ティラノサウルスじゃなくて、なんだっけアレ
登場人物
・教師……教師というのはいつも損な役回りだ。バカな生徒の面倒を見て、バカなことを言う生徒の相手をして、たまに優等生に慰めてもらう。そんな人生だ。

・川岡……『バカと天才は表裏一体っすよ』って君は言うけどさぁ、それを言うなら『紙一重』だし、君のバカを裏返してみてもバカはバカだよ。

・遠野……みんな大好き優等生。彼を好かずんば人にあらず。こいつを出すためだけにこの脚本を書いたと言っても過言ではない。


以下本文

(教室か教員室。教師が座って書類仕事をしている)

川岡「……先生、先生、先生!」

(川岡、教師の下に駆け込んでくる)

教師「うるさいぞ川岡ー。廊下を走るなー。というか早く帰れー」(顔を上げずに)

川岡「まだこれから再試なんで帰れません! 大人しく俺の話を聞いてくださいよ! マジでヤバいんすよ!」

教師「成績が? 落単数が? これからする再試が?」

川岡「あー……まあ全部ヤバいと言えばヤバいんすけど! そうじゃなくて! だから聞いてくださいってば! 先生!」

教師「(溜息をついて顔を上げる)……何なんだ。今日はいつにも増して騒々しいな。最近何かと物騒だから、教師としては早く帰ってほしいんだが」

川岡「そりゃ騒々しくもなりますよ! というかその物騒がどうのみたいな話に関係があるんですけど! 関係しかないんですけど! 先生、俺、超ヤバいこと知っちゃったんですよ! 文春すらもアッと驚く稀代の大スクープ! それが今俺の手の中に!」

教師「もう川岡の留年が決定したとかか?」

川岡「またすぐそういうこと言って! これだから先生は! いいですか先生、一回しか言いませんからね。よーく聞いてくださいよ……」

教師「はいはい早く言え」

川岡「……俺のクラスに、遠野っているじゃないですか?」

教師「遠野……? あー、あの、大人しくて頭のいい奴か」

川岡「そうですそうです。あの優等生の遠野です。頭も顔も性格もいいと、クラスの女子どもから大評判で羨ましい限りの遠野です」

教師「だいぶ私怨が混じってるな」

川岡「その遠野が! なんと……!」

教師「なんと?」

川岡「…………ティラノサウルス、だったんです!」

教師「……は?」

川岡「だから、遠野がティラノサウルスだったんですよ!」

教師「……いや、意味が分からないし、さっき『一回しか言わない』って自分で言ったのにもう破ってるし」

川岡「まーた先生はそうやってつまらないことで、あげ……あげ……なんだっけ。こう、揚げパンがどうのみたいな……」

教師「揚げ足を取る?」

川岡「そうそうそれです! とにかく、遠野はティラノサウルスだったんです! どうですか? めっちゃヤバくないですか?」

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