ、そろそろ日本式に戻そうかなって」
  女 「言ってましたね、そんな事」
 男2 「いや、無理して合わせんでも」
 男1 「いいんですよ。よし、靴を脱ぎましょうか」
  女 「はーい」

          男1と女、掛け声とともに靴を脱ぐ。

 男2 「なんだかなぁ」
  女 「(靴を持って)えーと、玄関は何処だっけ」
 男2 「は?」
 男1 「えーとね・・・」
 男2 「アッチだろ」
 男1 「そうです、アッチですよ」
  女 「嫌ね、ボケちゃって」
  
          皆、笑いながら玄関に靴を置くと、外に警官が現れる。
          警官、音の出ないチャイムを押す。

 警官 「ごめんくださーい」

          一同、ビクッとしてストップモーション。 

 警官 「ごめんくださーい。警察でーす」

          一同、慌ててリビングに戻り、息を殺して沈黙。
          暫くしてその不自然さに気づく。

 男2 「いいのか、出なくて」
 男1 「ば、馬鹿言わんで下さい」
 男2 「は?」
 男1 「いえ、いいんです」
  女 「でも警察って言ってるじゃん」
 男1 「しぃ〜っ!」
 警官 「おや?」

          警官、聞き耳を立てる。
          息を呑む一同。

 警官 「気のせいか」

          警官、踵を返す。
          遠ざかる警官の歌声を聞いて、ため息まじりにへたり込む一同。

 男1 「(ハッとして)あれ、帰っちゃいましたか」
  女 「何を今さら」
 男1 「今出ようとしてたんですが」
 男2 「なあ」
 男1 「はい?」
 男2 「あんた、本当にこの家の人か?」
 男1 「な、何を馬鹿な!」
 男2 「だってよ、おかしな事が多すぎる」
 男1 「気のせいですよ」
 男2 「そうだ、名字を言ってみてくれ」
 男1 「名字?」
 男2 「言えるはずだろ?」
 男1 「えーと・・・」
 男2 「俺は表札を見たから知ってるぞ。なあ、夢子ちゃん」
  女 「え、そ、そうよね」
 男2 「待てよ・・・そう考えるとあんたも怪しいな」
  女 「またまたぁ、先生ったらん」
 男2 「じゃ、答えろよ」
  女 「えーとねぇ」
 男2 「なるほど・・・お前らいったい何者だ!」

          詰め寄った拍子に男2の道具袋が、ガチャンと落ちる。

 男1女「がちゃん?」
 男2 「あっ!」
 女  「何これ」
 男2 「よせ、触るなっ!」

          女、テーブルに中身をブチまける。
          出てきたのは、いわゆる泥棒七つ道具。

  女 「これって・・・」
 男2 「(道具をかき集めながら)いや、これは・・・」
 男1 「こんなの持ってるっていう事は」
  女 「あんた、まさか」
 男1女「泥棒っ!」
 男2 「違う、違うぞっ!」
 男1 「まさか」
  女 「もしかして」

          男1・女、互いの顔を指さし、確認するように頷き合う。

 男1 「ぷっ」
 男1女「あははははっ!」
 男2 「え?」
 男1 「なんだ、そういう事ですか」
  女 「道理で」
 男1 「あなたも?」
  女 「あんたも?」
 男1女「あははははっ!」
 男2 「おいてくなよ。どういう事だ」
 男1 「実は・・・私達全員、泥棒だそうです」
 男2 「へ?」
 男1 「信じられないでしょうけど」
  女 「実際そうなんだもん」
 男1 「という訳」
 男2 「んな馬鹿な・・・え、本当に?」
  女 「そ。阿呆みたいな偶然」
 男1 「あなた達、同じ家に入ってどうすんですか」
 男2 「そりゃコッチの台詞だ。だから土足だったのか」
  女 「じゃ、あんたは玄関から?」
 男2 「おう。鍵をこうカチャカチャと」
  女 「勝手口のドア、開いてたのに」
 男1 「マジですか。私なんかガラス切って窓からですよ!」
  女 「へぇ、みんなスゴーイ」
 男2 「しかしこんなW、いや、トリプルエレキングとはな」
  女 「ブッキング」
 男2 「そうそれ」
 男1 「まったく。怪盗108号としたことが、ミスっちゃいましたよ」
 男2 「な、あの108号かよ!」
  女 「有名なの?」
 男2 「ここら辺の泥棒達の間じゃカリスマ的存在だ」
 男1 「いや、照れますね。もっと誉めて」
  女 「ふぅん」
 男2 「ってお前、本当に知らねぇのか?」
  女 「だって私、初犯だもん」
 男12「え」
 男1 「これが初めて?」
  女 「うん」
 男2 「なんでまた」
  女 「それがね、ひどいのよ。ちょっとブランド品が欲しいから、バッグとかコー
     トとか色々カードで買った訳。そしたら次の月に、お金払えって理不尽な事
     言ってきたのよ」
 男2 「ごく普通の理屈じゃねぇか」
  女 「まあ聞いて。それで頭きたからネックレスやら指輪やら買ったのね。そした
     ら今度も凄い金額を払えっていうのよ。ふざけるなっつーの」
 男1 「別にふざけてないと思いますよ」
 男2 「お前な、自分の尺度でモノ測っちゃ駄目よ」
  女 「そんでどーしよっかなって時に、この家の人達が出て行くのを見て」
 男1 「それでこのブタですか」
  女 「あ、返しなさいよ。盗む気はないの、借りるだけ」
 男1 「立派な泥棒ですよ」
 男2 「お前な、そんな事で人様のモノ盗むなよ」
  女 「じゃ、あんたは何? なんで人参なんか持ってるのよ」
 男2 「コレか。こりゃあ・・・子供の為だ」
 男1 「子供?」
 男2 「俺はチンケな空き巣でよ。5歳になる息子と2人で暮らしてる」
  女 「奥さんは?」
 男2 「出てっちまったよ」
  女 「・・・御免なさい」
 男2 「いいって。俺の足が速すぎるのが悪いんだ」
  女 「え」
 男2 「『貴方にはついていけません』だとさ」
 男1 「あなた、阿呆ですね」
 男2 「ああ、阿呆だったね。子供の世話なんか出来ねえから、風邪ひかせた上にこ
     じらせちまった」
  女 「いやね、そういう意味じゃなくって」
 男2 「なんとか治してやりたかったが医者に診せる金もない。仕方ねえから薬屋に
     忍びまくった」
 男1 「ああ、じゃあ、近頃の薬屋荒らしって」
 男2 「そう俺だ。だがよ、どんなに高い薬も効きやしねえ。そしたら今日、漢方薬
     屋を見つけてな。漢方っていやあ、東洋の神秘、絶対に効く」
  女 「って事は、それは朝鮮人参ね」
 男1 「へえ、見せて下さいよ」
  女 「でも、その薬屋荒らしが、なんでこんな一般家庭に?」
 男2 「うん。帰り道で考えたんだ。5歳の息子に土産が人参だけってのも寂しいだ
     ろ。オモチャと何か栄養のある物でもと思ったが金は無い。だから此処にお
     邪魔したって訳だ」
  女 「なるほどね。だったら最初からお金盗めば、オールOKじゃん」
 男2 「・・・おおっ、そんな裏技が!」
 男1 「あの、コレ、ただの人参ですよ」
 男2 「なにいっ!」
  女 「どこから持ってきたの?」
 男2 「え、台所の冷蔵庫」
 男1女「阿呆!」
 男2 「だって漢方・・・」
 男1 「漢方薬屋さんだって人参は食べますよ」
  女 「あんたね、自分の尺度でモノ測っちゃ駄目よ」
 男2 「じゃあ俺のやった事って・・・」
  女 「無駄。まったくもって無駄無駄無駄」
 男2 「オーマイガッ」
 男1 「追い詰めて楽しいですか」
  女 「とっても」
 男1 「やな性格」
 男2 「オホン。柄にもなく取り乱しちまったな。まあ、俺の話はこんな所だ」
  女 「そうね、次は117番よ」
 男1 「108号です」
  女 「それそれ」
 男2 「あんたは一体どうして?」
 男1 「どうしてって・・・もとから」
 男2女「もとから?」
 男1 「先祖代々泥棒だから」
 男2女「へ?」
 男1 「なんでも弥生時代から続く名門らしいです」
 男2 「ルパン一族以上だな」
  女 「なんか嘘くさい」
 男1 「でも三億円事件。あれウチの祖父ちゃん」
 男2女「すっげーっ!」
 男1 「私には其処までの才能ないですけどね」
  女 「へぇ・・・本当に皆、泥棒だったんだ」
 男2 「まさか家の人になりすますとは」
 男1 「お互い様です。何ですか。先生? ジョニー?」
  女 「ホント、実際、凄く無理があったよね」
 男12「確かに」
男12女「(乾いた笑い)わはははは」
 男1 「じゃ、そろそろ」
  女 「どこ行くの」
 男1 「同じ家に泥棒が3人もいたって仕方ないでしょう」
 男2 「そう考えるととんでもねえ家だな、ここ」
 男1 「私は別な獲物探すから、此処はあげます」
 男2 「いや、そいつぁ申し訳ないよ」
 男1 「いいんですよ。息子さんが待ってるんでしょう?」
 男2 「けどよ・・・。そうだ、姉ちゃん持ってけ」
  女 「私?」
 男2 「あんた、何の技術も持ってないだろ」
  女 「技術?」
 男1 「ヒトンチ忍び込む技術」
  女 「ああ、無い!」
 男2 「だろ? だからやるよ」
  女 「マジで。サンキュー」
 男1 「遠慮しないで」
  女 「いや、してないけど」
 男12「さてそれじゃ」

          突然、パジャマ姿の娘がリビングに入ってくる。
          泥棒達と娘、目が合う。
          沈黙。    


第二章 「虚偽」

  娘 「・・・こんにちは」
男12女「こ、こんにちは」
  娘 「・・・誰?」
男12女「えーとですね」
  娘 「あれ、お母さん達は?」
 男1 「ど、どうやらお出掛けのようです」
  娘 「ふーん」

          娘、女が持っているブタの貯金箱に気づく。

  娘 「あーっ! それ、ウチの貯金箱っ!」
  女 「え、これ?」
  娘 「そうよ。ほら、ココに私が書いた盲腸の傷がある」
  女 「あらホント」
  娘 「分かった。あなた達、泥棒ね!」
男12女「(首振り)ブルブルブルッ」
  娘 「留守だと思ったんだろうけど、そうはいかないわ。この静香様が二階でグー
     スカ眠ってた事に気づかないなんて、間抜けもいいとこ」
 男2 「違うぞ、嬢ちゃん」
  女 「そう、全くの誤解」
  娘 「じゃあ、その貯金箱は何なのよ」
  女 「これは」
  娘 「ま、まさか・・・・・・て、手切れ金っ?」
  女 「え?」
  娘 「すると貴女は・・・愛人っ?」
  女 「・・・・・・そう、愛人」
 男1 「愛人なんです、貴女は」
  娘 「お父さんの?」
  女 「そう、お父さんの」
 男2 「お父さんのだぞ、お前は」
  娘 「あの親父〜。でもその愛人がなんで此処にいるのよ」
  女 「そりゃあ・・・泊まってたんだもん」
  娘 「泊まってたぁ?」
  女 「そう」
  娘 「同じ部屋に?」
  女 「うん」
  娘 「お母さんもいたのに?」
  女 「こっそりと」
  娘 「あのクソ親父〜。でも或る意味スゴイ」
 男2 「まあ、そういうこった」
 男1 「中にいたこの人に開けてもらった訳ですよ」
  女 「これで分かったでしょ」
  娘 「うーん、じゃ、貴方は?」
 男2 「俺? 俺はね・・・」
 男1女「(頑張れ!)」
 男2 「愛人」
 男1女「おいっ!」
 男2 「奥さんとフォーリンラブ」
  娘 「お、お母さんも!」
 男1 「(男2に)貴方にゃオリジナリティってもんは無いんですか」
  娘 「何? この家は両親揃って浮気してるっていうの?」
  女 「あははは、そういう事になるね」
 男2 「こいつぁ参ったな」
 男1 「好き放題言っちゃって。どうしろっていうんです」
  娘 「でも、どうして互いの浮気相手が此処に?」
 男2 「それはな」
 男1 「説明しましょう!」
  娘 「わっ! 誰よあなた」
 男1 「私『ぱるぷんて探偵事務所』の者です」
  娘 「・・・つまり探偵さん?」
 男1 「はい」
  娘 「その探偵さんがどうして」
 男1 「・・・ある時、私の所に2件の浮気調査依頼が舞い込みました」
  他 「ふんふん」
 男1 「依頼主は彼の奥さんと彼女の旦那さんです」
 男2 「俺の女房?」
  女 「って事は、私の夫か」
  娘 「って事は?」
 男1 「(女をポカリ)しぃ〜!」
  女 「いったーい」
 男1 「私が調査を進めると驚くべき事実が浮かび上がりました。この2人の相手と
     いうのが、あろうことか」
  娘 「ウチの両親だったと・・・」
 男1 「今日はたまたま彼を尾行していたのですが、なんと目的地はこの家。しかも
     家から顔を出したのは彼女でした」
 男2 「奥が深い」
  娘 「頭痛い」
 男1 「まさに悲劇っ! そこで思いもよらぬ運命のいたずらが。なんとターゲット
     が私に勘付いてしまったのです」
 男2 「あら大変」
 男1 「しかし考えようによってはチャンスでした。ターゲットに直接コンタクト出
     来たのです。私は咄嗟に親戚と偽り、彼と共に潜入する事に成功しました」
  娘 「勝手に入れないでよ」
  女 「帰しちゃ悪いと思ってさ」
 男1 「そして私が何とか情報を引き出そうとした所で」
  娘 「私が起きてきた、と」
 男1 「そういう訳です」
  娘 「じゃあ、この人達も貴方が探偵って事は」
 男1 「今はじめて知った事になります」
 男2女「・・・わぁビックリ」
  娘 「いいの、バラしちゃって」
 男1 「この際、仕方ありません」
  娘 「だいたいの事情は飲み込めたわ」

          娘、深刻な顔をして考え込む。

 男1 「なんとか辻褄は合いましたね」
  女 「ギリギリね」
 男1 「あなた達が突拍子もない事を言い出すから」
 男2 「悪ィ悪ィ」
 男1 「それに何がジョニーですか、娘ですよ」
  女 「いや面目ない。でも上手くまとめたじゃん」
 男1 「安心するのはまだ早いです。ボロが出ないうちにトンズラしないと」
  娘 「つまり・・・貴女がお父さんの愛人で、貴方がお母さんの浮気相手。あなた
     がそれぞれを調査していたら、なぜかこの家に集まった」
 男1 「いぐざくとりぃ」
  娘 「とんでもない偶然ね」
 男2 「全くだ」
  女 「泣きたいくらい」
  娘 「ところで問題のウチの御両親は何処へ消えたの?」
男12女「さあ?」

         そこへ再び警官が鼻歌まじりに現れる。鳴らないチャイムを押す。

  娘 「どうせパチンコと買い物って所だろうけど。この状況で帰って来られたら地
     獄だわコリャ」
 男1 「でしょう。そこで提案なんですが、この場は一度」

 警官 「ごめんくださーい、警察でーす」
男12女「!」
  娘 「あれ、ちょっと待ってて。はーい!」

          娘、玄関へ。慌てる泥棒達。

 男2 「やばいんじゃねぇの?」
  女 「バッドタイミング」
 男1 「落ち着いて。とりあえず様子見です」

  娘 「(出迎えて)なんだ、健一か」
 警官 「こらこら、一応年上だぞ。『なんだ』はないだろう」
  娘 「はいはい健一兄ちゃん」
 警官 「寝てたのか? その格好は」
  娘 「ちょっと風邪ひいちゃって」
 警官 「平気か」
  娘 「うん。熱もだいぶ下がったし」
 警官 「何とかは風邪ひかないはずだけどな」
  娘 「あ、そういう事いうか」
 警官 「俺、さっきも来たんだぜ」
  娘 「もしかしてこのチャイム押した?」
 警官 「押した」
  娘 「だめだめ。これ壊れてるもん、ほら」

          娘、これ見よがしにチャイムを押すが、音は出ない。
          男2、ガクッとする。

  娘 「ね」
 警官 「本当だ」
  娘 「それで何の用?」
 警官 「うん。この頃空き巣が多発してて、戸締り強化を呼びかけてるんだ」
  娘 「へえ」
 警官 「だからくれぐれもって、おじさん達に伝えておいてくれる?」
  娘 「分かった」
 警官 「ところで学校はどう? 楽しい?」

          娘と警官、しばし四方山話にうち興じる。

  女 「ね、私思ったんだけど」
 男2 「何だ?」
  女 「今のうちに裏口から逃げたら?」
 男1 「ナイスアイディア!」
 男2 「そうだよ、今逃げりゃいいんだ!」

          3人、荷物を持って逃げ出そうとする。

 男2 「靴は?」

          3人、ピタリと止まる。

 男1 「しまった、玄関だ!」
  女 「やばいじゃん!」
 男1 「貴方が土足で入らなかったから!」
 男2 「皆で脱ごうってほざいたのは誰だよ!」
 男1 「・・・君か!」
  女 「あんたよ!」
 男2 「もう靴は置いていこう!」
 男1 「駄目です。物的証拠ですよ!」
 男2 「空き巣だって気付かれなきゃいいんだよ!」
  女 「そうよ、このブタさえ置いていけば」
 男2 「そうだ。それなら」
 男1 「あ、窓ガラス切っちゃいました」
  女 「思いっきり空き巣じゃん!」
男12女「わぁーっ!」

 警官 「じゃ、よろしくね」
  娘 「うん。バイバイ」

 男1 「タイムアップ。次の機会を待ちましょう」
 男2 「・・・了解」

          警官は退場し、娘はリビングに。泥棒達はゼイゼイいっている。

  娘 「お待たせ・・・どうしたの、汗びっしょりで」
 男2 「ちょっと心乱れる事があって」
  娘 「変なの」
 男1 「誰でした、お客さん」
  娘 「お巡りさん。つっても幼馴染みなんだけどね」
 男1 「ほほう」
  娘 「空き巣が多いから戸締りをしっかり、だってさ」
  女 「近頃は物騒だもんね」
 男2 「まったくだ」
  娘 「でさ、親が帰ってこないうちにちゃんと聞いておきたいんだけど」
  女 「な、なにかしら」
  娘 「結局のところ、これからどうするつもりなの」
  女 「どうって・・・ねぇ?」
  娘 「私の見る限り、お父さんもお母さんも気付いてないみたいだし」
 男2 「そりゃそうだろうな」
 男1 「しぃっ」
  娘 「浮気してたなんて頭くるけどさ、やっぱ家族は家族だもん。壊して欲しくな
     いよ・・・」
  女 「(男2を見る)」
 男2 「(男1を見る)」
 男1 「(合わせろ合わせろのサイン)」
 男2 「分かったよ」
  娘 「え」
  女 「貴女の話を聞いて決心した。私のせいで不幸になってほしくないし」
 男2 「そうだそうだ」
  娘 「じゃあ」
 男2女「別れる!」
  娘 「ありがとう!」
 男2 「いや、こっちこそ迷惑をかけちまったな」
  女 「これにて一件落着ね」
  娘 「うん」
 男1 「安心したところですみません、水を一杯いただけませんか?」
  娘 「あ、ごめんなさい。お茶も出してなかった。ちょっと待ってて」

          娘、キッチンへ。ニヤリとする男1。

 男1 「よし、今のうちに靴を履いて逃げましょう!」
 男2 「あ、その為か」
  女 「アッタマいい」
 男1 「用意はいいですか。行きますよ」

          そこに景品袋を抱えた父と、買物袋を提げた母が帰ってくる。
          ガラッ。

男12女「!」

  父 「あれ? 開いてるぞ」
  母 「静香が起きたんじゃない?」
 父母 「ただいまー」
  母 「(沢山の靴を見て)あら?」
  父 「お客さんかな」

          泥棒達、泣きそうな顔をしてヘタり込む。


第三章 「困惑」

  女 「勘弁してよ・・・」
 男2 「もう嫌だ」

          ドタバタと娘が戻ってくる。急にシャキッとする一同。
          父と母は荷物をこぼしたりしてモタモタしている。

  娘 「なに、帰ってきちゃったの」
 男1 「そのようです」
 男2 「2人揃ってる」
  娘 「最悪ね」

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