Lunatican

(るなてぃかん)
初演日:2017/9 作者:ヨシダユタカ
Lunatican 

?@ クロバ
?A シモン
?B カグヤ
?C リリ
?D ガルシア ・ 伝令 ・ ジュダ
?E 隊長 ・ マルコ
?F 副官 ・ エリミヤ

※ 「!」や「?」や「…」は、意図的に使っていません。



I. 街はずれ
クロバ   気がついたら月にいた。どうして月だと分かったかというと、目の前にウサギがいたからだ。
シモン   お、おれのことだね。
クロバ   どうみてもウサギらしくない。
シモン   じゃあ、なにらしい。
クロバ   人間。
シモン   だったらおれは人間らしいウサギだ。お前は。
クロバ   ぼくは、人間。
シモン   じゃあお前は人間らしい人間だ。
クロバ   うん。と納得したが、それはどうしてかと言うと。
シモン   だって月にいるのはウサギだろ。
クロバ   ということで、結局なんだかわからなかった。
シモン   お前、名前は。
クロバ   クロバ。
シモン   おれはシモン。よろしくな。
クロバ   ここは。
シモン   月だよ。
クロバ   いや、月の。
シモン   パルタイ国。その町外れ。
クロバ   あれは、ピラミッド。
シモン   ああ、あれか。つまんねえもん造るよな。おれ達はあれをぶっ壊そうと思ってるんだ。
クロバ   どうして。
シモン   あんなもん造ったってだれも喜ばねえからさ。なあクロバ。仲間になんねえか。
クロバ   仲間。
シモン   バニーズ団ってんだ。まあ、テロ集団だな。
クロバ   テロ。
シモン   恐いか。
クロバ   恐い。
シモン   おれ達は、殺さずのバニーズ団って言ってね。けして誰も殺さないテロ集団。
クロバ   じゃあ何をするテロ集団。
シモン   落書き、だな。主に。
クロバ   凶悪。
シモン   だろ。
クロバ   でもそんなんで効き目は。
シモン   あるんだぜなかなか。あのピラミッドはピカピカでなきゃならねぇ。だから落書き一つでもう大騒ぎさ。
クロバ   よくわかんない。いったい何のためのピラミッドなんだか。
シモン   わかんねぇだろ。だからぶっ壊すんだ。気が合うな、おれ達。
クロバ   え。
シモン   よし。お前はこれから仲間だ。来いよ。ほかのやつらに紹介する。
クロバ   しかし。
シモン   いいから来いって。ほかに行くとこねぇんだろ。
クロバ   うん。
シモン   決まりだな。行くぜ。

II. 城
副官   隊長、またやられました。
隊長   こんどはどこだ。
副官   東の七番から九番の壁です。
隊長   あそこは先週きれいにしたばかりじゃないか。
副官   悔しいです。
隊長   なにが描かれていた。
副官   へのへのもへじが、三十個ほど。
隊長   三十個。
副官   いま全員で拭き取り作業してます。
隊長   やつらめ、だんだんやり口がエスカレートしている。
副官   最初はたった一つでした。
隊長   だが特大だった。
副官   はい、こーんなにでっかい。
隊長   いやいやもっと、こーんなにでっかい。
副官   いやもっとです、へのへのもへじの、じの点々がこれっくらいの。
隊長   もういい。
副官   はい。
隊長   どれくらいかかりそうか。
副官   三十個ですから、丸一日はかかるかと。
隊長   こんなことでは、いつまでたっても工事が進まん。
カグヤ   工事の遅れは許しませんよ。
副官   女王陛下。
隊長   しかし陛下。最近やつらの行動は目に余ります。
カグヤ   やつら。
隊長   バニーズ団という、テロ集団です。団長はシモンとかいう。
カグヤ   シモン。
隊長   素性のよくわからないやつでして。そうだな。
副官   はっ。いろいろ調べてはいるのですが。
隊長   どこの生まれかも、いつからここにいるのかも。
カグヤ   そんなことはどうでもいいのです。工事は進めなければなりません。
隊長   はい。
カグヤ   バニーズ団、でしたか。捕まえなさい。
隊長   はい。
副官   しかし隊長、やつら、どこに出るか。
隊長   今日一日われわれは、東の壁の拭き取り作業に集中している。だから今夜は。
副官   西ですか。
隊長   伝令。
伝令   はっ。
隊長   みなに伝えよ。今夜八時、西の壁の前に集合。
伝令   はっ。

III. かくれが
シモン   そういうわけでさ、今日からこいつはおれ達の仲間だ。ほら、あいさつ。
クロバ   クロバです。
シモン   よろしく頼む。
マルコ   だがようシモン。
シモン   ん。なんだマルコ。
マルコ   大丈夫かそいつ。
シモン   なにが。
マルコ   政府の手先とかじゃないのか。
シモン   よく見ろマルコ。こいつ、どっから見ても他所もんじゃねぇか。
マルコ   まあ確かに。
シモン   政府のやつらが他所もんを信用するわけねぇだろ。
マルコ   なるほど。
シモン   だから大丈夫だ。クロバは仲間だ。
クロバ   強引な展開だがとにかくそういうことになった。
エリミヤ  よし、じゃあ乾杯だ。
クロバ   なにが「じゃあ」なのかもわからないが乾杯することになった。
シモン   お前、未成年だろ。
クロバ   はい。
シモン   じゃあこれにしな。
クロバ   これは。
シモン   牛乳だよ。身体にいいぞ。
クロバ   確かに。
エリミヤ  シモン、乾杯の合図はお前が。
シモン   ああわかったわかった。では。クロバが仲間になったお祝いに。乾杯。
全員   乾杯。
全員   ぷはー。
クロバ   あれ。みんな牛乳。
エリミヤ  身体にいいだろ。
シモン   ぶははは。
エリミヤ  もう一杯いくか。
クロバ   はい。
マルコ   それでお前、どこから来たんだ。
クロバ   え。どこから。
マルコ   ああ。どっかから来たんだろ。
クロバ   ぼくは。ぼくは。
シモン   ああもういいじゃねぇか。こいつはいまここにいるんだ。それでいいんだ。
マルコ   ん。まあそうだな。
シモン   それよりさ。ここのことをちゃんと話してないんだ。頼むよマルコ。
マルコ   お前、話しもしないで連れてきたのか。
シモン   おう。その方が話が早いだろ。
マルコ   早すぎだ。いや、あのな。ここはパルタイっていって、カグヤという女王が治めてる国なんだ。
クロバ   カグヤ。
マルコ   そうだ。女王カグヤのパルタイ国。それで女王がさ。去年、ピラミッドを造るって言い出してな。
エリミヤ  あれは大変だった。あのあたりに住んでた連中はみんな追い出された。
マルコ   それで腹が立つからおれ達は、こうして闘ってる。
クロバ   なるほど。
シモン   だけどおれ達は殺さない。テロはテロでも殺さずの闘いだ。なあみんな。
エリミヤ  おう。
マルコ   そうだ。
シモン   だからさ。お前もそんなカミソリみたいな気分、ひっこめろ。
クロバ   え。
シモン   牛乳飲んで、丸くなれ。イライラ防止にいいんだぞ、カルシウム。
クロバ   丸くなったら闘えないんじゃ。
シモン   そこは精神力さ。なあみんな。
エリミヤ  おう。
マルコ   そうだ。
クロバ   カミソリみたいですか。
シモン   なんとなくな。そんな気配がする。
クロバ   はい。
マルコ   お。
エリミヤ  どうしたジュダ。
ジュダ   今夜。西の壁の前に集合がかかった。
シモン   西か。
ジュダ   東の壁の拭き取り作業は、夜までかかりそうだ。
マルコ   どうする。
シモン   となったら、そうだな、南の十五番あたりをねらう。
マルコ   よし。
シモン   七時半に現地に集合だ。それまではばらばらになろう。
エリミヤ  わかった。
シモン   ジュダ。お前は戻れ。
ジュダ   わかった。
クロバ   ぼくは。
シモン   おれと一緒だ。いいな、離れるなよ。
クロバ   はい。

IV. 現場
隊長   来ないな。
副官   来ませんね。
隊長   いま何時だ。
副官   十時です。
隊長   二時間経ったか。
副官   お腹すきませんか。
隊長   すいた。
副官   自分もです。
隊長   なにか持ってるという話じゃないのか。
副官   なにも持ってません。
隊長   しかしきみ。お腹すきませんか、すいた、じゃあこれをどうぞお召し上がりください、という流れじゃないのか。
副官   違います。
隊長   残念だ。
副官   残念です。
伝令   隊長。
隊長   どうした。
伝令   やられました。
隊長   なに。
副官   どこだ。
伝令   南の、十五番から二十一番の壁です。
副官   そんなに。
隊長   やられたなあ。
副官   なにが描かれた。
伝令   へのへのもへじが、ええと、およそ百五十。
隊長   百五十。
副官   消せませんよ、そんなに。
伝令   それと、あのう。
隊長   なんだ。まだあるのか。
伝令   はい。それが、あのう。

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